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僕のVRMMOプレイ日誌  作者: にゃあくん
夏のイベントでの思い出
31/45

いざ、夏のイベントへと内心楽しみに会場へ向かったのに、トラブルというのはいつでも湧いて出ることを実感した件

 さて、諸兄は三日坊主という言葉をご存じだろうか。

 いや、言い訳する気はないんだよ。うん、言い訳じゃないんだ。


 ただ、毎日のプレイ内容を書き留めるのもなかなかに面倒くさ……いやいや、代わり映えしないレベルアップ・スキルアップに費やす日々を書き留めても意味がないと思ったんだ。うん、そうだ。

 って僕は何を言っているのだろう。


 まあなんにせよ、夏休みだっ!




 夏休みとは言え、僕ら学生の身分ではゲーム三昧とはいかない。

 夏休みはリアルイベントのシーズンとも言えるのだから。もっとも、いいイベントばかりとは言えないのだが。

 何を言っているのかというと、まあ、ぶっちゃけて言えば、成績が落ちた。

 赤点を取るほどひどくはないが、それでも緩やかだが、確実に落ちている。親には大見得を切った手前、ここらで挽回せねば、今後の様々な学生生活に支障をきたすことになるだろう。特に、お小遣いという面で。


 もちろん、我が愛すべき残念美少女もまた補習コースである。兄妹そろってなにやってんだか。


 それはともかく、恐るべきは変た……いや、いやいや、麗しき憧れの万梨阿先輩の頭の中はどうなっているのやら。私生活のほとんどをゲームに費やしていながら、彼女の成績は常にトップクラスである。まじめに勉強すれば、直ぐにトップになるんじゃないか?


 楽しみなイベントも満載だ。それらも満喫する気でいる。惜しむらくは、その楽しいイベントを一緒にまわってくれる人がいないことか。

 親友にそうぼやいたら、「じゃあ一緒にまわるか?」と返された。男同士でまわっても仕方ないだろうと肩をすくめたのだが、「新田先輩と神楽ちゃんも来るんだろ」と言いやがったので、その場でハリセンを折ってその頭をはたいておいた。


 ゲーム内でもイベントが告知されている。夏季イベント第一弾は、海水浴イベントだ。

 当然、水着の実装となる。また、イベント会場では、一時的に〈水泳〉スキルを得ることが出来るとのことだ。FFOでは、装備品の基本的なデザインは固定されているため、現状、水着など布面積の低い装備などは存在していない。装備関連の生産スキルのアーツには、装備品デザインのためのアーツがあるのだが、細かいデザインを装備品に付与することが出来るわけではなかったりする。


 海水浴イベントはもう間近となっていて、楽しみでならない。

 もちろん、イベントそのものを楽しむという意味であって、決して水着鑑賞が目的じゃないよ。うん、ヴァーチャルリアリティで泳ぐというのがどういうことかが楽しみなんだよ。って誰に言い訳しているのだか。


 ちなみに、ハイファンタジー的世界観のゲーム内で明らかに現実世界的な水着の導入というのはどうなんだろうと妹に話を振ったところ、呆れたような声で、「お祭りに何を言っているのやら」と返された。全く持ってその通りである。

 だとしたら、今後もイベント用装備品というのはどんどん実装されていくのだろうか。世界観ガン無視で。


 まあ、それも補習という夏の最初のイベントをこなしてからの話である。

 僕の場合、一応補習は義務ではなく自由参加ということになってはいる。とはいえ、緩やかにとは言え確実に成績が落ちた以上、補習には出るべきだと考えた……というのは建前である。

 まあ、本音を言えば、我が愛すべき妹の嫉妬の炎がおそろしかったからである。

 我が親愛なる妹は、補習強制参加名簿にしっかりとその名を乗せてしまっていた。本来要領のよい神楽だが、今回はその容量の良さを発揮できないほどゲームに夢中になり過ぎていたわけだ。

 そして、両親からは、僕の監督不行き届きが突きつけられた。

 結果として、この体たらくである。神楽はイベントスタートダッシュを逃し、僕もまたそれに巻き込まれる形でお預けを喰っている。


 それとは別に、この方は付き合いがよいのだろうか、補習とは無縁のはずの先輩も当たり前のように学校へ出てきていた。

 ううむ。恥を忍んでお願いすべきなのか?


