第五十六話 必要
聞こえてしまった、母親の冷酷な本音。
自分が「いらない存在」だと感じ、闇に沈みゆくリサ。
絶望の淵で彼女が最後に助けを求めたのは、あの不器用で、誰よりも温かい「仲間」でした。
「よし!今日の勉強も終わり!お風呂入ってこようー!」
あれからリサは祖母の家で暮らし続けている。先日親の離婚があったばかりだが、祖母は変わらず何事もなかったかのように世話してくれていた。
祖父は随分前に他界。父方の方は反対に祖母が他界しており、お互いに一人のため、定期的に父方の田舎には旅行に行っていた。
その交流がとても楽しく、温泉での出来事はリサの中で良い思い出になっていた。
そう…医者を志すきっかけとなったのだった。
◆
入浴を済ませて階段を上がろうとしたとき、祖母の部屋から声が聞こえた。
何やら揉めている様子だ。
祖母は少しだけ耳が遠いため、いつも通話はスピーカーにしている。
「なんだい?早くしとくれ!風呂からでちまうよ。」
スピーカーの声はリサには聞き取りづらいが、大まかには聞こえてくる。リサは耳が良いため、大声の時はスピーカーの声も聞き取れてしまう。
「だから、何度も言わせないで、わたしは学費を全額払うつもりはないわ。せいぜい2年分だけ……それ以降は計算外よ。」
「それをしっかり働いて返すんだよ!それが親だ!」
「もう疲れたの……あの人もメンタル弱いし、なのに、あの子ったら……言い出したら聞かない……もう何もかも嫌になったの。」
「そんな子供みたいなこと、許さないよ。しっかり働いて、卒業するまでは責任を取りな!」
「何言ってるの?あの子が勝手に自分の進路を決めたんでしょ?!なら、自分でなんとかすれば良いわ‼︎合意できないことには付き合えない!ああもう!
こんなことならはじめから……わざわざ結婚して子供なんて……」
すかさず祖母が割って入る。
「あんた‼︎それ以上は許さないよ‼︎なんてこと言おうとしたんだい‼︎」
「………これが、わたしの本音だから!……もうわたしにかまわないで!さようなら」
「ちょっと!まちな!」
ツーツー。
電話は一方的に切られていた。
リサは廊下の真ん中で、立ち止まった。
何かを言おうとして、息だけが喉に引っかかる。
膝に力が入らず、手すりに指先を引っかけたまま動けなかった。
視界の端が、じわりと滲んだ。
そのまま階段を駆け上がり、部屋の電気もつけずに布団にくるまった。
外に声が漏れないように、布団の中で大声で泣いた。
涙は止まらなかった。
(わたし……家族にとって……いらない存在なんだ……いらないんだ……もう……無理だよぉ……苦しいよぉ……誰か……助けて……‼︎)
泣きながら心の中で助けを求めた。
ふと、リサの頭の中に言葉が浮かんだ。
『もし何か力になる事があったら--』
『勉強頑張れよ--』
『ありがとうな、リサ!』
『何かあったら連絡くれ--』
『俺たちは仲間なんだ、遠慮はいらんからな--』
無作為に花の言葉が降ってくる。
どれも、リサにとっては心に残る温かい言葉だ。
(花さん……)
ピッ
◆
ザシュザシュザシュ‼︎
「ハッハー!このペイントの奴らをかき分けながら、特定のモンスターだけを狙う!なんてやりがいのある憂さ晴らしなんだー!
……ん!?な、なんだこの音は?!地震の警告アラームか?!……いや違う……コール?通話か?……そんな機能あったのか……とりあえず……よし……リサ?」
ピッ。モニター画面を押す。
「おう。勉強はどうした?……おい……どうしたんだ?」
気がつくと、リサは花に通信していた。
「花さん……わたし……ちょっと疲れちゃった……わたし……」
キキャー!
「邪魔だー!」 ザシュ!
「そう……わたしは家族の中で、邪魔なんだ……」
「いや!ちがーう‼︎敵だ!敵がいたんだ!」
「みんなの……家族の敵は、わたし……」
「だ、か、ら、ちがーう!
今どこだ?!」
「布団の中だよ……」
「な?!なにぃ!?お、お前ついに……じゃなくて!大丈夫なんか?
今すぐこっち来れるのか?!」
(く!敵が多すぎる!ええい!全部避けろ!当たらなければ、どうと言うことはない!というやつだ!)
「わたしは……みんなにとって、必要ないんだ…」
「ああ?!んなわけねえだろー!
とにかく!来れんのか?来れねえのか?!」
キキャー!ヒョイ!スカ!スカ!
「行っていいの?……わたしだよ?」
「来れんだな!?なら、今すぐこっち来い!ログインしたらそこで待ってろ!!
今すぐそっちに行ってやる!!」
ピッ!花は通信を切った。
シャ!大剣へチェンジ。
「どりゃあー!!」 ブォン!!!!
ズバーーーン!!
「ふう。やっと蹴散らせた
よし!急いでカレッジへ戻ろう!
本気出すぞ。」
ドン!!!! 地面が抉れるほどの力で地面を蹴る。
かつてないほどの速度。
花は、性格上本気を出すことはない。
人生もそう。絶望してから本気で生きてない。
だが……今、花は確かに本気でリサの元へ走っている。
リサが花を動かしたのだった。
「おとなしく待ってろよ!リサーー‼︎」
第五十六話 完
最後までお読みいただきありがとうございます!
リサさんの絶望と、ハナさんの本気。通信越しの噛み合わないやり取りに、ハナさんの必死さが滲み出ていて胸が熱くなりました。
「人生で本気を出してこなかった」ハナさんが、リサのために大地を抉って走る。この瞬間のハナさんは、間違いなく世界で一番かっこいい戦士です!
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皆様の感想やコメントも、一文字ずつ大切に読ませていただいております。
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