表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/30

11 凌ぎはした。しかし

「このッ! 邪魔をするなッ!?」

 オルフェインはいまだにチカチカとする目を瞬かせながら、指揮官らしき者に殴りかかる。

 しかし拳が届くより前に標的は姿を消して、むなしく空を切る。

「撃てぇえ!」

「ぐわぁあ!?」

 そして鋭い号令が響き、オルフェインに光の弾丸が殺到する。

 二方向から十字射撃に降り注ぐビーム弾が、オルフェインの強靭な皮膚に弾けて広がる。

 絶え間なく続くそれに、屈強な銀色の体が押し寄せる波にのまれるように光の中に沈む。

 しかし撃ち込まれ続けるビーム弾の嵐に押し潰されながらも、オルフェインは歯を食いしばり拳を固める。

「おぉおらぁあああッ!!」

 雄たけびを上げて腕を振るって撃ち込まれる弾丸を払い、同時に足を高々と蹴り上げる。そして頭よりも高く振りかぶった足を床へと叩き落す。

 爆音。それと合わせて深まるくぼみ。

 下に広々とした空間が無いために崩落することは無く、しかし大震脚によってオルフェインを中心に生じた陥没と衝撃は部屋全体を大きく揺るがす。

 真下への逃走経路こそ作れなかったものの、足元がぐらついたことで敵の動きは止まる。

 その隙を逃さずにオルフェインは跳躍。十字砲火の焦点から脱し、柱の一本を蹴り砕く。

 飛び散った破片は散弾のごとく敵集団の一方に降り注いでなぎ倒す。

 ガレキにまみれて倒れた者たちの有様を一瞥。ほんの一瞬だけ青い炎の目を陰らせると、裏脚からのエネルギー噴射で身をひるがえす。

「イィヤァアッ!!」

 しかしもう一方の敵集団を正面に収めたところで、横合いからの飛び蹴りがオルフェインを襲う。

「またかッ!」

 オルフェインはその一撃を腕でブロック。忌々しげな舌打ちと共に押し返すも、すでに蹴り足の主は自ら後ろ飛びに間合いを開けている。しかもナイフ形光線のおまけつきでだ。

 歯噛みしつつ放られた光線を殴り潰すも、黒いビジネススーツ姿の男はその間にまんまと床に降り立っている。

 そうしてスーツの男は黒い髪を撫で付けて乱れを整え、すらりと整った顔に余裕たっぷりの笑みを浮かべて見せる。

 見るからに挑発めいた態度であるが、オルフェインは構わずに全速力で突っ込む。

 声からして、あの男が敵集団をしきりまとめる要には違いない。ならば手早く叩けばそれだけ突破もしやすい。

 落とすべき司令塔だと素早く見定め動いたオルフェイン。それに遅れて、銀色の戦士を狙ったビーム弾が虚空を射抜く。

 攻撃を振り切った勢いに乗せて、オルフェインは輝くほどに力を込めた拳を叩きつけに。

 だが、スーツ姿の司令塔はその笑みを崩さない。

「やれ、キメラ」

 そして静かな声での呼びかけに続いて、オルフェインを横殴りの衝撃が襲う。

 くぐもった声を漏らしながら、オルフェインはぶつかってきた何かともつれ合うようにして床を弾み転がる。

 そしてあお向けに倒れた形で停止すると、オルフェインは視界を埋め尽くす虎の顔を見つける。

 いや、オルフェインの手首を抑えて圧し掛かり、鋭い牙を剥き出しに唸る猛獣は虎ではない。

 体型そのものは雌豹と呼ぶべきか、しなやかな、少女と大型ネコ科肉食獣を合わせたもの。

 しかしつるりとした金属光沢のある表皮に、燃えるように輝くオレンジの目。ネコ科肉食獣の耳じみた突起の間からは、赤い炎のようなエネルギーの帯が伸びている。

 そしてゆるやかに膨らんだ胸を中心に、全身に巡り輝くエネルギーの経絡エナジーベッセル。

「リュミナイス!? の女の子!?」

 獣とのあいのこめいた姿ながら、オルフェインにのし掛かるのは、明らかに同族であった。

 獣人リュミナイス、強いて呼ぶならリュミナキメラか。彼女は獲物を抑え込んだ爪にさらに力を籠めると、牙の並ぶ口をオルフェインの喉笛へ落とす。

「ぐッ!?」

 それにオルフェインは、また自ら頭を突き出して迎え撃つ。

「ギャッ!?」

