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僕のVRMMOプレイ日誌  作者: にゃあくん
夏のイベントでの思い出
35/45

雑誌のインタビューなんて初めての体験にガチガチの僕に投げ込まれた一言が与えた影響についての件

 僕は、ガチガチに緊張していた。目立つという事は僕にとってこれまでマイナス以外の何物でもなかった。このゲームを始めて多少は注目されたりすることもあったが、こんな形で目立つのは勘弁してほしかった。

 困ったことなのだが、フルダイブだと、緊張がストレートに出てしまうのが難点である。

 つまりは、バレバレということだ。


 そして、それは先輩も同じことであり……アレは絶対笑いをこらえてる感じだ。


「はい、準備はいいですか。……では、全ワールドで最初に初期エリアボス討伐を果たしたプレイヤーチームと、それのチームを母体にしたギルド〈ピカレスク・ロマン〉へのインタビューを始めます。なお、〈ピカレスク・ロマン〉はギルドID:AQ0001、つまりこのゲームで最も最初に生まれたギルドであることを説明しておきます」


 司会をするフェアリーもまた出版社側の人なのだろう。なかなか堂に入った感じだ。もちろん、取材をするために集まった雑誌社の面々もまた様々なアバターに身をやつしている。中には、かなりのやり込みをしているように感じるキャラクターも見受けられた。なによりきちんと整えられた装備品がそれを示している。

 この時期、職人のレベルアップや装備品をドロップするネームドモンスターの発見などで、様々な装備品が流通している。それによって、見た目でだいたいのプレイヤーのランクが分かる。もちろん、それを嫌って、街着と呼ばれる人目に付く場所で着るオシャレ着で身を包む者もいるが、結局見た目のいい装備品をそろえることが出来ることからばれてしまうことも多いようだ。

 ざっと見で、2割ガチ装備、2割オシャレ着、残りが水着だ。まあ、それらが全員雑誌社のライターかどうかはわからないのだけれど。実際、野次馬もいるだろうから。

 実際、見た事のない装備品を身に着けている者もいる。おそらくは東大陸系のオシャレ着なのだろうが、チャイナ服に似た格好の女性キャラクターや、ターバンのような頭部装備を身に着けた男性キャラクターも見受けられる。

 それはそうだろう、大分攻略が進んでいるとはいえ、まだまだ一部のトッププレイヤーを除いては別大陸まで足を伸ばすものは少ない。僕もまた、そこまでのプレイヤーではないし、そもそも街に寄り付かないため、装備品などに対する知識はもっぱら攻略サイトや妹からの伝聞が殆どである。


「さて、まずは自己紹介から始めてもらいましょう。順番はそうですね、まず、初期エリアボス初討伐のパーティメンバーから順にお願いします」


 司会者のフェアリーが、ウッディにマイクを手渡す。どうやら、マイクは今回のインタビューイベント専用のアイテムのようで、普通ならアイテムを渡す場合、トレード専用のコンソールを開く必要がある。これは、ハーフダイブ、フルダイブ問わず、ゲームの基本である。


「えー、〈ピカレスク・ロマン〉ギルマスのウッディだ。今回、こんな企画の打診を受けて正直びびっちゃぁいるが、滅多にない機会だから受けさせてもらった。自己紹介つっても、大したことを言えるわけじゃねぇが、見ての通り、小悪党系盗賊が俺のスタイルだ。……こんな感じでいいかい?」


 ウッディはさらっと流す。確かに、自己紹介と言っても正直、何を言っていいのかわからない。リアルばれするようなことは言えないし、かといって、スキル構成などを話すのは感心されないのが今のFFOの内情だ。PK可能である以上、スキル構成を全ばれすることは危険だというのが共通認識としてある。

 もちろん、外部から確認できることもある。装備品もそうだし、職業レベルは意図的にフィルターを掛けない限り調べることが出来る。実際、例えば、ウッディをターゲットした状態でターゲットサーチコマンドを使えば、職業・レベル・現在の装備品を確認することが出来る。サーチフィルターを掛ければ、職業や装備品の名前を調べることが出来ない様にすることが出来るので、対プレイヤー戦を想定しているプレイヤーは日常的にフィルターを掛けている。


 続いて、ギルボアがロールプレイ中の寡黙さが嘘のように、がちがちに緊張して、それでもギルドのメインタンクとして信頼されていることを誇らしげに語った。見た目とのギャップが受けて、実際好印象を与えたようだ。


