第七十五話 小さな灯火
差し出されたリサの両手を、ハナはどう受け止めるのか。
素直になれない大人と、まっすぐな少女。
夜景が広がる階段で語られたのは、ハナの懐かしく、そして少し切ない過去の思い出でした。
二人は階段に並び、座ったまま、リサは花の方を向き両手を広げている。
とても心配そうな表情だ。
(こんな若い子に、俺は心配されてるなんてな……こいつには、いつも驚かされる。
まるで、俺に何が必要かを、見透かしてるみたいだ。
だが……ダメなんだ。
それはいけない。
俺も、もっと強くならないとなあ。)
花はリサに近づく。リサもそれを理解して花を包み込もうとした。
その瞬間。
ヒョイ!
「へ?!」
ガシ!
花は、リサを片手で引き寄せる。そして、もう片方の手は、頭をガシガシしている。
「ちょ、ちょっとぉ?!わぁ!なになにー?!」
「えぇーい!こんのぉ、可愛いやつめー!」
花は片手でリサを抑えたまま、ガシガシとリサの頭をぐしゃぐしゃにしながら撫でる。
パッ
花は手を離す。
リサの髪はぐしゃぐしゃになっていた。
「も、もう!せっかく抱きしめようと思ったのに!素直じゃないんだから!」
リサは髪を直しながら赤くなる。
「はっ!俺は鬼メンタルだから、大丈夫だ!」
「そっかぁ…やっぱり、花さんは強いなぁ……私の出る幕なし、だね。」
リサは少し寂しそうにする。
「ま、まあ、少し迷っちまったけどな……ありがとうな。」
リサはピクリと反応して、再び両手を広げ出す、今度はニヤニヤしている。
「んもう〜、早く素直になりなさい〜、ホレホレ〜」
「アホ」
二人は笑い合った。
「花さん、私にできることがあれば、何でも言ってね。」
リサは静かに花へ話しかけた。
「…………なんでも?」
花はリサを上から下までジロリと見る。
「で、できることであれば、ね!」
リサは赤くなりながらたじろぐ。
「ん〜?さっきは両手広げてたのに、なに照れてんだ?」
「う〜、花さんの意地悪〜」
「冗談だ冗談!カッカッカッ!
ありがとうな。リサ」
ゲーム内はすっかり日が暮れて、夜景が広がっていた。
「もう少しで、修学旅行なんじゃないのか?」
「ん?うん!そうだね!もう後一ヶ月かな。
来週から期末試験だから、気合い入れないとね!」
「しっかり結果出して、思いっきり楽しんでくれば良い。友達みんなとの旅行なんて、卒業したらそうそう行けるもんじゃない。
良い旅行になるといいな。」
「花さんも……修学旅行は行ったの?」
「もちろん行ったさ。」
「どこだったの?」
「沖縄。」
リサは驚き、花の方を向く。
「花さんも?!ど、どうだった!?楽しかった?」
「ん?ああ、めっちゃ楽しかった……みんなでバカやったなぁ……」
花は景色を見ながら静かに受け答えしていた。
リサは、修学旅行の時のことを、根掘り葉掘り花に聞いた。
「んー、そうだなあ……バナナボートで吹き飛ばされたな、海に弾かれて痛かったわぁ。
ホテルでは友達が、俺たちの部屋のトイレを詰まらせやがるし。
自由時間増やすために、ハンバーガーをリュックに詰め込んで、ホテルに持ち帰ってこっそり食べたりしたなあ。
あと、別の部屋のやつが、部屋を抜け出して遊びにきてたんだが、こっちで寝やがってなあ、見回りがきた時に、ベットの隙間に蹴り落としてバレずにすんだぜ。」
「あははは!すごい!やりすぎだよー!」
どれも、真面目なリサには想像できない話で、大笑いしていた。
「ま、こんなもんだ、俺たちはまだ真面目なほうだったしな!」
「これで真面目なの?!うそだー!」
事実、花たちはまだマシなほうだった。
20年前といえば、まだまだやんちゃな子たちがたくさんいた時代だったのだ。
二人は時間が過ぎるのを忘れて、たわいもない話で笑い合った。
「あ!そろそろ戻らなきゃ!
しばらくみんなには会えないと思うけど、また試験が終わったら、会おうね!」
「おう!しっかり勉強頑張ってこい!」
花は、リサの頭をポンと撫でた。
「うん!頑張ってくるね!」
リサは満面の笑みで手を振り、去っていった。
(ふう。危なかった……危うく、本当に甘えてしまうところだった。
俺の気持ちを理解してくれる人なんて、いないと思ってたからな……リサとどうこうってわけじゃねえけど……案外、いるのかもしれねえな……今、人生諦めるのは、早いのかもしれねえ……もう少し、前向きに生きてみても、良いかもしれないな……まあ、これも、リサのおかげだな……ほんと、感謝しないとな。)
リサのおかげで、冷え切っていた胸の奥に、小さな火が灯ったような気がした。
夜景を眺めながら静かに階段を降りるその足取りは、来た時よりもずっと軽かった。
第七十五話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
リサの直球の優しさが、花の心に小さな灯火を灯した七十五話でした。
現実世界で期末試験に向かうリサ、そして少しだけ前を向き始めた花。二人の歩みがどうリンクしていくのか、ぜひ次話以降もご注目ください!
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