 僕の成績に関しては、夏休み中にきちんと計画を立てて頑張れば取り戻せる範囲にある。だが、神楽はどうだろう。神楽が要領がいいことは知っているが、ここのところのゲーム三昧でその要領の良さを支える基礎部分がごっそり抜けてしまっているのだ。

 頼めば、応じてくれるだろう。こういう言い方は卑怯だけれど、僕の成績が落ちてきたのは、先輩に誘われたゲームのせいなのだから。そのことを盾にすれば先輩に(神楽の)勉強を見てもらうことは出来る。

 だが、それはあまり褒められたことではなかろう。

 弱みに付け込むのは、やはり卑劣な行為だ。


「あら、そんなことで悩んでいたのですか」


 あっさりと受け入れられたのが、なお心苦しい。


 だが、そんなこんなで始まった夏休み、である。




「ここが、イベント会場の水晶島かー」


 僕は大きく伸びをしながらそう呟いた。


「結構広いねぇ。だけど、人も多いねぇ」


 ミネアも辺りを見回しながら声を漏らす。水晶島という名前だが、別段クリスタルがあるわけではなく、この島々があるイベントエリアの名前が、クリスタルシー、つまり水晶海だからである。

 ワールドマップを開いてみるが、この水晶海というエリアがどこにあるのかは記載されていない。各スタートタウンの港から臨時連絡船が用意され、それに乗ることでこの島へやってくることが出来る。

 また、水晶海エリアでは通常の所属ワールドや国家に関係なくいろんな人が集まることになるのが特徴であり、僕らの目の前にいる多くのプレイヤーたちも、ひょっとしたらほかのワールドから来た人なのかもしれない。

 それだけの人数を収容できるのか、という問題だが、これに関しては、水晶海エリアは全部で120存在し、それらすべてが同一のマップを持ちながら相互不干渉となっているのである。

 今後、イベントが行われるときも同様の措置が取られるだろうことは予測できるのだが、同時に一つ問題が生じている。

 つまりは、エリアに突入する、すなわち連絡船に乗る前にパーティを組んだ状態でない限り、同一のエリアに飛ばされる可能性は1%以下となるということだ。

 もちろん、このままでは気の合った仲間とイベントを楽しむことが出来ないという弊害が生じてしまうため、イベント中は例外的にイベントエリアにいるプレイヤーからフレンドやギルドメンバーに対してパーティ申請が可能となっている。(残念ながら、全く繋がりのないプレイヤーを誘うことは出来ないようだ)



 そして、ゲームを始めて初めて出会うことになるのが、万梨阿先輩のキャラクター、アンナマリー。


 まさか、そう来たとは。


「うふふ、ようやく直接会えましたね」


 近くに立たれると見えません先輩。仕方がないのでとりあえず座る。

 座った状態でも、はっきり言えば僕の方が目線が高い。それほどまでの小柄なキャラクターであった。


 小さい、と言えばフェアリーを想像するかもしれないが、れっきとしたヒューマン女性キャラクターである。身長決定のスライドバーを極限まで下げて頭部をやや大きめにとることで子供のような……ええい、ここは飾ってもしょうがないだろう、幼女キャラを作り上げていた。

 長い黒髪を腰のあたりで揃え、ストレートヘヤーなのだが、目立つのは、頭頂部から生えるいわゆるアホ毛というやつだ。

 顔は完全に童顔、ふっくらとした頬は思わず突きたくなる欲求を押さえなければならないほど愛らしい。

 流石先輩、あざとい。


 驚くべきは、その職業である。職業[侍]/[兵長・ヤマト]

