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僕のVRMMOプレイ日誌  作者: にゃあくん
夏のイベントでの思い出
33/45

これは運営の陰謀に違いないと思いながらも、まんまと乗せられた上に満喫してしまった件

 さて、予想外のいちごさんの大活躍で、BPも500強溜まっている。どうやら、パーティを組んで一緒にまわっている場合、ゲームプレイヤーが稼いだポイントの半分がパーティメンバーにも加算される仕組みになっているようだ。また、一つのゲームにつき、大体400ポイントが上限の目安になっているようである。

 現在、僕といちごさんのガッツリ得意分野に嵌ったミニゲームがあったおかげで、累計600ポイント、先輩は400ポイント稼いでいる。うち、100ポイントは水着購入に充てているので500ポイントというわけだ。


「リュートくん、これ、気になりませんか?」


 今僕らは、BP交換所でポイント交換できるアイテムを物色しているところだ。

 でもって、先輩が指さしたのは、ポイントで交換できるスキル(ただし、イベント時限定)であった。今回のイベントにおいて、イベント期間限定スキルというものが導入されている。今、僕らが身につけている水着に付与された〈水泳〉スキルもその一つだ。正確に言えば、水着着用時、このイベント会場内のみで〈水泳〉スキル100を使用できるというのが正しい。

 で、その内容なのだが。


〈調教/イベント限定〉

〈騎獣/イベント限定〉


 この二つであった。そして、次に彼女が指さしたのは海……というか、イルカに乗ったプレイヤー。


「なん……だと。これは……取らざるを得まい」


「あら、とっても楽しそうね。あたしもいるかちゃんに乗ってみたいわ」


 結果、僕らは満場一致で二つのスキルを取った。どのみちBPもイベント終了と同時になくなるのだから、どんどん使うべきだろう。


 さて、本来の〈調教〉スキルには二つの使い方がある。


 一つ目が【魅了】。

 これは、モンスターを一時的に味方につけ操るアーツである。最大の利点は、同じ地域のモンスターはたいてい似たような強さであるため、この【魅了】で操って同士討ちをさせることでソロでも同格狩りが可能となることだ。実のところ、このアーツは、初期エリアのボスダンジョンにおいて最大の難点であった中ボスのいる小部屋で活躍したらしい。つまりは、小部屋の中の雑魚モンスターを同士討ちさせて数を減らしてから中ボスを狩るという流れで一躍〈調教〉持ちが人気となったようだ。


 二つ目が【テイム】。

 これは、モンスターを捕まえてペットにするアーツだ。ペットに出来る数には上限があるし、同時展開はできないものの、経験値を得て成長するペットは人気が高い。


 今回のイベントでは、後者のアーツが一時的に解放されるとのことだ。


 今回ゲットしたスキルは、装備品である水着にセットできるという至れり尽くせりな仕様なので、僕らはスキルをセットして、さっそくイルカたちが泳いでいる湾状の地域へと飛び込んでいった。


 本来【テイム】というアーツの成功率は極めて低いらしい。どうやら、魅力度、CHRの値が大きく関係しているらしいというのは現在の仮説である。というのも、そこまで多くはないテイマーの種族は、エルフ、フェアリーといった魅力度にボーナスを受ける種族が多いと言われているからだ。オーガやドワーフのテイム成功者は極めて少ない。それもまたCHR論を後押ししている。

 だが、今回はイベントであるからか、テイムの成功率は極めて高く設定されているようで、いちごさんと先輩はあっさりとイルカをペットにしていた。で、僕はというと、残念なことに2連敗中だ。


「競争率、高っ」


 イルカが配置されると怒涛のごとき人の流れが起こり、アーツ【テイム】が飛び交う。見ている限り、ヒューマン、エルフ、フェアリーはほぼ確実にテイムできているようだ。が、ドワーフだと失敗が混じり、オーガだとまあ成功率は5割を切っているようだ。まあ、それでも通常のテイムに比べれば大分マシな方だろう。

 問題は、僕のリアルラックというところだが……なんというか、なかなかにこれが難しい。イルカのポップ数は決して少なくはない。また、テイム成功者は自然と湾から退出するので、人の入れ替わりは激しいとはいえ、総合して湾内のプレイヤー数は変わらない。

