第六十一話 スキルの大切さ
実力とスキルの差を痛感した、かつての記憶。
花が胸に抱く「救いたい」という願いは、現実の仕事もゲームの世界も変わりません。
それぞれが次なる戦いを見据え、自らの能力を高めるために動き出します。
決戦への準備が進む中、若きランスの意外な一面が垣間見える一幕も。
「花さんは、なぜこの病院選んだんすか?
地元にもたくさんあったんじゃないすか?」
俺は、離島訪問で利用者の死を経験してから、単身県外へ修行に出た。
先輩のコピーじゃあ、限界がある。帰りの船で号泣し、もう逃げたらダメだと思った。
学生時代、落ちこぼれだった俺は、自分の身の丈に合うようにしないと、いつか事故を起こすんじゃないか……そんなネガティブな考えで、先輩の言うことを、ただ忠実にこなしていた。
「ああ、ちょっと訪問で色々あって。限界を感じたから、一度勉強しなおそうと思ったんだ。型通りのアプローチじゃ、人の人生は救えないから。」
「そうだったんすねー。僕もここ入って、やっぱりスキルがある先輩と、そうじゃない先輩をみると、天と地ほども差があると思ったんすよ。
けど、花さんみたいな意欲のある先輩が同期で良かったっす。この研修も、わざわざ県外に出てまで一人で行く勇気なかったっすわ!」
「先輩はやめてくれよ、同期なんだから……それに俺は、そんな実力者じゃない。だから、これからも対等によろしくな、丘咲」
ログインする時、花は昔を思い出していた。
(スキル……あると無しではまるで違う。ゲームも同じ……か。そのためにわざわざ県外まで行ったのにな、えらいのに出逢って、人生詰んだよ全く……)
◆
ザシュ‼︎
「よ、よし!ペイントしてるモンスターをやっつけたよ!」
「しゃあ!よくやった!」
「うん!ナイスです!」
三人は一旦カレッジへ戻り、一旦休憩とする。その間に、スキル獲得の手続きを済ませた。
「お、ここか。……ポイントルーム……ここか。
今更だが、このゲーム、単純な名前が多いな。」
「どんな年齢の人が来るかわからないからだと思うよ?」
「そうね、バイトやる時の概要にも、子供からお年寄りまでログインする可能性があるから、そのつもりで対応するようにって言ってた。
だから、よりシンプルにしてあるのかな?」
ポイントルーム内は個室になっている。
例えるなら電話ボックスの中にATMがあるような雰囲気だ。
(ぷっ。まるで、電話ボックスだな。まあ、あの二人は知らないだろうけどな。ランスも多分若いだろうし。乾杯の音頭も知らないくらいだから、多分若え。)
『お疲れ様でした。ここに、手をかざしてください。』
自動音声案内に従って操作する。
『スキル付与が完了しました。』
花も念のため、感知スキルを獲得していた。
「どうせ一緒にするなら、俺も取っといて損はねえよな。」
リサと花が個室から出てくる。
「あれ?花も何かスキル取ってたの?まあ、不思議ではないけど、かなりタイトだね。」
「ま、まあな、色々見ておきたかったし、入ってみただけさ。」
ひとまず、リサの感知スキルは無事に獲得できた。
「連休も終わるから、またログインするときや、何かやる時は、メッセージで誘ってください。僕は、タクに備えて、自分のスキル獲得と、自己研鑽に励むよ。」
「自己研鑽、よく知ってるなそんな言葉。
偉いぞランス。お前みたいなやつで溢れたら、この国も安心だぜ。」
「な、なにおじいちゃんみたいなこと言ってるんだ。花はどうするの?」
「ん?そうだなあ……まあ、鍛冶スキルはぼちぼち自分のペースでとって、早くアイテム作らないといけないからなあ。」
「も、森で狩りまくる時って、だいたい、いつ頃なの?」
「………んー……だいたい夜だなあ。21時くらいってとこかな。」
「そ、そうか……わかった……も、もし、日中でログインすることがあったら……」
ランスは少し言いづらそうにしている。
そこを、花は見逃さなかった。
「わーってる!日中、もし、憂さ晴らしモードの時は、ランスに声を掛ける!
手合わせだろ?」
「う、うん!そう!手合わせして欲しい!
ありがとう、花!」
(まあ、ガキは普通夜はゲーム止められるわなあ、まあ、今時の子は知らんけど。)
「わたしも、明日からはバイトと勉強三昧になっちゃうから、もし何かあったら二人にメッセージ送るね!」
「うん。とくに、マネージャーさんからの連絡と、ALOからの報告があったら、すぐに教えてください。」
「みんな、ありがとうね。」
リサは二人の顔を見つめて頭を下げる。
ランスは軽く頷く。
「ま、バイトと勉強に専念だな。こっから本格的に受験モードだな。」
「うん、とりあえず、夏の修学旅行までが一区切りだから、それまではバイトと勉強頑張ってみる!」
「しゅ、修学旅行ですか!? ど、どこに行くんですか?!」
ランスは目を輝かせている。二人ともこんなランスは見たことがなく少し驚いた。
「お、おい、すげえ食いつきだなあ、ランス!
ここじゃなんだ、どうせもう上がるだけだろ?
連休最後にあっちで軽く話さねえか?」
連休中、色々なことがありながらも、スキル獲得や、作戦会議を無事に終えた。
まだまだ謎の多いゲームでできることはそう多くはない。
CIAや探偵のようなプロではないため、三人は素人ながらも協力し合うのだった。
第六十一話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「スキル」の有無が分ける明暗。
花の過去の回想が、ALOでの成長と重なり合います。
リサの感知スキルも無事に獲得でき、迎撃の準備は着々と整いつつありますが……ランスの「修学旅行」への過剰な反応も気になるところです。
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