しまったぁ!
「恭子…何で何も言い返さないの?」
葵が不思議そうに尋ねた。
言い返せる訳なんてないじゃない!
あれから可憐は変わった。大好きなイラストをきっぱり止めてしまって、大好きな彼氏の為におしゃれをして、とてもとても可愛くなった。
いつの間にかクラスのムードメーカー、付き合う仲間も変わった。
まるで、魔法少女みたいに。
可憐はいつの間にか恭子の悪口を聞こえるように言うようになる。
恭子は、悔しくて哀しくて涙をこらえた。
そして、今もこらえている。
葵はくしゃくしゃになった恭子の制服のスカートを黙って見下ろした。
そして、ぽんと恭子の肩に手をおいた。
そして、可憐に向かって行った。可憐は、とても迷惑そうに葵を見上げた。葵は、にこりと笑うと可憐の胸に手を当てた。
ちなみに可憐の胸はけっこう、膨らんでいる。
なので、たちまち可憐の悲鳴が上がった。
「な、何するのよ!」
「悪いと思ってるなら、謝らなければ後悔する。
だって、二人は友達だっんでしょ?今もイラスト大切なんでしょ?恭子も悪いとちゃんと思ってる」
な、なんであんたが私達の事情を知ってるのよ?
魔法使いかあんたは!
可憐の目がみるみる厳しくなる。恭子は、はらはらした。
やってしまった…。馬鹿!葵の馬鹿!
教室はひたすらに、シーンと静まりかえった。
「悪いなんて思ってないもん。そんなガキ相手にしてないわ!」
可憐は、顔を歪ませて心底嫌そうに吐き捨てた。
すると、周りも同調してくる。
恭子の胸がズキンと痛くなった。でも、葵は引かない。一歩たりとも。
「赤い手帳…今でも持ってるよね?恭子からのプレゼント」
それは、恭子が母にねだって、初めて人にしたプレゼントだった。
持ってるの?可憐。今も?
可憐と目が合う、しかしすぐに瞳をそらされた。やはり、元には戻らない。
「持ってないわ!そんなもの!あんたなんなの?変なやつね。気持ち悪いわ!」
ねえと、可憐が仲間を振り返ると仲間達は、唖然とした顔をしていた。
だって、葵の手には赤い手帳が握られていたから。
「な、なんで!」
可憐が問い詰めようとすると、空から
ぶっぶっぶー!葵ペナルティ1!
という音が流れた。
な、なに?
そう思った瞬間、地面がというか教室とクラスメートが消えた。
「しまったぁ!」
葵が悔しそうにしゃがみこんでいた。
真っ暗な空間で恭子は、自分が何かに巻き込まれている事にようやく気が付いた。