第六十九話 リサのこと
現実と仮想の狭間で、欲望と執着が渦を巻き始めます。
ある者は己の勢力拡大を、またある者は失った面影を追い求めて。そんな不穏な動きを余所に、ハナたちはさらなる高みを目指し、共に汗を流します。
「ヒロシさん!タクのやつ、今ALOやってるらしいです!」
「ほう……まあ、あいつが宣伝したゲームだからなぁ、"本人がやったことない"は、世間的にはまずいだろうよ。」
「狙いは、やはりあの子でしょうかね?」
「ククク、まあ、十中八九そうだろうな!
ガキの頃から意識してたからなあ。
二人とも、社長が拾ってきたが、タクは見事にものになった。だが、あの子は惜しかったなあ、本気でこっちでやりゃあ、来年にはデビューもできただろうに……社長の指示で、下積みに時間をかけすぎたなあ。」
「タクはどうするんですかねえ、ゲームの中まで追いかけていって」
「ククク……離れた子を追いかけるなんて、現実世界でそれをやったら、ただのストーカーだからな。なかなか考えやがったぜ。
だが、そう簡単にいくかな?
あんな警戒心の強い子が、なんの策も無しにウロウロしてるとは思えんがねぇ。
まあ……告白でもして、自分のものにするんじゃねえか?」
「タクから見ても、あの子は特別ってことですか?」
「まあ、そういうことだ。俺から見ても、かなりの上玉だぜ。」
「なら、いずれはヒロシさんも?」
「クックック……まずはタクのお手並み拝見といこうじゃないか。俺たちはまず、勢力を拡大するんだ。
なら、タクがうまくいこうと、そうじゃなくても、いずれは俺のものだ!」
「相手は未成年、まずくないですかね?」
「バカか。リアルで攻めていくわけねえだろ。
まずは向こうで支配する。
そして、時期が来たら……だ。」
ゴクリ
ホストの舎弟は息を呑む。この男の恐ろしさは、脳筋ではなく、知的に絡めとっていく。
社長にも一目置かれているし、敵に回すと厄介だ。
◆
受付嬢はカウンターを離れてエントランスをウロウロしていた。
(うお?!まただ!似ている……しかし、ここでは無理だ。いや、そもそも本人かわからんからな。そんな恥ずかしい真似はできん。
今日は質問すると決めただろう!)
タクは、意外と一途だった。
基本的には女性の扱いは一流だが、本命に対してはこの通りIQが下がる傾向にある。
視野が狭いのだ。
「す、すまない、ちょっといいか?
なぜか、モンスターに攻撃が当たらない。
原因をおしえてくれ。」
「はーい!あ、あなたはこないだの!
ちょっとステータス画面を見せてくださいね!」
受付嬢はズイッとタクに並ぶ。
(う、うお!ち、近い!か、体がすぐ横に!)
「原因がわかりました!
TKさん!この武器は、本来、力のステータス値がもう少し上がらないと、まともに扱えないんです!」
「な、なにぃ!なら、装備を揃えれば良いと言うわけじゃないのか?」
「その通りです!ほら、ここをこうすると…ほら、必要な数値が出ます!」
受付嬢はさらにわかりやすく説明するために、タクに近づく。
タクのアバターは高身長にしてあるため、立って説明する際は、受付嬢は少し背伸びをしたり近づくなど、頑張らないといけない。
(ぬおお!近い!てか、う、腕に、当たっている!)
「わ、わかった。ありがとう。」
「また、何かあれば言ってくださいねー!」
(く、くそう!もっと自然に仲良くなり、それとなく情報を聞き出すんだ!
プレイヤーとして潜っているのか、それをまず聞き出さねば!
こんな仕事中に正体を明かしたら、もう二度と捕まえられんかもしれん!
フィールド内で会う機会を探らねばな。)
ふと、受付嬢が入れ替わっていることに気がつく。
(やっぱり…あれはNPCじゃなかったのか?
ククク、一歩前進だ。)
タクは一旦武器屋で自分のステータスに合う武器を選ぶことにする。
「お客さん、ステータス見せてみ?……ん。大丈夫、ここで振ってみな。」
「ん?何かまずいのか?」
「なあに、攻撃力が高すぎると、一振りの風圧がやばい時があるからな、念のためだ!」
「…………そんなやつ、いるのか?」
「ああ、いるぞ!つい、数ヶ月前にここにきた!ありゃバケモンだ!その辺で遭遇しないように、せいぜい気を付けることだな!」
(そんなバケモンいるのかよ、ゲーマーってやつか?)
「そうそう、この前きた受付嬢とここにきて説明受けてたなあ、気になるなら聞いてみな!
やべえやつのことは知っておいた方がいい!」
「わ、わかった。感謝する。」
(ま、まさか、仲間?………じゃねえことを祈る。)
タクはそのあとも、地道に森で訓練するのだった。
◆
「ぶえっくし‼︎」
「え?ゲーム内でくしゃみ??花!リアルの方、ヘソ出して横になってるんじゃない??」
ガキン!ドガ!ガキン‼︎
「いんや、環境はバッチリだ。自分しか労わってくれるやついねえからな。そこはしっかり管理してる!
誰か噂してるんだろうよ!」
ドガガガ!ドン!
「うわ!」
ドゴーン!
「よし!また俺の勝ち!この連撃を、どうするかが課題だな!でも、ここ数日でだいぶ見切ってきたな!」
「くっそー!まだまだー!」
「こい!……ぶえっくし!」
(誰だ?まじで……まあ、いいか、考えるの、めんどくせぇ。)
第六十九話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
今回はタクの視点と、暗躍するホスト・ヒロシの不気味な計画が垣間見えました。リサ(リナ)への執着が、今後どのようなトラブルを引き起こすのか……タクの「一歩前進」が吉と出るか凶と出るか、気になるところです。そして、鍛冶屋が語った「バケモン」の存在。伝説が少しずつ顔を覗かせる展開にワクワクしますね!
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