読み切り 地の底から
『今回の任務は旧二ホンのトウキョウ周辺で出現した熱源反応の調査です。もしかしたら、異星人が何かしているのかもしれません。原因がわかり次第調査し、必要なら破壊してください。以上です』
オペレーターとの通信が切れ、OJ‐21とOJ‐78の通信回線が開かれる。
「たく、調査任務なんて退屈すぎるぜ」
「文句を言うな。すべては地球のためだろう」
「さすがは軍人様だ。だが、俺にゃものたりねぇ。もっとばかすか撃って異星人どもを蹴散らしたいぜ」
「出るぞ」
基地のハッチが開き、一歩進むごとに振動が体に伝わる。
コックピット内の足元のペダルを踏み、背中にある噴出機から光が漏れた。
「行くぞ」
「あいよ」
二つの機体は飛び上がり、旧二ホンに向けて空を駆けていく。
暗闇の中、一つの機体がライトに照らされた。
キャットウォークの上で機体の目の前に立つ二人の男性がいた。一人は汚れた白衣を着用している白髪の老人。もう一人はパイロットスーツを着た青年だ。
「直に奴らがくる。レイ、私の望みを君に託したい」
「俺にできることなら」
「すまないな」
格納庫の明かりが全てつき、明るい声が全体に響く。
「父さん、レイ、何してるの?」
「お呼びだ。どうやら力を与えすぎたかもしれんな。おちおち隠し話もできない」
博士はレイに冗談交じりにいうが、彼は表情一つ変えない。博士はレイの肩に手を置き、愛おしそうに微笑んだ。
「どうした?アルマリア」
「熱源がこっちに向かってる。この間の起動実験のせいかも」
「思ったより早かったな。レイ、乗ってくれるか?」
「はい」
「ありがとう」
レイは機体の胸に飛び移る。コックピットに入ろうとすると、アルマリアが言う。
「レイ、またね」
「ああ、また」
コックピットに入り座席に座ると、各所からチューブが出てきてパイロットスーツの金具に固定されていく。首、肩、腿に針が刺さり、皮膚に痛みが走る。
「くっ」
そして、ルカウムが体内に流し込まれた。全身に力が入り、体が震える。
「くぅっ、う。はあはあ」
痛みが消えていき、体の違和感に慣れてきた。
通信が入り、博士の声がする。
「バイタルも異常なし。上手くいった。これで君はーー」
「父さん!熱源が増えた!もう近くに!」
「この早さは、オージェか!」
次の瞬間、天井が崩れた。
『敵性反応あり!オージェです!』
オペレーターがいったあと、モニターが空に浮かぶオージェの姿を捉える。
「おいおい、調査どころじゃないぞ。しかも新型だ」
高揚した声がOJ-21のコックピットのスピーカーから聞こえてきた。
「撃破するぞ」
「りょーかい!」
OJ-21とOJ-78は二手に分かれて、挟み撃ちにする。が、オージェは左手からビームを撃ち、OJ-78を撃ち落とす。そして、右手からはビームソードを出し、接近戦を仕掛けるOJ-21の実体剣を焼き切る。
「性能が違い過ぎる。おい、バーガー!大丈夫か⁈」
「くそっ、右肩をやられた!」
オージェは墜落したOJ-78に視線を向ける。
『OJ-78!危険です!すぐに体勢を立て直して下さい!』
降下するオージェをOJ-21は銃撃するが、装甲が硬く弾かれる。
OJ-78が上を向いた頃には、すでに目の前に迫っていた。バーガーは操縦桿に手を伸ばそうとするが、間に合わない。オージェの鋭利な足先がOJ-78のコックピット目掛けて蹴りを入れる。貫きはせずとも、コックピット部分は歪に潰れた。
「バーガー!応答しろ!バーガー!」
応答はない。
「これは……まずい」
『撤退を!ここでオリジナルを二つも失うわけにはいきません!』
「あれから逃げ切れるとは思えん!」
『ですが、倒すこともーー』
レーダーにまた一つ表示は増えた。
『新しい熱源⁈ここから⁈』
荒れ果てた大地が揺れ、オージェの足元から勢いよく機体が飛び出す。
『この機体は⁈』
オペレーターの驚いた声がoj-21のコックピットに響いた。
オージェは逃れるため飛び立つ。が、泥に汚れた白い機体はジャンプしてオージェの足を掴む。鋭いアイカメラがオージェを睨んだ。離れようとするオージェとは逆に足を引っ張る白い機体。ついには足はもげた。機体は地面に落ち、受け身を取ってすぐ起き上がる。オージェは反動で飛んでいくが、翻して白い機体へ飛んでいく。手にはOJ-21の剣を焼き切ったビームソードを構えている。
勢いよく突っ込み、二つの機体が見えなくなるほどの土煙が起こった。
オペレーターは作戦室のモニターから、OJ-21はコックピットのモニターから、二つの機体の結末を見た。
白い機体はオージェから腕を千切っており、その手から伸びたビームソードが頭部を貫いていた。
腕に残されたエネルギーが切れ、ビームソードは音もなく消えていった。
OJ-21のパイロットであるガートンは白い機体をモニター越しにまじまじと見る。
「まさか、100機目か……」
白い機体は腕を捨て、自分が出てきた穴へ戻る。
OJ-21は地面に着地し、外部スピーカーに切り替えて機体へ声を掛ける。
「待て」
だが、機体は止まらない。
『OJ-21、その機体はオリジナルと思われます。回収を』
オペレーターのアンナの声を無視するガートン。
「おい、聞こえないのか」
やはり機体は止まらない。
『上層部からの命令です。回収してください』
「アンナ、さっきのオージェを倒せなかった俺たちがこいつに勝てると思うか?」
『ですが、上層部の命令は絶対です』
「わかってる」
OJ-21は白い機体についていき、同じく穴に降りる。
中は格納庫だが瓦礫だらけだ。
「ここがお前の住処か?」
白い機体は何も答えない。
機体はしゃがみ、天井がくずれている部屋を見るが、人の姿はない。
今度は壁に向かって殴る。壁には穴が開き、何かを探ったあと手を引く。
その手には人が入るくらいのカプセルがあった。
「彼女を保護してくれるなら一緒にいく」
白い機体の外部スピーカーから若い男の声が聞こえてきた。
「わかった。こちらで保護しよう。ついてきてくれ」
地下格納庫から二つの機体が出てくる。
「アンナ、今からオリジナルを、OJ-100を連れて帰投する」
『了解』




