幼女が神の末えい
俺は、神を呼びだそうと考えた。
昔から魔術に興味があって、さまざまな本を読み漁った。
さらに、古書にも手を広げ、外国の本も読んだ。
そして、俺は、神を呼びだすすべを身につけた。
神か悪魔か、それは主観的な問題だ。
悪魔だって、俺らから見れば、十分に神と言えよう。
だから、俺は神を呼び出すということにしている。
魔法陣に必要なものを供える。
そして、呪文を唱える。
3回唱えて、あとは神の気分次第だ。
すぐにきてくれる時もあるらしいが、数時間かかる時もあるらしい。
1日たってこないようだったら、1週間待ってから、もう一度して欲しいとも書いてあった。
通販じゃないんだからと思いながらも、俺は数秒待った。
神はすぐに来てくれた。
「ということで、召喚したのが、この幼女だ」
俺は、信頼できる一人である勇者へ相談をしていた。
勇者は、向こうの世界から魔王の召喚に成功している。
その魔王も、小さな女の子だ。
「なあ、どう思う」
勇者は、せんべいを食べている魔王に聞いた。
「ちょっと訳がわからないわね。神と呼ばれる存在はいることにはいるけど、子供がいるなんて話は聞いたことがないわ」
「じゃあ、その子供っていうこともありうるのか」
俺は、持ってきた移動式ベビーベッドで眠ってしまったその子を見た。
「そういた名前は何ていうんだ」
「実はまだ聞いてないんだ。眠ったりぐずったりで、なかなか聞けなくてな」
「なあ、お前だったら聞けるんじゃないか」
せんべいの袋を捨てて、マシュマロを食べ始めようとしている魔王に聞いた。
「うーん、共通語っていうのはあるけど、この子が知らないということもあるからね。起きてからじゃないと」
「じゃあ待っておこう。あ、台所借りるよ」
「ミルクなら好きに使え」
勇者に、一応言ってから、起きたらすぐに飲めるように、準備をしておいた。
彼女が起きると同時に、俺は哺乳瓶を渡す。
その横で、魔王が何かを言っていた。
「共通語を話しているんだろうな」
少し離れたところでテレビをみている勇者が言った。
「だろうな。俺にはさっぱりだ」
「大丈夫さ、わからんのは一人じゃない」
「二人が分からなくても、私には聞こえてるんだからね」
魔王が少し怒りながら、俺たちにいった。
「んで、分かったか」
「ええ、この子はミドリ。神の一人よ」
そもそも神というのは、ある特定の直系血族に与えられた称号である。
初代統一王であり、広大な面積を有していた一族である。
彼らに対しては、現在の民が尊敬の念を込めて、神と呼んだのがその呼称の始まりとされている。
世襲制である魔王の最初の人を始祖とするその一族の末えいが、今目の前でミルクを一気飲みしているこの子ということらしい。
「本当か」
「確かめる方法といえば、実際に向こうに行くぐらいしか思いつかないわね」
「魔界へか。前行った時には、次期魔王を争っていた最中だっただと」
「まあいいよ。この子がこっちにきたっていうことは、俺と波長があったっていうことだし。しっかり育てるよ」
「それがいいでしょうね」
残念そうに魔王が言った。
「向こうから連絡があれば、伝えるよ」
「そりゃよかった」
俺は勇者に笑いかけながら言って、彼女をベビーカーに乗せてから、ベッドを折りたたんで、背負ってから、家を出た。