 だが、明らかに湾内のオーガ率が上がっている。

 もともと少数の種族であったため目立って多いようには見えないのだが、じわりじわりと増えているのだ。

 ここで冷静に考えれば、魅力度を高めてからリベンジすればよいということになるのだろうが、いかんせん、僕の手持ちのスキルに魅力度が上がるものはない。ちなみに、セットすることで魅力値が上がるスキルは、〈調教〉が代表的であるが、芸能系スキル、すなわち、歌唱が楽器演奏、ダンスなどが知られている。

 さてどうしたものか。

 と、悩んでいるフリをしてみたが、結局のところ、これに関しては試行回数を増やすのが手っ取り早い解決方法なのだ。


「おおお、やったぜ!」


 さっきまで僕と一緒に悲嘆に暮れていたオーガ仲間が力強く腕を突き出しガッツポーズを決めた。どうやら、テイムに成功したらしい。

 僕は僅かな嫉妬を覚えたものの、彼の喜びようを見ると、そんな嫉妬も吹き飛んでしまった。


「おめでとう!」


 僕はそういうと、ハイタッチの構えをとる。相手がフルダイブなら即座に返ってくるのだが、ハーフダイブだとエモーションリストから選ぶかコマンドを入力する必要がある。音声入力もかのうだから、「コマンド・ハイタッチ」と宣言すれば、最も近くにいるハイタッチの構えをしているプレイヤーとハイタッチすることが出来るのだ。ちなみに、握手なども同様のシステムになっている。


 名前も知らないオーガプレイヤーは、コマンドリストを操作して、僕とハイタッチをする。


「ありがとー。君も頑張って!」


「もちろん!」


 一期一会、ネットゲームの世界ではまさにその言葉が実感させられる。多分、彼とは今後会うことはないかもしれない。宝瓶宮以外のワールドに所属していたら、ほぼ会うことはないだろう。


 彼は、捕まえたばかりのイルカに〈騎獣〉スキルを用いて跨ると、湾から出ていく。その先には、彼を待っていたのであろう仲間のプレイヤーたちが彼を迎えている。

 さて、僕も頑張らないと。



 結果発表……


 僕がマイイルカをゲットできたのは、実に12回目の試行でした。確率の神様って好みが激しいのだろうか。

 まあ、失敗回数など飾りに過ぎない。ただ一回成功すればこのテイムイベントは終わりなのだから。負け惜しみなんかじゃないことだけは言っておかねばならないだろう。うん、決して負け惜しみなどではない。先輩の生暖かい同情の視線になんか気付いていない。気付いていないと言ったら気付いていないんだ。


 なんにせよ、イルカを手に入れたのだ。〈騎獣〉スキルを用いて、イルカに跨る。

 おおぅ。これ、なんか楽しい。


 特に命令を下さない場合、イルカはその判断で自由に動く。例えば、餌を食べに行ったり、別のイルカと並走したり。命令は、別段何をしろと命じる必要はなく、行きたい場所を意識すればそこへ向かってくれる。ただし、これは〈騎獣〉スキルか〈調教〉スキルの値によるものなのかもしれないが、必ずしも最適なルートを取るわけではないようだ。

 例えば、僕のイルカの場合、必ず遊びが入る。多くは、ジャンプだ。問題は、ジャンプすると必ず一度潜水するということだ。おそらくは〈潜水〉かそれに類するスキルが必要なのだろう、水中に入るとHPが少しづつ減る。水上に出ればすぐに自然回復するので、無理に潜らなければ問題はない。とは言え、水の中だと、どうも感覚が違ってやりにくい。


 さて、イルカを手に入れることで、新しく参加できるミニゲームも増える。この辺は段階を追っていてわかりやすいね。

 まずは、地上でできるミニゲームで水着を手に入れる。それによって、海上で行えるミニゲーム……いちごさんの独壇場だった尻相撲や、浮島の上を駆け抜けるゲームなどが開放される。そして、〈調教〉と〈騎獣〉をゲットすることで、イルカを捕まえて乗ることが出来るようになると、イルカレースに参加できるようになるのだ。

 これは、予想ではあるが、おそらくは水中活動のためのスキル……〈潜水〉かなにかが付与されたアイテムなり、スキルそのものなりがどこかの交換所で手に入れることが出来るに違いない。それによって水中散歩のようなことが出来るのではないだろうか。



