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招かれざる客。

「わー!想像とぜんぜん違う!」

 執事認定してくれた金髪美少女が先程身をひそめていた薔薇の茂みに咲くピンクとオレンジの混ざった花の匂いを嗅ぎながらそう言った。

どんな想像をしてたのかは解らないが、そう言えばまだゆきちゃん以外名前聞いてなかったな。

ゆきちゃんも盗聴みたいなものだけど。

そして俺も名乗ってない。


フリーダムおかっぱのゆきちゃんも色々気になる様だが、視線は俺の頭の上に落ち着いているメンダコめそこに固定されている。

めそこ、もしかして疲労してるのか?チェンジするか?と思うが切り出すタイミングが難しい。


他の二人は相変わらずまっすぐについてくるが、さっき獣耳巫女の子が桜の木に一瞬目が行ったのを見逃さなかった。

しっぽに触れるチャンスがどこかにあるとすれば、桜かもしれない。


正面の門から、お屋敷までの間にある噴水は、西洋風のお屋敷に浮かない無難な円形だ。

無難なデザインながらに、何気に大きいそれを一瞬でストレージにしまうと、アレ・・を探す。

名前なんだったっけ?

アイテム数が多いので、名前を忘れると、探すのに苦労する。


ジラフはキリンで、ガゼルでも無くて……ガゼボだ!!

全然違った!!


流石にお屋敷の中に知らない人を入れるの嫌だから、噴水のあった場所にガゼボを設置する。

西洋風の庭園の休憩所みたいなあれだ。

カップルがいっぱいいて近寄りたくない公園とかにも時々ある、冬になると夜ライトアップされたりするあれ。

50音順に並んでいるので、すぐに見つけて噴水のあった場所に設置する。


8本の白くて細い石柱の上に、同色の細い金属で繊細なデザインに仕上げられているドーム状の屋根が付いている休憩所。

ベンチとテーブルもあるし5人ならこれで十分だろう。


「……おお。」

 一番近くにいたゆきちゃんから小さな歓声が上がる。


「すごいね、アフタヌーンティとかしたいね!!」

 もう、夕方過ぎてますけどね!!


「紅茶とかケーキとか、似合いそうですね。」

 用意するから、しっぽ触らせてくれるかな?さきっぽだけでも良いんだけど……。

突っ込みは心の中だけにして、無言で、ストレージから『まつりの皿』を人数分取りだす。

フランス製の薄くて白くてとっても強いお皿だ!


「……適当に座ってもらえる?」

 執事の演技は無理なので、普通に喋る。

幸いブーイングもなく、お行儀よく座ってくれたので、目の前にお皿を並べはじめる。

良く考えれば、用があって訪ねてきたのだろうからこんな事で駄目だしはされないよね。


「ぴきぃー。」

 まいが、慌てた様子でアピールしてきたので5人の視線が集まる。

金髪美少女……、いい加減、名前聞こう……が、まいを見て何故か喜んでいる。


「うちもフェレット飼ってるのよ!」

 まいはフェレットじゃないし、フェレットなら……名前つけにくいな、フェレット……。

取りあえず、敵襲だ。

敵襲と来客のブッキングで、対応できないのだろう慌てるまいの後ろに、やっぱりあいつが居た。


「ふむ、これはトラップか?この縄を踏めばいいのか?」

 確かに踏めば発動するが、今はやめて欲しいと顔を見れば、矢をつがえた時の様に赤いターゲットが表示されていた。

どういう事だ?


思わず手元に目を落とすと、まつりの皿(フランス製の薄くて白くてとっても強いお皿だ!)が目に入る。

これは、沢山持ってるし……、物は試しだとターゲットに向けて投擲した。

白くて薄くてとっても頑丈なフランス製のお皿は、残念王子の額にヒットし、白い柱になった残念王子と共に消えた。

どうやら皿は手裏剣か、ブーメランのくくりになるらしい。

っていうか、まつりの皿つえー!


「迷いのない一投いっとうでしたね。」

 純粋に感心した感じの獣耳巫女に、自分の事は棚に上げ、意外と容赦ない性格だなと思った。


「今ので、3回目だったし、チュートリアルみたいなものだと思ってる。」

 今まで、皿や作物を武器にしようなんて考えたこともなかった。

これからは大なり小なり戦闘が必要なら、不本意ながらも少しは慣れておいた方が良いとは思う。


「それよりあの人、罠みつけて、自分からひっかかりに行こうとしてなかった?」

 意味解んないと言って笑う金髪さん。

……いい加減名前交換しないと不便。


「3回目なら今日はもう終わりだな。」

 ゆきちゃんが断言した。


「メインホームの襲撃の、1日3回までって、一人が3回?全員で3回なの?」

 ゆきちゃんの話に便乗して質問する。


「一人が3回で、全員で3回だ。」

 うん。

ゆきちゃんは、多分、先生に向いてない。

するといままで沈黙を守っていた泉の精(仮)が、苦笑いしながら付け足した。


「その日の最初に襲撃した人がその日のその地の挑戦者になって、再戦がその日の内に3回までできるのよ。その日はもう他の人は挑戦できないの。ちなみに一日に挑戦できる土地は1か所までで、午前0時にリセットよ。」

 鈴を転がす様な声に聞き惚れながら、内容はきちんと把握した。

……ゆきちゃんは見習ってほしい。


皿を並べ終え、白い大きめのティーポットを出すと、初心者の花を入れる。

まつりのポイントで引き換え出来る、お皿と同じまつりシリーズの魔法のポットで、お湯は勝手に補填される。

同じまつりシリーズの白いティーカップとソーサーを人数分並べて、そこにお茶を注ぐ。


桃のタルトのレシピを出そうとした所で、金髪の子が待ったをかけた。

「今日、入学式だったからアルティフェクスで、奮発したの、一緒に食べよう?」

 みんなの皿にシュガーアートで桜の花が飾られたピンクのケーキや、金粉の様なものがかかったツヤツヤのチョコレートケーキ、マカロンが載ったドーム状のムース、白いろうそくに見立てられた苺のショートケーキなどが現れた。


「アルティフぇクス?」

 珍しいものが手に入る職人の町よ!と、得意げに教えてくれる。

TDOプレーヤーにとっては有名な町の様だった。

ファルケの前の桜のケーキに、視線を感じて見上げると、赤い瞳と目がかち合う。

狐巫女は、やっぱり桜が好きらしい。


「チョコのケーキ、オペラって言うんだっけ?好きなんだ。それとこれ、交換してくれるかな?」

 妹がいたらこんな感じだろうか?

嬉しそうに差し出してくる皿を桜のケーキの乗った皿と取り換えた。


テーブルの上が整った所で、席に着く。

ついに、小規模の悪魔の儀式じこしょうかいを始める事になった。


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