 職業[侍]は東方大陸の限定職である。各大陸にはそれぞれ、限定職業が存在するのだが、これらは基本的に取得条件が不明なものが多いのだ。もちろん、判明しているものも幾つかある。僕たちのスタートタウンであるエンパイアでは、重戦士系タンク職とヒーラーのハイブリットである[テンプルナイト]がそれにあたる。これは、回復魔法系スキルと、盾、重装鎧、挑発といったスキルを一定値まで上げた状態で、教会からの特殊クエストをクリアすることで得ることが出来る。

 FFOでは原則として職業によるステータスなどの差はないことになっている。取得難易度が高い職業はあれど、原則として職種としての上級職という概念はない。あくまで同一の職業の中で、見習い⇒正規職⇒上級職とステップアップしていく。

 職業[戦士]と職業[テンプルナイト]はあくまで同格なのだ。

 とは言え、それはある意味建前に過ぎない。

 取得難易度が高い大陸限定の職業は、実際には強い。簡単に言えば、性能が尖っているため、ある特定の分野において他の追従を許さないところがある。逆に言えば、専門外には弱いところがあるのだが。

 そういう意味では、ある意味ソロに向かない職業でもある。

 ちなみに、侍は攻撃特化、テンプルナイトはタンク特化(防御特化ではなく)である。


 ちなみに、神楽……ミネアの職業は、[剣士]/[兵長・エンパイア]である。

 僕は、というと[冒険者]/[ハンター]である。開拓系なため、セカンドジョブは先輩たちとは若干意味合いが違っている。ハンターは、動物系モブを規定回数【解体】することで得ることが出来た。


 まあ、それは置いておいて、今はイベントを楽しむべきだろう。まずは水着をゲットするためのイベントをこなすことから始めることになる。



「やあ、ようこそクリスタルアイランドへ。ここでは様々なミニゲームを楽しむことでBPビーチポイントを集めることが出来るんだ。まずはいくつかのイベントをこなして、BPを100ポイント集めることからスタートだ。夏のイベントは水着をゲットすることからスタートになるのだからね」


 変に陽気なイベントNPCが今回のイベントの趣旨を教えてくれた。と同時に、クエスト開始を告げるサウンドエフェクトが流れる。慌ててクエストを確認すると、


【イベントクエスト:水晶島を回ってビーチポイントを集めよう】


 というクエストが受注されていた。辺りを見回すと、様々な露店形式のミニゲーム会場が開かれている。


「お兄ちゃん、どうする? 一緒にまわる?」


 どうするべきなんだろうなー。


「それなら、知り合い同士でパーティを連結(レイド)して、各々回りませんか。丁度、いちごちゃんもこっちにきたみたいですしー」


 いちごちゃん……いちごさんもきたのかー。そういえば、いちごさんは水着、どうするのだろう。


「ほいほーい。じゃあ適当にいこっか」


 ミネアの間の抜けた声が、僕らのイベントの始まりとなった。




 だが、どうしてこうなったっ!!


「リュートくん、がんばってー」


 低音の美声を背中に受ける。声だけなら、それこそ仕事に出来るくらいによく通る美声である。

 声だけならなっ!


「あらあら、たっ……リュートもすみに置けませんわね。こんな素敵な方とお知り合いになっているとは……じゅるり」


 今、よだれ垂らしたよね先輩。いーやーだーっこの組み合わせだけは避けてほしかったーっ!


「はかどりますわー」


 何言ってんですか、あんたはーっ!


