少女は眠れない
その日、恭子は眠れなかった。
何度も何度も寝返りをうった。隣のベッドでは、葵とやらが、すやすや眠っている。
きぃぃ!
恭子は、葵の毛布をぶっ飛ばして、葵を起こした。
「なんだ?妹よ?まだ、朝は早いよ?」
そう言うと葵は、また眠りに入ろうとする。
きぃぃ!
なんで、なんで私がこんな目に?
恭子は何度も思った。
何だか悔しくて泣けてきた。
思えば、恭子の人生は思いどうりにいかない事ばかりだったから。
外見も、環境も、そして内面も…。
「恭子、泣いてるの?」
気がつくと葵の顔がすぐそばにあった。
間近でみると、人間離れした端正な顔だ。
きっと、こんな人間に悩みなんてないのだろう。
恭子は思った。
「だって、私まだ彼氏すらいないのに、隣には見知らぬ男が寝てるし!
あんた悩みなんてないでしょ?幸せそうに寝ちゃってさ」
しかし、葵はみなまで聞かないうちに、ぐうぐうと寝息をたて始めた。
きぃぃ!
恭子は葵の腹を思いっきり踏んづけた。
時計は、もう深夜2時をさしている。
寝よ!寝よ!やってらんない。
恭子は、お気に入りのピンクの毛布をがばりとかぶった。
耳までかぶったので、葵がぽつりともらした一言を聞きのがした事にも気がつかないで。
恭子…悩みのない者なんていないんだよ…。






