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僕のVRMMOプレイ日誌  作者: にゃあくん
初めてのヴァーチャルリアリティ
8/45

狩りを始めたものの、殴られながら弓を構える自分の姿を想像したらなんか違う感が激しかった件

   【サービス開始二日目】


 さて、二日目である。朝食やその他の細々としたことを済ませてのログインであったので、時間的には10時を過ぎたくらいになる。神楽はとっくにログインして今どこにいるのやら。


 今日から本格的にスタートであるからして、準備は万全にしておく必要があるだろう。


 幸い昨日お使いクエストをいくつかこなしたので小金はある。


 まずは、矢と回復薬の調達である。


 中央区のマーケット街にいけば、NPC店舗が並んでいて、レアリティの低い消耗品はそこで手に入れることが出来る。


 FFOでは、武器には装備レベルが設定されていて、スキルレベルがその値を満たしていないと装備することが出来ない。防具にも装備レベルはあり、重装鎧スキルや軽装鎧スキルなどが必要となるが、こちらは、一応レベルを満たしてなくても装備することは出来る。ただし。防具には防御力だけでなく、ステータスをアップさせる効果や、魔法や属性攻撃に対する抵抗力などが付加されていることが多く、それらの付加効果を発揮できなくなる。


 手持ちのお金(単位はギース、略記号はGである)で最も安い木の矢を99×2セットと初心者ポーションを1ダース購入した。初心者ポーションは、所持している戦闘スキルの中で最も高いものが30レベルを超えるまでの間、ヒットポイントを50%回復してくれるというすぐれものである。


 そのため、戦闘系スキルを30でひとまず止めておいて別のスキルを上げるという方法もあるらしいが、新しくスキルを得るためのスキルポイントは、50レベルで得られるため、思案のしどころらしい。が、戦闘スキルを一つしかもっていない僕にとってはあまり意味のないことである。


 よし、基本知識は手に入れている。今日はさっそく戦闘へ行ってみよう。


 まずは装備の確認である。


 メイン武器は、通称初心者武器であるビギナーズボウ。サブ武器に、矢筒をセットする。ちなみに矢筒には矢が10本入るようになっている。これもまた初心者装備の一つであり、成長に合わせて買い替えていく必要がある。矢筒に、これまた初心者武器であるビギナーズアローを10本セットする。


 最初、フルダイブなら実際に手を使って装備品をセットするのかと思っていたが、流石にそれはなかった。視線入力でコンソールパネルを呼び出して、マイバッグから装備欄の矢筒へと移動させることでセットできる。


 防具は基本5か所の部位に分かれている。頭・胴・脚・手・足、である。頭を除く4部位には初心者装備が用意されていて、デフォルトで装備済みだ。ちなみにこれを外したからと言って裸になるわけではなく、ちゃんと着脱不可の下着を着けている。当たり前のことだけれど、色気も何もない野暮ったい下着である。


 あと、忘れてはならないのが職業のセットである。


 全てのプレーヤー共通の所持職業である[見習い冒険者]


 それとは別に、僕の場合、[見習い調理職人][見習い木工職人]がある。


 戦闘系職業は戦闘で経験値を積むことでレベルアップしていくというのが基本。


 職人系職業は、職業ギルドやその支部に制作物を納品することで上がっていく仕組みだ。


 それとは別に、士官系職業(兵士や騎士など)と開拓者系職業(農夫や漁師など)がある。

 士官系と開拓者系はどちらか選択制になっていて、いずれどちらかを選ばなければならないとのことだ。


 もっとも、国に仕官して兵士になったからと言って、釣りスキルなどの開拓系スキルが取れないわけではないのでその辺はプレイスタイルの問題だ。


 とりあえず、[見習い冒険者]のスキルスロットは5つ。初期スキルをすべてセットすることが出来る。


 戦闘するのに、調理や木工をセットして何かあるのか、と言われると、実はちゃんとあったりする。


 スキルにはそれぞれ、セットすることで能力値をブースト出来るようになっている。低レベルではほとんど効果がないけれど。


 ステータスを確認する。



 リュート  種族:オーガ・男

       職業:見習い冒険者Lv1

STR:15  DEX:10  AGI:10

VIT:15  INT: 5  MND:10  CHR: 5


HP: 36/ 36

MP:  9/  9

SP:100/100

TP:  0/100


 〈弓術〉0Lv

 〈遠視〉0Lv

 〈木工〉0Lv

 〈調理〉0Lv

 〈サバイバル〉0Lv


 装備

 メイン:ビギナーズボウ サブ:矢筒(ビギナーズアロー×10)

