はじめよう、VRMMO。
「やっとこれたー!!」
真昼間の往来のど真ん中、黒髪の青年が通りに響き渡る声で嬉しさが十分理解できるほどの気持ちを込めて叫んでいる。
往来を行き交う人々は一度は視線を向けるもののすぐさま気にもとめずに視線を自分の目的地へと向けていた。
周りの反応を見て少し恥ずかしくなった青年は姿勢をきっちりと整えた。
「さてっと・・・心ゆくまで楽しむぞ!!エルシーオーを!!」
最近世間で人気のあるVRMMO「ロストシヴィライレージョンオンライン」通称LCO
その特異な設定と奇抜なスキルで会員数を伸ばしている。
この世界は科学技術が発達しすぎて遺伝子操作された異常な生物を生み出し、極めつけはナノマシンの暴走による文明の崩壊を起こした。
そのようなことがあっても人々は生きており科学技術力は廃れたもののナノマシンの恩恵を受けた新たな技術「魔法」の登場。
魔法は人々を豊かにして新たに文明を復興し始めていた・・・
と言う世界の中を生活していくのがこのLCOの目的だ。
ふつうのMMOのように敵を倒すというのだけが目的のゲームではなく自分で店を開くのも、畑を耕し農家として過ごすのも何をするにしても自由度の高いVRMMOなのだ。
他の魅力としてスキル選択の豊富さとスキルの所持数による必要経験値の増加がある。
スキルは武器・魔法・技術の分野があり初期段階ではこの分野より3つ選択してゲームを開始することになる。
他にスキルを取得してもいいが3つ以上を選択すると1つにつき10%の必要経験値の増加がある。
これもこのゲームを人気にさせている理由である。
スキルが豊富だとLVが上がりにくくLVが高くてもスキルが少ないとなかなかに後半から厳しくなるからだ。
実際のところは普通は5~8くらいで抑えているプレイヤーがほとんどだ、何しろ正式サービスが始まってから3ヶ月しかたっていないからまだそこまでスキルを必要としないのだ。
「冒険者ギルド・リヒテンス支部へようこそ!!どのようなごようですか?」
きちっとした青いスーツに身を包みメガネをかけた女性に先ほどの青年が声をかけられている。
ギルド内はガヤガヤとしていて色々な格好をした冒険者で溢れている。大きな掲示板の前には貼られている紙にたくさんの人が目を向けてたり。
並べられているたくさんのテーブルでは作戦会議などが3人位の規模から10人以上の大所帯の規模でされてたり。
中には食事や酒を手にしながらもいるのはここがそう言う場所だということを物語っている。
「すいません、冒険者登録したいのですが?」
「それではこちらへの記入をお願いします。」
渡された紙に青年が羽ペンを走らせていく少し止まったりしたもののカリカリと心地いい音を立ててキレイに書き上げられたようだ。
その紙を受け取ったギルド職員のお姉さんが自然な感じにニッコリと笑った。その後眼を通し確認作業に入っていく。
「えっーと・・・お名前は[ナナシ]様で間違えないですね?」
「はい、間違いないです。」
ナナシと呼ばれた青年は軽く声を上げ答えた。
「えっーと・・・職業は・・・えっーーーーーーーーー!!」
ギルド中に響く声を上げるお姉さん、一気に注目を集めるナナシ。
「何事か?」と大半の人が見ている中でお姉さんが言った一言にギルドは騒然とすることになる。
「職業は”無職”で間違えないですか?」
こうしてLCO初の「無職」の冒険者が誕生したのだった。