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短編集

光の少女

作者: 霧星 蒼

わたしが歩けば、きらきらと光が舞い、零れ落ちていく。


聞こえはいいかもしれない。だが、わたしはそれが嫌だった。


きらきら光る光の粒が、わたしの通ったあとを染め上げていく。







ある日、暗闇の中、男を見つけた。男は闇の中をもがいていた。男は苦しそうだった。悲しそうだった。何かに囚われた顔をしていた。


わたしは、思わず声をかけた。だが、わたしの声は男には届かない。


届いてほしい。わたしの声を聞いてほしい。男を助けてあげたい。


何か言葉を伝える手段がないかと、右往左往して、男の周りを飛び回る。


男の前に飛び回ったその時。男がぼんやりとこちらを見た。


見間違い?否、確実にこちらを見ている。わたしはおずおずと聞いた。


「わたしが見えてるの?」


男は答えない。なんの反応も示さない。左に飛んで見れば、男の虚げな視線も追ってくる。


見えてる。その時、男がぽつりと呟いた。


「……光……?」




わたしの姿……正確にはわたしの通った後に光る、きらきらを見ているようだった。


わたしは思った。ずっと嫌だと思っていたそれが、役に立てる機会が来たと。わたしは嬉しかった。


わたしは必死で男の前を駆けた。


しばらくすると、小さな白い光が見えた。出口だ。わたしは必死に前をかける。後ろを振り返れば、男も必死でわたしの後を追っていた。


「もうすぐだよ。」


わたしがそう呟いた。そして白い光に包まれた。光が体を包み、眩しい。振り返れば、男も、光に包まれていた。


良かった。さて、わたしは暗闇に戻らなければ。そう思ったが、体が動かない。体が言うことを聞いてくれない。


力がなくなっていく。みるみるうちに地面が近づいていく。目の前が真っ白になり、意識が遠のいていった。






ある事件が原因で、体はもう大丈夫なのに、ずっと目を覚まさなかった男は、白いベットから起き上がっていた。男の腕には針が刺され、その針からは点滴が落とされている。


男は、駆けつけた友達に語る。


「不思議だよな。俺が闇に呑まれそうになっていた時、ふと小さな光が見えたんだ。で、その光が、ついてきてっていうみたいに揺れて、その光、見てるといやに気分が明るくなってくるっていうか、自分に自信が持てるようになるっていうか。なんとかなるって気持ちが湧いてきて、追ったら、闇を抜けられて、光に包まれたっていうところで目が覚めたんだ。


そこまではありふれたような夢物語かもしれないけどよ。」


そこで男は言葉を区切る。


「朝起きたらさ、こんな奴があったんだ。」


そう言って、ベッドの先を指差す。男の友達もつられて目を向ければ。





そこには、魂の抜け殻となった、蛍がいた。

読んでくださりありがとうございます。以下解説的なやつです。


絶望と希望という名の蛍の話です。


解説:その蛍は闇の中に生きる希望という形をとっていたものだった。


その世界から出てしまった蛍は、蛍の寿命と同じように、死んでしまった。蛍自身はとっくに寿命が尽きていたから。

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