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僕のVRMMOプレイ日誌  作者: にゃあくん
初めてのヴァーチャルリアリティ
13/45

衝撃的な出会いは、全てを吹き飛ばすことを実感した件

   【サービス開始三日目】


「まったく、あなたときたら」


 せっかくの昼休みなのだが、僕はいま、ゲーム部部室で正座をさせられていた。


 確かに、僕のミスだ。それはわかるのだが、これはあまりにひどくないだろうか。


「聞いているのですか?」


 万梨阿先輩の説教は実はくどい。なので、基本聞き流すくらいがちょうどいいのだが、どうも彼女は僕を弟のように思っているのか……というか、僕の姉代わりを務めているような節がある。確かに、シスコンの気があるのは認めよう。それは、10歳上の姉にとても助けられたからで、尊敬しているからに他ならない。


 どうも、姉が高校を卒業した後、海外の大学へ進学する時に、僕はたいそうな大泣きしたらしい。記憶にはないのだが。


 それ以降、先輩が妙にお姉さん的な立ち位置に立とうとする気配が見え隠れするようになったのは覚えているのだが。


 まあそれも、中学に上がるくらいにはなりを潜めていたのだけれど。


 長いお説教も右から左へ。


「それでは、今夜9時頃にログインしていること。キャラクターネームがわかりましたから、こちらから声を掛けます」


 それで、お説教は終わった。確かに約束を忘れていたのは僕が悪いのだけれど、そもそも、あのログイン不能時間が長すぎて、というよりログインできた直後にメンテナンスという不運もあって、すっかり意識から飛んでいたというのは言い訳であろうか。



 家に戻ると、新田のおじさんがやってきていた。


「やあ、龍斗くん。お帰り」


「おじさん、いらっしゃい。というか、おじさん鍵持ってましたっけ?」


「この程度の鍵ならば開けられるが?」


「犯罪ですよ、それ」


 僕は呆れてしまった。


「まあ、一ノ瀬から鍵は預かっているよ。開けられるのは嘘ではないけどな」


 この人ならやりかねないのが怖いのだが。まあそれと同じくらいこの人は法螺吹きなのだけれど。

 まだ、小さいころはおじさんの法螺話はとても大好きだった。相当なファンタジーな話だったけれど。


「フルダイブシステムの使い勝手はどうだね。なにか異常はないかね」


「うーん、まだわかりません。ただ、凄いとしか。ゲームの内容とかのことじゃないんでしょう?」


「ああ、まあゲーム自体は君が楽しめればそれでいい。私が聞きたいのは、システムとオヅマ罹患者との相性だよ。元がそのためのシステムだからね」


 そういえば、そうだった。


「あれの基幹システムは君たちの病気を研究していくうちに出来たものだからな。一部の利用患者の間に、システムとの共鳴現象が確認されている。まあ、悪影響があるものではないのだが、追跡調査は続ける必要があるのでね」


「そういえば、なんとなく目が熱くなるような感覚があったけど、それかな」


「それは、まだわからないよ。ただ、きみのバイタルデータは常にシステムに記録されているから、毎月それの提出は忘れないように。ヒメに解析をさせるから」


 ヒメというのが、おじさんたちの研究所で使用されている独自のオペレーションシステムの俗称であることは前に聞いたことがある。なんでヒメなのか、と尋ねたら「女の子だからね」とはぐらかされた。

 この時代、AIの開発は特定の人格を形成できるレベルにまで達しているので、ひょっとしたら、女性人格のAI制御されているのかもしれない。


「お願いしておいてこういうのもなんだが、ほどほどにな。昔の一ノ瀬夫婦みたいになってもらってもこまるからな」


 おじさんは、両親のことを昔から知っているらしい。両親がヘビーゲーマーであったことは知っているが、どのくらいのものだったかはよく走らないのだが、どうやらおじさんは知っているようだ。


「両親はどんな感じだったんです?」


 ちょっと怖いもの見たさで尋ねてみた。


「そうだなー。もう立派に更生しているから言ってもいいか」


 おじさんはそう言った。僕は是非と前のめりになる。丁度その時、神楽が帰ってきたようだった。足音が聞こえたのだ。


「ただいまー、あれ、新田のおじさん来てるの?」


「おう、神楽ちゃんお帰り。今からちょっと昔の話でもしようかと思ってな」


「え、またドラゴン退治とかの与太話じゃないでしょうね。もうだまされませんからね」


 妹よ、まさかおじさんの法螺話を信じていた時期があったのか。面白い話なのは事実だけど、流石に法螺ってわかろうものだ。


「いや、一ノ瀬夫婦の昔の話」


「何それききたい、きーきーたーいー」


「そうだな、一ノ瀬は初めてあった時既にゲーム廃人だったな。オンラインゲームにはまり込んで破産寸前だったよ」


 今では考えられないなー。温和だけれど、規則正しい生活にこだわっているのに。


「それは、自分の反省からだろうな。仕事もきちんとした定職にも就かずに、ゲームを中心にした生活をしていたよ。まあそれで行き倒れしたところを私が病院に送り届けたのが一ノ瀬との出会いだったな」