 頭:なし

 胴:ビギナーズシャツ

 脚:ビギナーズズボン

 手:ビギナーズグラブ

 足:ビギナーズブーツ



 あとは、慣れだ。弓を撃つ感覚は掴んだ。後は実践で試していくしかない。




 東門からフィールドへ出ると、そこは正に戦場だった。


 一部の幸運にも昨日ログインできた者たちを除けば、今日が初プレイになる人が多い。それが何を意味するかと言えば、獲物の奪い合いである。FFOでは、原則としてファーストタッチ、つまりは最初に攻撃を仕掛けたパーティに戦闘権が与えられる。


 そのため、多くのプレーヤーが比較的安全なエリアである街から出てすぐの場所で獲物を求めて走り回っているのだ。


「わき!……取られ」


「くそ!次だ、次!」


「よしっ釣り!」


 悲喜交々の叫びが辺りを支配している。さて、この中に入っていいものか、悪いものか。


 そう悩んでいると、いきなり腕を掴まれた。


 FFOのシステム上、明確にターゲットしない限りほかのプレーヤーに触れることは出来ない。だから、その相手は偶然などではなく明らかに僕をターゲットにしているということだ。


「おい、きさま。弓なんて持って何する気だ」


 強引に引っ張られる。


「貴様も自称誤爆PKか? そんな卑怯者にゲームやる資格はねぇ!」


 エルフの剣使いの男性だった。かなり興奮している様子。抜刀までしている以上、かなりの喧嘩腰なのは間違いない。


「ユーゴ! 落ち着きなって。まだその人が悪質なPKとは限らないんだから」


 こちらは、フェアリーの杖使い……魔法使いタイプなのだろう……がユーゴと呼ばれたエルフをなだめている。


「ごめんね、君。不快な思いをさせちゃって。ぼくら、さっきPKくらっちゃってさ。死に戻りしたばかりでさ」


 フェアリーの男が言うには、飛び道具の誤爆がかなり多発しているらしい。このゲーム、何故か手持ち武器では相手をターゲットしない限りプレーヤーにダメージが当たることはないのだが、一度手を離れた遠距離攻撃の場合、他のプレーヤーにダメージを与えてしまう。


 ユーゴも、モンスターとの戦闘中に飛んできた矢弾がもろに顔面に当たり、そのせいでモンスターに倒されてしまったとのことだ。ちなみに矢弾のダメージはあまりなかったらしいが、いきなり顔に飛翔物が当たってパニックになってしまったようだ。


「一件や二件じゃないんだ。結構な数の被害が出てる。それも、モンスターと戦っている最中とかにね」


 僕は、〈遠視〉のスキルを発動させて辺りを見回してみた。そもそも、この混雑の中ではたちの悪い弓使いがいても見つけることが出来るかどうか。弓は外れてしまうと誤爆を引き起こすので、ひょっとしたらただの事故なのかもしれないし、あるいは故意なのかもしれない。


「だから、君も弓はしまった方がいい。ユーゴみたいに被害にあって頭にきている人もいるんだ。中には晒しみたいなことをやる人も出るかもしれないからね」


「忠告はありがたいんだけど、武器はこれしか持ってないんだ。だけど流石に今の話を聞いた後だとここで狩りする勇気はないなー」


 僕は頭を掻いた。


 ちなみに、この近辺のモンスターは野犬らしい。特に目立った能力もなく、それこそゲームを始めた人が何も考えずに倒せるモンスターとして配置されているようだ。

「そっかー。だけど、狩りやすいモンスターが湧くところはどこもこんな感じだよ」


「そうか、それは困ったな」


「あー、なんだ。さっきはすまん。気が立っててさ。パット、トカゲとかはどうだろう。トカゲを狩ってるやつはみかけねーし」


 ユーゴが一度頭を下げてからそう提案してきてくれた。こっちが素なのだろうな。


「う~ん、どうだろう。トカゲって毒持ちだからね。毒消しは高いからあまり狩られてないけど」


 パットと呼ばれたフェアリー男性は申し訳なさそうにこちらを見た。だけど、別段それに申し訳なさを感じる必要はない。情報はどんなものでも貴重だし、トカゲが毒を持っているという情報だけでも充分礼を言いたいところだ。


「いや、充分助かった。君らがいなかったらあの中で弓撃ってたかも知れない。ありがとう」


 僕は二人からトカゲの生息区域を教えてもらうと、別れを告げた。彼らはまた、大混戦の中へと飛び込んでいったようだった。


 さて、僕も行ってみるか。僕は、二人から教えてもらった区域へと足を向けた。




 人気がないのには理由がある。それを僕は知ることになった。


 僕の足元には、一体のトカゲ……というかイグアナ? が倒れている。サバイバルスキルを用いて現在解体作業中だ。


 先の練習で分かったことだが、弓はしっかりとした構えからでないとまず当たらない。将来的にはスキルやアビリティなどで改善されるかもしれないけれど、今の段階では、それは無理だ。


