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僕のVRMMOプレイ日誌  作者: にゃあくん
夏のイベントでの思い出
37/45

夏のイベントの中休み、食事革命にやりたいことが増えて困っている件

「お兄ちゃん、アレはやり過ぎだと思うんだよね」


 僕の出した提案は半ばだけれども受け入れられた。華がなければ花を添えればいいのだ。

 結果、カオスな世界が繰り広げられたのであった。


「ま、余興だから、いっか」


 そう、神楽たちに賑やかしをお願いしたのだ。もちろん、正規のスクリーンショットを撮った後であるので大勢には問題はない。むしろ、そのカオスな雰囲気は場を和ませてくれたともいえる。


 では、なぜやり過ぎだというかというと、だ。


 はい、妹たちのボディガードを、いちごさんにお願いしました。


 集合写真的なものなら問題ないのだけれど、ツーショットSSを撮ろうとする輩もいて、正直不愉快だったので、女性プレイヤーにちょっかい掛けようとした人がいたら、適当に邪魔してくれないかとお願いしてみたのだ。

 いちごさんはノリノリで、女の子たちが嫌がっているケースを敏感にかぎ分け、絶妙なタイミングで写りこむという荒業を見せてくれたのだ。

 ちなみに、SSの基本的な著作権はメーカーにある。そのため、加工したSSを雑誌やネット上に上げることは禁止されているのだ。そのため、喜々としてツーショットを撮ったつもりなのに、ポージングしたいちごさんがさりげなーく写り込んでいるというシュールなSSに仕上がっていた。


 ちなみに、先輩とツーショットを撮った人物はもっと悲惨である。普通に撮ったはずなのに、何故か伸ばした手が先輩の胸を触っているように見えたり、妙に表情がエロチックだったりと、このSS公開したら人生終わるみたいな構図になっているという。

 ちなみに、これは先輩の得意技である。先輩の写真のモデルになると、握手をしているはずの構図が、何故か絡みっぽくなるのだ。そういう角度と瞬間を目ざとく見つけるのが天才的なのだ。

 彼女のジョーカーとして、何枚かそういう写真を押さえられているのも、僕が彼女に逆らえない理由の一つだ。


 ちなみに、いちごさんへの報酬は、いちごさんとのツーショットSSだった。なんだかんだで、いちごさんには世話にもなっているし、付き合っているうちにそう気にならなくなっていたのでOKしたのだが、まさか先輩がプロデュースを買って出てくるのは予想外だった。いや、予測していなければならなかったのだろう。

 あの、いちごさんの、


「まあ、素敵。家宝にするわ、あんなちゃん」


 というとてもうれしそうな声に、僕は考えるのをやめた。見なければ正気値が減ることもない。


「でも、あのライターさん、女の子とばっかりSS撮ろうとしてたよね。いちごちゃんにはお礼言っておかなくちゃ」


「それは……先輩がまとめてやってくれているから、メールでいいと思うよ」


 報酬の件には触れさせるわけにはいかない。僕のSAN値のため……に。




 夏のイベントは、そこそこ盛り上がったものの、ある程度したら落ち着いてしまっていた。イベント自体は楽しかったものの、どちらかというとスキルの紹介イベントであったというのが主だった者の共通認識と言える。

 特に、〈調教〉と〈騎獣〉のコンボによる、マイペット騎乗は一部のプレイヤーの育成魂に火をつけたといえる。彼らは、イベント終了を待たず、通常エリアに戻り〈調教〉と〈騎獣〉のスキルをゲットすべく奔走している。

 僕は、というと、ひねくれ者の性と言おうか、みんなが右を向いているのなら、あえて左へ進むのがマイジャスティスということで、あえてそのブームに背を向けていた。

 正直に言えば、馬上弓などあこがれないわけではないのだが、いかんせん、ロングボウタイプは、騎乗射撃が出来ない仕様だ。例外として和弓タイプがあるのだが、これも騎乗射撃するためには、〈長弓〉スキル500レベルで派生する大陸限定スキルである〈長弓:東大陸〉が必須となる。ちなみに、この大陸限定スキルだが、神話や伝説に名を残す武器の性能を引き出すためには必須となっている。一応通常スキルでも使えるのだが、その場合、出回っている武器よりやや強めの武器、といった位置づけに過ぎなかったりする。