 意外だった。そこまでひどかったとは。


 ただ、おじさんの言うことには、一度倒れてからは健康に気遣うようにはなって、職にもきちんと就いたそうだ。ゲーム中心の生活だったのには変わりないようだが。


「で、お母さんとのなれそめっておじさん知ってる? お母さん話してくれないんだよね」


「ああ、それは言えないだろうなー。彼女の黒歴史だから……」


 そこで声を落とした。どうやら本当に内緒話らしい


「実は、梨乃さんは……おっと、これ以上は話せないようだ。帰って来たらしいぞ」


「え?」


 まさかと思った。母が帰ってきたのなら僕が気付かないはずがない。


 耳を澄ますと、確かに母の足音が聞こえた。リビングに到着するまであと2分といったところか。


「梨乃さんはね、…………だったんだよ、それも…………系の、ね」


 こっそりと、そう告げたおじさんだった。




「ねえ、おじさん、なんていったの?」


 とりあえず、両親に睨まれないだけの勉強などをして、僕らはダイブルームで話をしていた。


「いや……さすがに言葉にするには憚られる。僕もちょっとショックだった……まあ多分、悪いことしてたわけじゃないから」


「んー、どうしてもだめ?」


「すまんな。ちょっと僕自身にも整理がつかないからなー」


 ちょっとショッキングな過去ではあった。しかしまあ、納得できなくもない気もする。今の母は怒りモードにならない限り良い母親だと思うのだが、そういう傾向はあった、としか言いようがない。


「ふーん、まあいいや。なんとなく想像ついたし。じゃあ、あたし、白ちゃんたちと約束あるからいくね」


 そういって神楽は自分のフルダイブ機へと向かったようだった。僕もまた、マシンへと身をゆだねるための準備を始めた。




『Welcome to Aquarius World』


 既になじみになったメッセージ。


 昨日の夜、死に戻りしたこともあって、教会からのスタートとなる。


 昨日のパーティプレイでスキルとレベルは一気に上がっている。[見習い冒険者]のレベルが25、〈弓術〉スキルも55になっている。ここで一つ問題が生じている。


 初心者ポーションの効果が激減してしまったのだ。レベルが上がってHPが上がったこともあり、ほとんど意味のないものになり果ててしまったのだ。


 さりとて、通常のポーションは高い。高いというのは言い過ぎなのだが、消費アイテムである以上相当な出費になることは間違いない。ポーションの消費を抑えるためには、自らヒール系の魔法やスキルを身につけるか、そう言った人物をパーティに入れるか、だ。


 戦闘して思ったのだが、モンスターの強さは、モンスターのレベルに比例して強くなるのではないような気がしている。特にモンスターのHPの伸びは比例的ではない。弓使いの評判から考えると、当分の間はソロか、それを気にしないでくれる連中と組むしかない。今のところ、それは神楽、ミネアのパーティくらいしか心当たりはないが、甘えるわけにはいかないだろう。


 現場、ソロしかないのだが、ソロプレイには大量のポーションは必須となってくるだろう。


「うーむ、自前で用意するかー」


 ポーションを作れる生産系スキルは、〈錬金術〉と〈調合〉である。

 〈錬金術〉は素材アイテムから様々な魔法効果があるアイテムを作り出すスキルだ。その中には当然、回復の魔法薬であるポーションも含まれる。それだけでなく、毒薬などを作ったり、アイテムに色付けするための染料などを作ることが出来るらしい。ただし、どちらかというとマイナーなスキルでもある。


 もちろん、マイナーだからと言ってなり手がないわけではない。マイナーであればあるほど、それは逆にライバルが少ないということであり、そこにはすなわち、うまみがある。


 何故マイナーなのか、というと、初期投資がかなりかかるかららしい。これはまあ、生産スキルである以上多かれ少なかれあるのだが、〈錬金術〉は特に面倒らしい。


 なぜか。それは、初期のスキルアップのためのレシピが、初心者ポーションの作成だからである。これは、NPC販売店から、非常に安く、大量に購入できるのだ。もし、完成品を売って資金回収をしようと思っても、まず無理である。


 ならば、ギルドに引き取ってもらうしかないのだが、この時の功績ポイントはギルド店舗の買取価格によって決まる。それはつまり、ポーションを処分しても大したバックにはならないことを意味する。


 では、〈調合〉はどうか。


 こちらは比較的人気が高い。というのも、〈調合〉は薬品と薬品。あるいは薬効がある薬草アイテムなどを混ぜ合わせることで薬効を高めたりあるいは新しい薬効を生み出したりするスキルだ。

 僕が知り得たレシピとしては、初心者ポーションと毒薬を調合することで毒消しを作ることが出来るそうだ。毒薬自体の入手は多少手間がかかるものの、そこで作った毒消し薬はプレイヤーに充分な利益を含めても販売できる見込みがあるためだ。


