第七十六話 少しずつ
いつもご愛読ありがとうございます。
新天地・ビギナ大陸に降り立ったタク。そこで偶然にもリサと再会した彼は、彼女の言葉から重要なヒントを得ます。
着実にリナの正体に近づくタク、そしてそれに気づかぬまま帰路につく花。二人の距離が、わずかに縮まります。
「では、また何かあればいつでも聞いてくださいね!」
ビギナ大陸まで案内してもらったタクは、解散すると、港周辺を散策する。
(できるだけ、目立たねえように動かねえとな。とりあえず、教えてもらった宿屋に行ってみるか。)
宿屋にて。
「ここの部屋を借りたいんだが、できるか?」
「お客さん、冒険者ランクを見せてください。
………ふむ。Fですね。
残念ですが、冒険者ランクがD以下の方は……」
「ああ、説明は聞いている。では、課金システムを利用する。
いくらか教えてくれ。」
タクは値段を見て驚愕する。
(こ、これ、一般のビジホの宿泊とほぼ同金額じゃねえか!
ルーム貸切は……なんだこれは。
ちなみに、冒険者ランクD以上の宿泊は……それでも、割と高めだなあ。
そうか、だから、受付嬢は、"はじめは夜営してセーブポイントを設置する"って言ってたわけか。
ち!とんだぼったくりゲームだぜ!)
「お客さん、どうなさいますか?」
「辞めておく。明日確実に来れるかわからんからな。
質問なんだが、もし、セーブせずにログアウトをしたら、どうなるんだ?」
「その場合は、元の場所に戻ることになり、しかも、その間に手に入れたアイテムや経験値も、全て前のセーブの状態まで戻り、無かったことになります。」
(ち!やっぱりそうか……地道に、少しずつやってくしかねぇってことか。)
「ありがとう、今回は失礼する。では。」
タクは、宿屋を後にして、港に戻る。
(はじまりの都は、ターミナル的な場所がセーブポイントとして機能していたが、ここからは本格的なサバイバルってことか、考えてやがるぜ。
課金でどうこうできるってわけでもねえってことか。
まあ、大金持ちなら可能だが、ゲームにそこまで注ぎ込むのも、なんかシャクだ。)
そんなことを考えていると、受付嬢を遠くに発見する。
腕を後ろに組み、スキップしている。
(なんだか機嫌がよさそうだな。他に宿屋がないか聞いてみるか。)
「あの、リサさん?ちょっとお聞きしたいのですが?」
「あ!TKさん!まだこちらにいたのですね!
どうされました?」
タクは事情を説明する。
「ご、ごめんなさい!そんなに金額がかかるなんて知りませんでした!それはわたしのミスです!ちょっとお待ちください!」
「あ、いえ、責めているわけでは、あ、あのー……」
リサは一目散に駆け出し、ターミナルへ戻っていく。
タクも後を追った。
(な、なんか、異常に走るの早くねえか?
も、もしかすると、ステータスの差か?)
実は、タクの予想は当たっており、リサは花たちと過ごして、アバターの使いこなしが上手くなっていた。
そして、狩にも同行しているため、意外とレベルも上がっていたのだ。
花やランスが異常なだけで、リサは一般的にみると、新規プレイヤーから見てステータスは高い。
ターミナルに戻ると、すでにリサが情報を拾っていた。
「TKさん!先ほどと反対方向に、一般向けの宿屋があります!
わたしが教えた宿屋は、クランやギルド向けだったみたいです!申し訳ありませんでした!」
「あ、いえ、そんな丁寧に、あなたは悪くないですよ。」
「いえ!わたし、もう辞めちゃったけど、前の職場にいた同い年の男の子で、仕事にすごくストイックな子がいたんです!
話すと怖いけど、仕事に関しては丁寧で、細かく、熱心なところが、すごいなって。
そこは、リスペクトして学んだんです!」
(…………それって……?!)
「でも、これで安心してログアウトできます!
わたし、明日からしばらくいないので!
TKさん、このゲーム、たくさん楽しんでくださいね!」
「しばらく、ですか?」
「そうですね、二週間先の土曜日までは、お休みです!もしわからないことがあれば、NPCの受付嬢に聞いてみてください!きっとお役に立てると思います!」
(二週間後の土曜日か……くく、良いことを聞いたぜ。ま、この子がリナとは限らねえがな。)
「あ!でも、プレイヤーとして入るから、仕事自体は、その週明けになりますね!
ごめんなさい!」
「そうだったんですね。リサさんは、どこまで進んだんですか?」
「わたしは全然ですー。まだ、カレッジ周辺ですね!もっと落ち着いたら、しっかり強くならないと、次へ進めないですぅ。」
(ククク……そうか、じゃあ目指すのは一旦、そのカレッジというところだな。良いことを聞いたぜ。ま、リナかは分からねえがな。俺にはどうも、この子がリナじゃねえかと、勘が働くんだ)
「カレッジ?ですか。」
リサは、スクリーンで地図を開く。
「これを見てください、ここが、スキルを獲得できるっていう、大学。スキルカレッジです!」
(う、うお!またちけえ!)
「あ、ありがとうございます。目指してみます。」
「うん!またプレイヤーとして会えたら、その時はよろしくねー!
では、失礼します!」
リサはスキップしながら去っていった。
(スキルカレッジか……良いことを聞いたぜ!
そして、二週間後の土曜日!そこで、リナを捕まえる!
本人かどうか、そこではっきりするはずだ!
よし、今日はひとまず宿屋でセーブだ。
明日はこの変装を一旦変更する。
もし、リナに仲間がいて、この俺の格好を共有されて、認知されたら動きにくくなるからな。
馴れ合うのも面倒だ。)
タクは、宿屋に向かいながら、薄ら笑いが止まらなかった。
本来、実物はかなりのイケメンで、仕事もできるが、リナが絡むと、IQは低下し、変人度も増してしまうのが欠点だ。
◆
花は、ひとまずカレッジまで戻ることにした。
港周辺の駅まで歩いて向かっていた。
(リサは先に帰っていったな。どうせなら、ここまで一緒にくればよかったかな。
あいつなりに気をつかって一人にしてくれたんだろう。
ん?なんだあいつは……歩きながら薄ら笑いしてるぞ?)
「ククククク……くははは……くくくく」
(…………気持ち悪いな。面倒だから、視野に入らんようにしよう。)
なんとも偶然のすれ違い。
花たちは、タクがすぐ近くまできていることに、気がついていなかった。
そして、また少しずつ、距離は近くなっていくのだった。
第七十六話をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに「二週間後の土曜日」という具体的なターゲットを見つけたタク。
一方で、何も知らずに日常へ戻ろうとする花。
二人の距離が近づくにつれ、ALOの世界も現実も、ますます目が離せない展開になってきました!
【応援のお願い】
物語が動き出しました!
続きが気になると思っていただけましたら、ぜひブックマーク登録や、下の**評価(★★★★★)**で応援をお願いいたします!皆様の応援が、執筆のモチベーションです!
また、現在コンテストにも挑戦中です。完結まで熱い物語を届けますので、引き続き応援よろしくお願いいたします。
【他作品のお知らせ】
宇宙の命運を懸けた、もう一つの戦いもぜひ!
『Ultimate Wars ー 才能なしの人生だった俺、宇宙の危機で人類の切り札になる ー』
Nコード:N6980LM




