第六十話 別行動
それぞれが抱える現実の事情。
守るべきもののために、リサ(リナ)はある大きな決断を口にします。
それを受け止めた花とランスが導き出した、次なる一手とは。
物語が大きく動き出す、緊迫の作戦会議が幕を開けます。
作戦会議の前に、リサから話があった。
それは、学費に関することだった。
現実を突きつけられ、リサは親の支援がわずかであることを吐露する。
そのため、できる限りバイトの量を増やしていくとのこと。
「なるほど、なら、それを含めて考えなきゃいけないね。
リサさんは、主にはじまりの都の第1エリアだよね?
いくら素人はこないとはいえ、タクがいきなり来る確率はゼロじゃない。
鉢合わせるかもしれないね。しかも、アバターがまだわからないから、回避しようがない。」
リサは少しドヤ顔になり、それについて答える。
「そこは、もう運営に連絡して解決したの。
新規ユーザーが第1エリアに転送される際に、もしわたしがそこにいたら連絡が来ることになってる。
仕事内容としては役割をこなせないけど、運営も理解してくれてるみたいなの。
そして、新規登録する際に、必ず本人がこの世界に入るから、顔認証でタクだとわかる。
事件性があらかじめありそうな場合には、スタッフには守秘義務を守ることを前提に伝えてくれるみたいなの。」
世界規模のゲームということもあり、運営は事件に繋がりそうなものに関して、かなり慎重な対応をとっている。そして、様々な状況をモニタリングして、ゲームの改善を図っている。
とくに、今回はスタッフが絡んでいることもあり、協力的な様子だ。
「そっか、なら、タクの顔はわれてるから、新規登録の時にすぐわかるってことか。」
「うん!そして、どのアバターかもデータはもらえる。ただし、登録後にマスクや装飾で顔がわからなくなる場合もあるから、そこはどうにも出来ない。そこだけ注意が必要ね。」
「よし、ならタクが来た時点でリサに通報があるから、俺たちはそれで把握できるな。」
「わかった、じゃあ、リサは、タクを警戒しつつ、バイトに専念してください。
後は、僕と花が仕留めるだけですから。」
「ありがとう、ほんとはみんなと居たいけど、こればかりは……」
「なーにしょげてんだ!
なるんだろう?医者に!
でぇじょうぶだ、後は俺らに任せとけ!
作戦は……ランスがしっかり立てるから!」
花はニカっと笑いランスを見る。
ランスは呆れ顔だが、このやりとりが皆の笑いを誘い、一旦空気は軽くなった。
「じゃあ、続きを伝える。
僕たちは、リサからアバター情報を受け取ったら、それをめがけてとにかく接触する。
先手必勝だよ。
二人で拘束して、リサに近づかないように約束してもらう。
さもなくば、通報して、二度とALOをプレイできないようにするって。
ゾンビ対策はこれしかない。自分から引いてもらうか、通報しかないからね。」
「……意外とシンプルなんだな。」
「うん。けど、これは向こうが一人で来た場合だよ。
もし、複数人で動いてるときは、同行者がフリーの時に、一人ずつ捕まえる。
変装してるようなら、捕まえた仲間から聞き出す。
あと、僕らも変装が必要だね。
向こうがゾンビである以上、こっちの顔を知られたら対策練られるといけないから。」
「なるほどな。
案外簡単そうだな。」
「花、君は防御力が紙切れなんだ。絶対油断しないでね。
まあ、それよりも、勢いあまってPKしないように。せっかく捕らえても、また向こうがログインするところから始まるから、何度もPKしたら面倒だからね。」
「ぷっ、花さん、すぐPKしそう。色々話すのめんどいとか言って。」
(う!なんでわかったんだ?!何度もPKすりゃ金が底を尽きて諦めるかなと思って、何度もやってやろうとおもったのに。)
「どうせ、何度もPKしたら、金が底を尽きて諦める。とか、何度も何度もやってやるぜ。とかおもってたんでしょう?
今回は遊びじゃないから、一度目で蹴り付けよう。
いいね、花?」
「んぐ!……お、おう、そんくらい俺もわかってるぜ……大人だからな……」
……………リサとランスは顔を見合わせて笑う。
「……まさか、図星だったとはね。
まあ、リサの方には、マネージャーから連絡があると思うから、少なくともそれまではこっちは自分のペースで動こう。」
大まかな作戦は立てることができた。
後は、リサはスキルを獲得するのみ。
三人は森へ行くことにした。
「よし!じゃあ、昨日のペイントしたやつを、狩りに行くとするか!」
◆
「タクさん!オッケーです!お疲れ様でしたー!」
「ありがとうございました。いつもみんなの仕事の速さには、驚かされます。
これからも、よろしくお願いします。
良かったら、これ、みんなでどうぞ。」
キャー!
黄色い声が湧く。
タクからの差し入れは、高級ブランドのチョコレート。
「いつも悪いね、気を使わせて。あの子達もやる気出て助かってるよ。」
「いえ、僕を支えてくれている人たちですから。こんなのやってるうちに入りませんよ。
では、予定があるので、これで失礼します。」
「うん、あの子はオラオラ系にみえて、仕事はきちんとやる。みんな、あんな子だったらいいのに。」
◆
タクは帰宅後、ゲームを起動する。
「よし、予定より早く今月なら仕事は片付いた。やるか、ALO。
………リナ……すぐに見つけ出すからな。」
第六十話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに迎撃体制を整えた花とランス。
しかし、現実世界で「完璧な好青年」を演じるタクの執着は、予想以上に深いものでした。
光と闇が交錯する中、ついにタクがALOの世界へと足を踏み入れます。
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