 三番手に、アシェラさん。順調に暗黒騎士を目指してのプレイを続けているようだ。ちなみに、〈ピカレスク・ロマン〉の面々は殆どがこのインタビューに対して彼らのイメージを補強するように装備品を整えて当たっているのだけれど、アシェラさんだけは水着着用である。ただし、彼女を最も象徴する背丈ほどもある両手剣は背中に背負っていたけれ。

 この人、がさつにふるまってもどこか色気があるんだよなぁ。しかも、今はビキニタイプの水着でそのエルフらしからぬ健康的な肢体を晒しているのでなおさらだ。


 オーラ、ドーラムもなかなか堂に入った自己紹介を披露する。二人とも、順調に自分のキャラクターイメージを実現するために邁進しているようだ。


「じゃ、次、リュートな」


 どこか、他人事のように……多分僕は逃避していた……彼らの自己紹介をきいていた僕にドーラムがひょいっとマイクを手渡してきた。


「え、あ、もう僕の番? え、えーっと……何を言えばいいのか……リュートと申します。レンジャーを目指してプレイ中です? でいいのかな」


「おいおい、なんか頼りないなぁ」


 記者席となっている辺りから失笑がもれた。


「君は、〈ピカレスク・ロマン〉のメンバーじゃないんだよね。どんな風に知り合ったのかな」


 質問が飛ぶが、それは、司会のフェアリーが押しとどめた。


「質問は後程時間を取っておりますので、そちらで。……以上6名が最初にエリアボス討伐を達成したメンバーになります。また、全ワールドで最も最初に起ち上がったギルドである〈ピカレスク・ロマン〉の残りのメンバーを紹介します」


 助かったー。ちょっと余裕がなくなってたんだよな。と客席を見ると、いつの間にかミネアたちのパーティが先輩と合流していた。なかなかに華やかな一画が出来ていて、男性プレイヤーたちが何とか近づこうとするものの、最強の……いや、最恐にして最凶のボディガードたるいちごさんによって阻まれていて一安心である。


 現在の〈ピカレスク・ロマン〉の構成メンバーは9名。攻略の前線にいるギルドとしては小規模だだろう。というのも、基本的に彼らはロールプレイヤーであり、それも悪役に限定しているため、ガチの攻略ギルドとは逆方向に審査が厳しい。また、攻略の最前線にいると言っても、あくまで初期メンバーたちがそこにいるというだけで、決して攻略系のギルドというわけではない。


 次に紹介されたのが、暗殺者(予定)姉妹のユラとユリ。リアルでも双子というちょっとした変わり種だ。もっとも、リアル双子で、名前もよく似ているのに、容貌は全く逆で、がっしりとしたアスリート体系の姉のユラと、どこか退廃的な気怠さを纏ったような妹のユリ。不思議なことだが二人の顔立ちはほぼ同じなのに、全く別人に見える。


 次いで、ギルボアと並ぶマッチョのバルトロメオ。ただし、ギルボアを一言で表すなら、禿、だが、バルトロメオを表す一言は、髭、となるだろう。名前と雰囲気からすると、海賊的な何かを目指すのだろうか。ちなみに、北大陸でのみ得ることが出来るヴァイキングという海賊系職業があるのだけれど、彼のレベルからすると、まだまだ北大陸への上陸は厳しいかもしれない。


 最後が、ギリギリまで肉を削ぎ落すというキャラメイクをしたため、まるでがい骨のように細い魔法使いタイプのミクトラン。魔法使いタイプなのだが、武器は大鎌である。死神あたりがモチーフだろうか。


 自己紹介が終わり、インタビューが始まる。


「では、先ほどの質問です。皆さんはどのように知り合ったのですか」


 記者席から質問が飛ぶ。


「ま、自然に、だな。ピカレスクの連中は、基本的に俺のスタイルの賛同者という感じか。リュートはちょっとしたきっかけでフレンド登録したんだが、その誼だな」


 そもそも、ネットゲームの出会いなんてそんなもんじゃないだろうかと思う。劇的な出会いというのはそうそうあるもんじゃない。


 その質問を皮切りに、次々と質問が飛んでくる。


 ボス弱体のフラグはどのようにして発見したのか。

 それぞれのメインウェポンはなんなのか。

 ゲームを始めたきっかけはなんなのか。


 あまり真新しい質問はない。質問者の方もとっかかりを見つけるためのジャブみたいなものなのかもしれない。これだと、気楽に終えられるかもしれない。


 そう、気を抜いた瞬間、その質問……といっていいのか……が飛んできたのだった。




「ねえ、そもそも、弓使いなんて足手まといをパーティに加えたのはなんで?」

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