 さて、考察しながらイルカに揺られるまま漂っていると、いつの間にかレースコースに先輩がいた。どうやら、僕がいろいろ考えている間にレース参加の登録を済ませていたようだ。

 レースは原則6名で島の周りに作られているコースを回ることになる。いくつものコースがあるらしいが、初チャレンジの場合、普通の陸上競技のトラックによく似た障害物もなにもないコースに出ることになるようだ。そのため、意外にプレイヤー同士の競争にはならないようだ。これは、この基礎コースは得られるポイントも少ないためだと思われる。

 このミニゲームの得点は、幾つかのポイントで分けられていて、もっとも単純で大きいポイントが、順位であろう。上位三位に入賞すれば、それぞれ40・20・10ポイントが与えられる。

 それとは別個に、コース上に設置されたチェックポイントを通過することで1ポイントをゲットすることが出来る。これはコースごとにそこそこの数用意されていて、誰かがそのポイントを取ったら、数秒後に再設置されるようになっている。これは、あくまで予想だが、あまり上手ではないプレイヤーへの救済措置ではないだろうかと思ってしまった。先頭集団から引き離されても、その分、リポップしたポイントを集めて回ることが出来るからだ。

 そして、もう一つがいわゆるトリックってやつだ。中級コース以上には障害物などが多数用意されているのだが、この障害物を回避する際に、なんらかのアクションを交えることでボーナスポイントが入るということらしい。

 レースの順位に関しては、極端な話、自分より上手い人と当たることを考えれば、狙って取れる人は少数だろう。それ故にポイントを稼ごうと思ったら、上級コースでトリックを決めることが最も近道のようだ。

 例外として、確実に上位を狙える……つまりはそもそも的にトップレーサーたちは積極的に順位ポイントを狙ってくる。そして、案外身近にそういう人間がいたりするものだ。

 ぶっちゃけ言うと、先輩はそういうタイプの人間だった。


 まず、最初のレースではぶっちぎりだった。イルカそのものの性能差は殆どないはずだ。もちろん、先にも述べた通り、イルカそれぞれに癖のようなものがある。僕がゲットしたイルカのように、ジャンプと潜水を繰り返すようなタイプは、当然だがスピードのロスが大きい。そのため、そんな癖を抑えるように指示する必要があるのだが、あまり頻繁に指示をしていると、レスポンスが悪くなるようなのだ。

 これはつまり、テイムしたイルカにも感情値のようなものが設定されていて、機嫌がいいと命令をよくきいてくれるが、逆に機嫌が悪いと反応が悪くなったり、最悪の場合、命令無視などが起こるのかもしれない。

 そして、先輩のイルカの癖は、蛇行。これも、ロスが激しいはずなのだが、先輩は直線ではうまくこの癖を抑えこみ、カーブの直前でその癖を解放、蛇行を利用して減速しつつ、その揺らぎをそのままカーブに入るための流れへと利用していた。

 そういえば、あのひと、乗馬経験とかあるんだっけか。この時代、乗馬なんて滅多にできるものじゃなかろうに。つくづく、完璧超人だよなあ、先輩は。あの趣味以外は。


 僕も楽しそうなのでエントリーしてみた。勝ち点は先輩がガッツリ叩きだしてくれそうなので、楽しむためのエントリーだ。

 ちなみに、テイムしたイルカには名前を付けることが出来る。名前を付けない場合、基本的にはプレイヤーキャラクターの名前+号となる。僕の場合、リュート号という名前になる。

 名前にはこだわる方ではないし、そもそも、イベント終了後にこのペットが残ることはないだろうから、このままでいいかと、名前の変更はしない。


 エントリーしたからと言ってすぐにミニゲームが始まるわけではない。エントリーした後マッチングのための時間が設けれられる。最初のプレイヤーのエントリーから3分か、あるいは規定人数集まるかでスタートする。僕がエントリーした時点で1分前にカッツェという名前のプレイヤーがエントリーしていたため、待ち時間は2分ほどになる。

 その待ち時間の間にもう二人エントリーしてきたので合計4人のプレイヤーと、二人のNPCでのレースとなる。

 よぉし、ここはきっちりとポイント取りにいってやるぜー。

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