 つまりは、敵が殴ってきているのを避けることすらできず両足を踏ん張ってしっかりと構えなければならない。


 トカゲの攻撃は主に3種の通常攻撃と一つの技があることは確認した。


 最も頻繁に繰り出すのが、前足の爪による引っ掻き攻撃。次いで、咬み付きによる毒付与攻撃。タメが大きいがダメージも高い尻尾攻撃。これらが通常攻撃で、技としては毒霧を吐いた。最初の一体を倒すのにポーションを一つ使ってしまった。これは効率が悪い。ちなみに、トカゲの毒は致死性はないためHP1で毒によるHP減少は止まってくれた。もっとも、毒自体は抜けていないのでポーションでHPを回復したらまたダメージになるのだろう。


 と、のんきに考えているが、僕のHPは、今1である。毒も継続中だ。


 ちなみにトカゲのドロップ品は、トカゲの皮が一枚。これがいいものなのかどうかは僕に判別はつかない。


 サバイバルスキルによる解体は、通常ドロップの他に解体専用のドロップ品が得られるらしいが、解体にはリアル時間で1分ほどかかるようだ。今、解体中を示すタイムバーがゆっくりと減少しているのを視界の隅に捉えている。


 これは効率が悪いな。ソロでまったりするならともかく、パーティ戦だとこの時間のロスは大きいだろう。レベル上げ・スキル上げに関しては時間単位でどれだけ多く敵を倒すか、どれだけ多くの回数敵を殴るか・そして殴られるかが重要なのだから。


 だが逆に僕のようなスタイルの場合、これはこれでありがたい。矢弾である意味銭投げしている以上、可能な限り一体からより多くの戦利品を確保する必要があるからだ。


 これはゲームである以上、無限に拾える石ころなどや、逆にレアすぎて値段がつけられないアイテムなどを除けば、店売りが出来るはずだ。


 そうこうしているうちに、タイムバーは0になって解体が終了した。解体で得られたのは、トカゲの肉。


 よし、よし。出費はバカにならないが、一歩ずつ進めていこう。


 僕は、弓を構えなおし、改めてトカゲに狙いを付けた。


 ちなみに、遠距離系スキルが使いづらいのにはわけがある。


 それは、有効射程距離という概念である。簡単に言うと、遠距離攻撃は、スキル値に依存する有効射程内でその本領を発揮できる。そして、スキル0の時の有効射程は、なんと2メートルしかない。


 さらに、その攻撃属性が突属性であるため、敵を点で捉えなければならないのも欠点だ。これが刀剣類などのスウィングする武器ならば、踏み込んで振りぬけば相手が大きく回避しない限りヒットするため、命中補正が高くつく。だが突属性武器は正確に命中させなければならない。


 難易度は高いうえに、殴られながら矢を放つのはそれなりに度胸がいる。それがヴァーチャルリアリティでの仮想存在と知っていても、大口を開けて咬み付いてくる大きなトカゲは脅威だ。


 ある程度戦っていると、ピコン、というちょっと間の抜けた音が頭の中に響いた。


〔システムメッセージ:スキル〈回避〉を習得しました〕


 あれ? スキルってスキルポイントを消費して取るものではなかったっけ?


 とりあえず、今戦っているトカゲを射倒して解体する。


 コンソールからヘルプ欄を呼び出して、スキル習得について調べてみる。


 すると、基本的にはスキルはスキルポイントを利用して購入するものであるのは間違いない。だが、スキルを持っていない状態で該当する行動を繰り返すことで極めて低確率でラーニング出来るらしい。

 さらに、スキル数が10に満たない場合、その確率はぐんと跳ね上がる。


 だとすると、あと4つスキルをラーニング出来るということなのだろうが、これはちょっと思案しどころだ。今回の回避スキルのように、意図せずとも取得してしまう可能性もあるということだから。


 まあ、それはさておきいったん戦闘をやめて、フィールド上に点在する安全地帯へいったん戻る。この安全地帯は基本的にフィールド上ではスキルの付け替えなどが出来ない仕様のための対策として置かれている。数分ではじき出されたうえ、再利用は1時間後という面倒な仕様だが、野外でログアウトしたりするのに便利ではある。


 とりあえず、直ぐに使うことのない〈木工〉と〈回避〉を入れ替える。


 時計を確認すると、現在地球時間で12:23分となっていた。13時にはいったんログアウトして食事をとろう。それまで、もうひと踏ん張り、頑張りますか。


 僕は弓を手に取ると、再びトカゲエリアへと足を向けた。


 さあ、狩りの再開だ。

お約束的に、〈弓術〉は地雷です。

巷では、弓取るぐらいなら、属性魔法スキルを取って魔法で釣るのがテンプレとして既に定着しつつあります。

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