 キチンと力の入る姿勢からではない苦し紛れの頭突き。であるがしかし、歯と額とがぶつかった痛みにリュミナキメラはたまらずのけ反る。

 そうして押さえつけが緩むのに合わせて、オルフェインは裏脚から推進力を全開。リュミナキメラを押し返す。そのまま天井へ叩きつけて、首を極めて意識を奪いにかかる。

「撃てぇえ!」

 だがその瞬間、鋭い合図と共にオルフェインの背中で光がいくつも爆ぜる。

 するとリュミナキメラが怯んで緩んだ拘束をほどいて爪の一撃をオルフェインへ見舞う。

 背後からの弾丸と光線。それと胸元を切り裂く爪。前後から挟み込むようなダメージに、オルフェインはうめき声と共に床へとまっ逆さまに落ちていく。

 しかし歯を食い縛ってエネルギーを噴射。宙返りに頭と足との位置を入れ換えてかろうじて片膝立ちに着地する。

 それにつかの間遅れて、リュミナキメラも音もなく着地。猫が高くから降り立つような姿勢ながら、しかし同時にその腕は交差して床に触れている。

 すかさずエネルギーの弾けてみなぎる両腕を振り上げ、その勢いに任せて大きく身を弓なりにする。

 そして交差した腕の影からのぞく口の端から稲光をほとばしらせる。

「ブレェ……スパァアアアアアクッ!!」

 咆哮と共に放たれる破壊エネルギーの奔流。口から出たとは思えないほどに太いそれはまっすぐにオルフェインを飲み込もうと迫る。

「おぉらぁあああああッ!!」

 だが鉄砲水のごとく迫るそれに対して、オルフェインはかわそうとするのでなく逆に強く踏み込んで前進。合わせて左の掌を突き出す。

 豪雨の中に手提げかばんを傘とするかのようなあまりにも小さな盾。まるで身を守る用をなさない儚い抵抗としか思えない。

 だがオルフェインの掌底と衝突するや、キメラの吐き出したバスタースパークが渦を巻いて散り広がる。

 掌一つを中心に、まるで壁にぶつかったかのように拡散する破壊エネルギー。

 無秩序不規則に飛び散るそれは壁や天井、柱にぶつかってはそれらを氷のように溶かしていく。

 それほどの破壊力をたたきつけ続けられながらも、オルフェインは腕ひとつで支えて見せている。

 種明かしをすれば、これは手のひらに集中させたエネルギーを、叩きつけてくるものと同じ波長でぶつけかえして相殺しているのである。

 これがオルフェイン流のバリア、アジャストキャンセラーである。

 もっとも、初見で完全なる同調と打ち消しなどできるはずもなく、今曲げ散らしていられるのも、ぶつけられたのが幸いにも同族の技であるからだ。

「うぅうあぁああああああああああッ!!」

「ぐ! うぅおぉおおおおおあぁああああッ!!」

 押し切ろうと勢いを増すブレスパーク。対してオルフェインも負けじと盾とした平手で押し返す。

 両者の競り合いは辺りをドロドロに溶かして、まるで地下格納庫そのものが溶鉱炉になってしまったかのような有様に。

 地獄のものと言って差し支えない熱気が立ち込める中、やがてオルフェインの受け止めていた破壊光線が不意にその勢いを緩める。

 受け止めるまでもなくおのずから飛び散り、広がる光。

 その眩しさにオルフェインは青く燃える目を絞ってそむける。

 やがて輝きも目を刺すような勢いを弱めて、まわりの熱ともどもに落ち着き始める。

 そうして開けた視界の中には、人影一つ認められない。

「撤退された……いや、してくれたっていうことか」

 溶け残っていた足場から浮き上がりながら、オルフェインは状況を察してつぶやく。

 オルフェインが必死に突破しようとして翻弄され続けた戦いは、やつらにとって施設を捨てて逃げだすための時間稼ぎでしか無かったのだ。

 あの指揮官にかかれば、オルフェインも潰していくつもりならできなくは無かっただろう。にもかかわらずほったらかしにしていったと言うことは、なんとしても潰しておくべき相手だとは思わなかったということだ。

 放置しても大事ない。

 いつでも処理できる。

 そのように見なされた悔しさに、オルフェインは手のひらの焼け焦げた左手を拳に握りしめる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