1話 悪役転生
「平民風情が調子に乗るなよ!」
そんな暴言を主人公に吐き捨てるテンプレのような悪役キャラっているじゃん?
そういう悪役って、ファンタジーでは貴族だったり、現実では大企業の御曹司だったりと家柄が良いことが多かったりするよな。
そんで悪役の多くは主人公を目の敵にして、取り巻きと一緒にいじめたり一々邪魔ばっかりしてくるんだ。
俺が大好きなラノベの「魔術学園の無能力者」にも同じような悪役がいる。
名前はリオン・エルファルド。
こいつがまた酷い奴なんだ。
傲慢な貴族で平民を嫌っており、いつも取り巻きを側に置いてふんぞり返っているような、わっかりやすい悪役貴族でね。
主人公のカイトに対しては、平民であることと魔術が使えないことを馬鹿にして、さらに自分が好意を抱いている主人公の幼馴染のユイと仲が良いことに腹を立ててダル絡みをしてくるんだよ。
っていうかこいつさ、既に婚約者がいるのにユイにちょっかいかけるとかあり得なくない?
その上婚約者に「醜い顔だな。僕に近づくな」とか酷いこと言って婚約破棄までするしな。本当にどうしうようもない奴なんだよ。
こいつが出てくる度に不快な思いをする読者は多いだろう。俺だって凄く嫌いだしな。
ただ、読者からしたらうざったいリオンだけど、ほんの少しだけ可哀想なところもある。何故なら物語において悪役とは、勧善懲悪されるために存在しているからだ。
物語の序盤では、カイトに決闘を申し込んで負けてしまい大恥を掻いてしまったり。
物語の中盤では、悪の組織に組してカイトと戦い、醜い化物になって倒されてしまうんだ。
リオンが死んだ時はスカっとしたし、ようやく邪魔な奴が消えてスッキリした。
多くの読者も「キターーー!!」「やっと死んだよ!」「ざまぁみろ!」とリオンの死を喜ぶ声が多かった。これまでそれだけの悪い事をしてきたんだから当然っちゃ当然だろう。
けど、読者からは嫌われ、いずれ死ぬ運命を持って作られたと考えたら、哀れというか、少しだけリオンに同情してしまうところもあるっちゃあるんだよな。
さて、ここからが本題だ。
どうして俺が主人公カイトではなく悪役貴族のリオンについて長々と説明をしたのか。
その答えは、俺がリオンに転生してしまったからである。
「どうしてだよぉぉおおおお!!」
鏡に映る金髪イケメンの自分の顔を見て、俺は項垂れながら絶叫した。
絶叫したくもなるさ。
ブラック企業で働いて働いて働いて過労で死んでしまった俺は、大好きな「魔術学園の無能力者」の世界に転生した。
めちゃくちゃ嬉しかったんだけど、転生したキャラがリオンだったと気付いたら絶叫したくもなる。
「リオンに転生とかないでしょ! そこは普通に考えて主人公のカイトでしょ! いや、カイトじゃないにしてもせめて他のキャラにしてくれよ! 何でよりにもよってリオンなんだよ!?」
転生先がリオンとか一番あり得ない。これならまだそこら辺のモブの方がマシだ。
だってさ、リオンって後一年ぐらいで死んじまうんだよ?
「ブラック企業で働いて過労死して、折角大好きな魔術学園の無能力の世界に転生したっていうのに、リオンに転生したんじゃすぐに死んじゃうじゃんかよぉ……」
異世界転生だと喜んだ数分前の感動を返して欲しい。転生する前にテンプレな神様とかには会わなかったけど、もしいるなら文句の一つでも言ってやる。
どうして転生先がリオンなんだと。
これじゃ俺、どの道死ぬじゃんと。
「くそ! こうなったら全力で死亡フラグを回避するしかない!」
運が良いことに、俺は物語を知っている。
なら、リオンに訪れる死亡フラグだって回避することができるはずだ。
ブラック企業から解放されて大好きな世界に転生したってのにみすみす死んでたまるか。
「絶対に死亡フラグを回避して生き残ってやるぞ!」
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