 このスキルは双方補完し合っている部分が多々あるためセットで考えた方がよいところがあるのだが、何分スキル枠を二つも潰すような物好きは少ない。キャラクタークリエイション時からその方面へのイメージを持って作った人物くらいのものだろう。


 とは言え、僕のキャラクターイメージは基本自給自足の野外生活者である。ならば、取ってみてもおかしくはないだろう。


 まずは、スキルを習得することから始めよう。確か、生産スキルもまたラーニングは可能である。スキル10個以内のラーニングボーナスがあるうちに取っておくのも一つの手である。


 生産スキルのラーニングは、ボーナスがあるうちでないとかなり厳しいはずだ。というのも、スキルなしでアイテムの生産挑戦を繰り返すことになるため、投資額が半端じゃないということになるだろうから。


 そのためには、初期投資額を工面するためにお金を用意する必要があるのだが、元手は昨日の戦利品であろう。それなりの数のウサギの毛皮と肉、トカゲの皮と肉がある。肉に関しては調理で自己消費することになるだろうから、皮系を売り払うことから始めよう。


 そう考えながら、僕は教会を出た。ゲーム内時間では、今は夜のようで辺りは暗い。まあ暗いとはいえものが見えないわけではない。たいまつなどがなければ見えないというような意地悪な設計ではないのだ。

 昨日も戦闘中、昼夜を体験していたが、ほとんど気にならないレベルだった。


 一応説明しておくと、ゲーム内時間は、リアル時間での約2時間程度で一日が過ぎるようになっている。


 まずおは、資金確保だ。皮を売るために、革細工ギルドへと向かう。ギルドにはおそらくは職人がいるに違いない。と思って、職人街の方へ足を向けた。


「あれ、おにいさんじゃないですか」


 大分落ち着いてきた街の喧騒。その中で、大きく手を振りながら近づいてくる人影があった。ふわふわさんだ。


「昨日はごめんなさいねー。頑張ってくれたのに最後にあんなことになっちゃって」


「気にしなくていいのに。楽しめたからそれで満足なんだから」


「それじゃーわたしらの気がすまないんですよー。で、昨日、おにいさんとミネアちゃんが落ちてから何かできないかってみんなで話したんですよ。で、アイテムとかお渡しするよりもー、信用できるお友達を紹介しようってなってたんですよー」


 意外な提案。だけど、それはありがたい提案。


「とりあえずー、昨日の狩りで結構ウサギの皮集まったでしょ。職人でスタートダッシュしたβ時代のフレンドがいるので、その人紹介したいなーって」


 案外、僕の運ってのも悪くないもののようだ。


「それは助かるなー。そういうお礼なら大歓迎ですよ。是非お願いします。そういえば、トカゲの皮の高品質品とかもあるんだけど、買ってもらえるのかな」


「えっ? それマジ?」


 なんか口調が変わった。地なのだろうか。


「ちょっと、おにいさん待っててね。今白ちゃんと直チャット開くから」


「あ、ああ。わかった」


 ふわふわさんのおっとりとした話し方からは考えられないほど早口で何かをしゃべっている。


「おにいさん、ごめんね」


 そういうと、がしっと腕を掴まれた。僕は面食らってしまった。アバターとは言え、とてもリアルに感じられる。掴まれた腕も、痛みはないけれど掴まれている感覚はちゃんとある。


「白ちゃんから連行命令きたから、つれてくねー」


 そういって僕の腕を引っ張った。


 アバターに設定された体重差を考えれば、彼女が僕を引きずれるわけがない。だが、有無を言わせぬ雰囲気があったので、引きずられてしまった。


 引きずられた先は、職人街。そこにはすでにヴァイスさんやミネアたちがいた。


 特に、ヴァイスさんの食いつきがやや恐ろしい。


 空いている左腕をがっちりとホールドされた。相手が明確にターゲットとして認識している以上、抵抗しなければ掴まれてしまうのはシステム上避けられない。


「いちごちゃんとは話ついてる。連行する」


 ヴァイスさんが強く引っ張る。今度はその力で引きずられた。


 連行された先は、革細工ギルドの工作室。木工ギルドにもあった職人専用の個室である。


「いちごちゃーん。皮持ちつれてきたわー。中に入れてー」


 個室は基本的には使用中には他人は入れないようになっている。例外は、使用中のプレイヤーが入室を許可した時だ。


「いらっしゃーい。あらまあ、素敵な殿方だこと。みんな隅に置けないわね」


 野太く低音の美声が僕らを迎えた。僕は背筋を走る衝撃に本能的に踵を返そうとしたのだが、ヴァイスさんのホールドはそれを許さなかった。


「初めまして、ふわふわちゃんのフレンドのストロベリーよ。よろしくね」


 どう見ても、マッチョメイクの男性アバターが妙にくねくねとした動きで自己紹介してきたのだった。僕は硬直したまま、頷くしかできなかった。

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