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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
14/201

秋田藤四郎く~ん、こんにちは~

美智果が今、刀剣の付喪神のキャラクター達が活躍するゲームが好きということで、国立博物館で行われてる刀剣の展示会に行くことになった。金曜日の夜に、


「秋田藤四郎だっけ? なんかそういう刀剣が展示されてるらしいんだけど、行くか~?」


って、僕の膝に座ってた美智果に訊いたら、かばっと振り返って、


「行く行く! めっちゃ行く~っ!!」


と飛び上がりそうなくらい興奮してた。で、現在に至ると。


静かな展示室の中の正面に飾られた、秋田藤四郎っていう短刀の前に立つと、美智果は、


「秋田藤四郎く~ん、こんにちは~」


などと、まるで男の子でも紹介されたみたいに、でも迷惑にならないように小声で、短刀にそう声をかけてたんだよな。


僕はそれほど興味があった訳じゃなかったけどせっかくだということでゆっくり見させてもらった。それにしても、秋田藤四郎っていう刀、短刀にしてもすごく細身な感じがしたな。こういうのもあるんだなって思った。


他のも見てると、二十代半ばくらいの女性が熱心に短刀を見ながらそれをスケッチブックに書き写してたりしてた。写真を撮れないからスケッチしてるってことか。ゲームのおかげか最近はそういうのも人気があるらしいね。イラストとか漫画とか描いてる人なのかもと思ったりした。


漫画やアニメだとそういうのをきっかけにその女性と知り合ったりするのかもしれないけど、残念ながら僕はそこまで興味はなかった。見た目にも、妻とは少しタイプが違ってても嫌いなタイプじゃなかったけど、声を掛けたところで引かれるだけなのは分かってたし、何より向こうにとっても迷惑だろうし。


とまあ、いかにもなフラグを無視して、僕は一通り見て回った後、仏像が展示されたところでベンチに座って、美智果が戻ってくるのを待ってた。さすがに興味があるのかかなりじっくり見てるみたいだ。


ぼんやり眺めてると、やっぱりゲームの影響なのか若い女性が次々と展示室へと入っていくのが見えた。面白いなあ。僕が子供の頃は、刀剣なんて女子は見向きもしなかった気がするのに。


こういうブームみたいなのを嫌う人もいるんだろうけど、僕はそれほど気にならない。そもそも興味がないという前提があるとしても、人が何をきっかけにどんなものに興味を持とうとそれにケチをつける必要も感じないんだ。美智果がこうして楽しんでくれてるのなら、僕はそれでいい。


お昼は京都駅の地下でパスタを食べて、昼過ぎに帰る為にバスに乗った。彼女は終始ご機嫌だった。


あまりしょっちゅうは遊びにも行けないものの、今日のは楽しんでもらえたようで僕も嬉しかったのだった。



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