俺、魔法少年やめます!
それは、そこにいた者にとって寝耳に水の話だった。
「やめるって…葵君…バカな冗談だよね?」
しかし、葵と呼ばれた少年は瞳をらんらんと光らせて、その場所で一番幼い少年を指差して、宣言した。
「父さん!」
そう、この小さな少年は葵の父親。
そしてここは…人間の国ではない。
「俺、魔法少年やめる!」
「ほう…」
かちゃりと音をたてて飲んでいた紅茶をテーブルに葵の父親は置いた。
「母と同じ道を選ぶというのか?」
葵と父親の間には、冷たい空気が流れた。
葵は瞳を閉じると、父親をまっすぐに見つめた。
「だね。さよなら、父さん」
第一話ー桜井 恭子
桜井 恭子、十四歳。自分でも、うんざりする黒のセミロングの髪。
友達の万里子ちゃんなんか、ハーフでめちゃくちゃ可愛くて、とどめは色素の薄い茶色の髪。
恭子は、何度も髪を染めたいと母に懇願したが、聞き届けてはもらえなかった。
じゃあせめて、洋服だけでもと大嫌いな父に
頼みこんだが全滅…。
けして多くもないお小遣いからは、とても出せない。
世の中本当につまんない。
だというのに、両親は恭子の欲しくないものばかり用意してくる。
今回はちょっと変わってたけど。
「だからぁ、今日から恭子のお兄さんになる
葵 シン君よ。仲良くね」
恭子の手はわなわなと震えた。
もし、恭子がアニメとかでみる魔法少女なら、きっと恭子の狭い一軒家が地震にみまわれた事だろう。
「な、どういう事よ!私は聞いてない」
ちなみに恭子、かなり身長が低い。なので、皆から見下ろされる事になる。
それも恭子の心をヒートアップさせた。
冗談じゃないわ!
冗談じゃないわ!
冗談じゃないわ!
「まあまあ、お父さんお母さん落ち着いて。
恭子も…ね?」
「はあ?」
今度、兄になるという葵という少年は、かなり空気が読めないらしい。
に、恭子はつっかかる。
次の瞬間、恭子の怒りは沸点に達した。
葵の髪は、あり得ないほど美しい
緑色の髪だったのだ。
私には、駄目っていったくせに!
いつも私ばかり!
しかし、母はとどめの一言をはなった。
ドカーンと!
「あっ、部屋がないから恭子と葵君は同じ部屋ね」
ありえないっつーの!