 さて、僕が何をしていたのかというと、〈調理〉スキルのレベルアップである。というのも今回のイベントで、これまでごく一部の強さを極めるタイプのプレイヤーしかとっていなかった食事に大幅な変更があったからだ。

 これまでは、肉料理ならSTR、スィーツならINT、穀物料理ならVITといった特定のステータスが固定値で微増するというだけの効果しかなかった食事だが、これが、食材のランクなどで上限があるとはいえ、固定値ではなくパーセンテージで上がるように仕様変更があったためだ。また、調理ギルドに所属することで、生産職[調理職人]になることが出来るのだが、この職業に就くことで、これまで固定されていた生産レシピに追加素材を加えることが出来るようになったのだ。

 例を挙げてみよう。

 もっとも初期に手に入れることが出来るレシピの一つである兎肉のグリル。

 旧性能では、STRが+2されるという性能だった。+2とは言え、初期キャラクターには十分な上昇ではあるのだが、如何せん、初期プレイヤーは食事にかけるお金などなく、逆にそういった消耗品にも手が出せるレベルになると、+2は誤差といっていいレベルになってしまう。

 だが、仕様変更によって、STR+40%(上限:+5)に変更されたのだ。

 また、兎肉のグリルのレシピは、ウサギの肉+マジョラム、という簡単なものだが、[調理職人]の職業専用アーツ【素材追加:調理】でさらにスパイスを加えたり、野菜類を添えたり出来るようになった。

 その場合、スパイスだと、そのスパイスに対応した状態異常への抵抗力などを付加できるし、野菜を添えた場合、微量ではあるが別のステータス(野菜類ならば、MND)が上がるようになる。

 また、これは別の生産系職業にも言えることなのだけれど、そうやって追加素材を加えた作品には銘が刻まれるという副次効果もある。食事アイテムやポーション類のような消耗品ではオマケ要素に過ぎないが、武器や防具といった装備品ならば、製作者の名前が残ることで知名度として広がっていくこともある。

 実際、各ワールドや所属大陸において、名前の知られる職人というのがちらほらと挙がり始めている。

 いちごさんことストロベリー氏もまた、革細工職人として名を馳せている……のだが、彼女の作品を男性が身につけていることは少ない。いちごさんが差別しているわけではなく、やはりまっとうな男子では、いちごさんに近づくのには勇気がいるのだ。

 付き合いもそこそこの長さになるし、いちごさんが(あの独特の風貌と性癖を除けば)極めてよい人だと知っているので普通に付き合えているけれど、単に評判を聞いて(名前は可愛らしいしね)近づいた男性はその容貌を見た瞬間踵を返すという。


 少し話がそれたか。話を戻すとしよう。


 先の海水浴イベントにおいて目玉と言えるのはやはり水着と騎獣であったろうが、そのほかにもいろいろなものがあった。水につかったまま戦闘するための〈水中戦闘〉スキルの存在。〈水泳〉の派生スキルである〈潜水〉の存在は、水中にも何らかのイベントの種が存在し得ることを開発陣からのメッセージと受け取った者も多い。

 また、〈調理〉に関しても、イベント中に発売されたレシピである「海鮮バーベキュー」は大好評であった。もちろん、ハーフダイブのプレイヤーにとっては味などは関係ないし、フルダイブしている僕たちにとっても、味覚再現は洗練されているとはいいがたく、なんとなく海の幸っぽい味がするような気がする程度だったのだが、食事効果の体験としては非常に有効であったと言える。

 なにしろ、微小ながら〈水泳〉〈潜水〉のスキル上昇があったのだ。これは、料理アイテムの中には、スキル上昇の効果があるものが存在することを暗示していた。

 現在のところ、料理アイテムの中にはそういったもの発見されていないため、「海鮮バーベキュー」限定の可能性もあるにはあるのだが、ないと決めつけるには早すぎる。

 だからこその研究とスキル上げなのである。


 加えて言うなら、ウッディたちやミネアたちがまるで欠食児童か何かのように、料理アイテムを購入していってくれるので若干ではあるが懐も温まってきている。まあ、その儲けもたいていスパイスアイテムなどの購入に消えていくのだけれど。



 そんな風に、スキルを伸ばすために奔走する毎日ではあったのだけれど。



 夏のイベント後半戦が、始まろうとしていた。

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