「あんなちゃん、あなたそっち系の人?」


「うふふふふ」


 これはまずい。なんで、いちごさんと先輩が意気投合してるんですか。


 ここは、ミニゲーム会場。様々なビーチでのミニゲームがあるのだが、僕は手堅くポイントを稼ぐために、得意分野で勝負することにしていた。

 得意分野……そう、スイカ割りだ。

 卑怯というなかれ。このスイカ割りに関しては自信ありだ。

 リアルのスイカ割りと違うのは、武器を使うことであるが、目隠しをして何回か回ってからあ攻撃を開始するのは現実世界のそれと同じだ。

 こういっては何だが、距離と方向を覚えさえすれば、目隠しは僕にとってペナルティにはなり得ない。むしろなじみの感覚である。

 幸いなことに、このイベントエリアに於いては、ありとあらゆるプレイヤー同士の攻撃は無効化される。それはある意味当然と言える。ここには最前線のプレイヤーから、つい先日始めたばかりのルーキー、はてはプレイヤーキラーまでイベントを楽しむためにやってきているのだから。

 もちろん、通常ならフレンドリーファイアを起こしかねない遠距離攻撃もまた、無効化される。


「おい、また当てたぞ。あいつ、何者だ?」


 ギャラリーが集まり始めているのが聞こえてくる。

 ちなみに、スイカ割りは難易度的には、並である。パーティを組むことでメンバーからアドバイスを飛ばすことが出来るようになっていて、その分パーティのメンバーにも一部ポイントが流れるようになっている。仲間の声を頼りに、スイカに攻撃命中させればポイントが付き、連続成功を続けることで、より多くのポイントを稼ぐことが出来るようになっていた。


 ゲームごとの合間に、目隠しは外されるので、位置と距離をしっかり把握しておく。目隠しされてぐるぐると回されるが、回転数をしっかり把握していれば問題ない。


 回転が止まる。だいたい3回転と60度程度か。一息ついて、向きを整える。先輩からの指示も参考に、微調整をして、弓を引き絞る。目隠しをした真っ暗な世界の中、ターゲットマーカーを視線入力の要領で固定する。そして、放つ。


 手ごたえあり。


「連続ヒット10回命中! おめでとうございます。記念品としてメダルが贈られます。イベント終了時まで大切に保管ください」


 ゲーム屋台を開いていたNPCがベルを鳴らしながら、僕らにメダルをくれた。いちごさんや先輩も、アドバイザーとして同じメダルが贈られている」


「あら、リュートくん、悪いわねぇ。何もしなくても水着もらえるほどのポイントをもらってしまっちゃったわ」


 いちごさんが小指を立てたいつものポーズと艶めかしい声で(ただし深みのある男声)言う。


「いやまあ……ある意味、ずるしてるようなものだからな」


 その一言で辺りが少しざわめいた。ずるという言葉に反応したのだろう。ネットゲームに於いてずるという言葉は何らかのプログラム上のバグなどを利用する行為を連想させる。これは失言だったか。


「目隠しした状態での空間把握は技術であって、ずるとは違うでしょう?」


 先輩がフォローを入れてくれるが、一度疑いを持った人はなかなか疑念を晴らせないものだ。ネタをばらせとの声も聞こえる。


「では、こうしたらどうかしら? 本当にリュートくんがインチキをしたと思った人は、GMコールしてみればいいのではないかしら」


 GMを呼ぶとなると、なかなか踏ん切りがつかないのもまた人の真理である。逆に、ちょっとでも納得がいかないことがあるとGMコールをする人もいるらしいのだが。


「そうだな、じゃあGMに聞いてみるとしよう。さっきから見ていたが、あんたの命中率は少々高すぎだろう。殆ど指示も見られなかったしな」


 先輩が露骨に、「あら、意外」という雰囲気を出した。ゲームである以上、表情は変わらないのだが、長年の付き合いである、ちょっとした間でわかることもある。


「まあ構いませんよ。ずるというのはシステム的なものじゃなくて、僕という個人の特性みたいなものですからね」


 見世物として面白くなってきたと判断したのか、人が集まり始めている。

 さて、どうしたものだろうか。


 GMかー。こんなどうでもいいことに来るのかねぇ。

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