第四十話 またきてね
現実世界での休息。いつものラーメン屋へ向かった花を待っていたのは、予想だにしない「邂逅」でした。
隣に座った豪快な女性。彼女が語る驚きの職業と、次々と飛び出すゲーム内の裏話。
仮想世界と現実が奇妙にリンクし始める中、物語は新たなステージへ。
リサやランスとの合流、そして動き出すオリエンテーション。
「縁」が繋ぐ不思議な一日の様子をお楽しみください。
花は服を着替えて準備をしていた。
もちろん、ラーメンを食べに行くために。
ラーメン屋の行きつけは複数あるが、今日はこってり豚骨のラーメンに決めていた。
車を走らせる。花の車は黒のミニバン。近年出たモデルであり、ファミリーカーとして簡単に買える車種ではなかった。
ミニバンの中ではファミリー感は無く、もし一人で乗り回すとなれば、様になるだろう。
「だが、俺にはカッコつける人もいねえ。
ま、結婚してりゃあそれが普通なんだけどな。
寂しい人生だぜ、まったく。
おっと、いかんいかん。ネガティブな発言は良くない。余計に惨めになっちまう。
子供が巣立つまでのあと20年ほど。
耐えるんだ、俺!」
行きつけのラーメン屋に到着して店に入る。
運良く今日は並ばずに入れた。
「らっしゃいー!いつもまいど!
カウンターでもいいかい?あと、注文はいつものかい?」
花は了承して店内へ。注文はいつも頼んでいるものを注文した。常連なのでもう顔見知りだ。
指示されたカウンターに近づくと、大柄な女性が隣に座っていた。
「おっと、ごめんな、にいちゃん!すぐどけるねぇ。よいしょっと。」
「あ、どうもすみません、隣失礼します。」
「いいえの!こっちの荷物がデカすぎたんだわ。ちょっと休みとって里帰りさ。
にいちゃんはこの辺の人かい?」
(な、なんか話が続きそうだぞ………とりあえず当たり障りなく返答しておこう。)
「ええ、この近くです。」
「やっぱり地元はいいねぇ、ここへはよく来るのかい?」
「はい、常連ですね。あとは友達のやってる店なども行ったりします。"ブラックベルト"というラーメン屋です。」
「ほほう〜、良いことを聞いたねえ。」
そうこうしているうちに、二人にラーメンが届く。
そこで話が終わりかと思ったら、その女性はまだ話を続ける。
「あたしゃ、都会の方で、ゲーム開発に関わってんだけど、あんた、Another Life onlineってゲーム知ってるかい?」
(?!ALO制作の関係者?!踏み込んだ話を聞けるのか?いや待て、やり込んでるなんて言ったら逆に有力な情報を伏せられてしまう。
ここは泳がせとこう。)
「ええ、名前だけなら聞いたことあります。いま話題ですよね?」
「そうさ!あたしゃそこの隠しイベントの担当なんだけどねぇ、自分の地元をアピールしたいから、この土地のものを取り入れてるのさ!」
(ん?隠しイベント?この土地のもの?)
「そ。そうなんですか、隠しイベント。それは面白そうですねぇ。………温泉……とかだったり?ですか?)
女性は目を見開き花の顔を覗き込む。
花は食べていたラーメンを吹きそうになった。
「あんた!良いところに目をつけてるねえ!
他にも企画を挙げるために、ヒントを探しに里帰りというわけさ!決して出産じゃないよ?
アッハッハっハ。」
「す、すごいですね。ラーメン屋なんかあったら、面白そうですね。」
「お!いいねえ、それ採用!鯛めししか思いつかなかったから、助かったわぁ!」
(………鯛めし……まさかな。)
二人はほぼ同時に食べ終わる。
口を拭きながら会話は続く。
「やっぱり、みかんとかも、ありですかね?」
「お!それそれ!それをどこかで使いたいんだよぉ。あんた、なかなかやるね!気に入った!」
(このノリ………まじか?いや、人違いか。見た目も若いし)
「ここはあたしが払っとくよ、良い話を聞けたからねえ!」
「いや、さすがにそれは!……見ず知らずでお返しできません!」
しかし、二人分の伝票を支払い、女性は出ていくのだった。
タクシーを呼んでいたらしく、乗り込んでいる。
花は後を追いかける。
「あ、あの!なんとお礼をしたらよいか……」
「ああ良いんだよ!現実にも、ラッキーなことってあるだろ?なかなか捨てたもんじゃないからね」
花は見透かされたような気分になり立ち尽くした。
「さあ!若者には時間は有限!さっさと行きな!」
花はペコリとお辞儀をして、駐車場へ歩き、女性に背を向けた。女性はタクシーに乗り込み、ドアを閉める際。
「あ、そうだ。また、入りに来なよ!まってるからね!」
!?
ガチャ。ブロローー!
花は即座に振り向いたが、すでにタクシーは走り出した後だった。
花は唖然としてしばらく立ち尽くしていた。
「や、やっぱり、女将だったのか……こんなことってあるんか?普通。ヤバすぎるな今日は。」
花はまっすぐ自宅に戻り、再びALOへ戻った。
その後すぐにリサがログインして戻ってきた。
「やっほ、お待たせ!お昼ご飯は、ラーメンかな?」
(こいつ、いつも鋭いんだよな。俺そんなにわかりやすいか?)
「ああ、そうだ。地元の行きつけのな。」
「いいなあ〜、女将と同じ何だよね?いいなあ〜。」
「ああそうだ。女将にはさっき会ったな………奢ってもらった。」
??
「え??女将にラーメンを?このエリアにラーメン屋あったかな?」
「いや………現実の方だ。」
「あ、なーんだ!現実の方ね!こっちでラーメン屋見つけたなら大発見………え??現実の……方で?」
花は黙って頷く。
「ええええええええ!!!!」
「ばか!声がでかい!」
「いいなあ〜、ずるいよぉ、私も仲間に入れて欲しかった!」
リサは不貞腐れている。
「いや、女将と決まったわけじゃないんだ。たまたま隣に座った人がだな……」
花は一連を説明した。
「そっか、会話の流れから女将の確率が高かったのね。……けど、"また、入りに来なよ、まってるからね"って、それ、完全に女将じゃん?!」
「だよなー。まじでびっくりしたわー。」
「いいなあ、なんかここで知り合った人と、そうやって出会うのって、凄いね。なんか、それも面白いね!」
(いいなあ、わたしも……花さんに会う日が来るのかなあ……きっと、良い人なんだろうなあ。)
リサはモジモジしている。
「ん?どうした?まだ時間あるから、トイレは済ませてこいよ?」
「ちがーーう!!んもう!そうやっていつもイジるー!」
「あははは。本当に面白いなあ、二人の会話は。お腹が痛い!」
ランスはすでに戻っていて、会話を聞いていた。
「ら、ランス?!あわわ、恥ずかしいとこ見られちゃった〜、もう!花さんのせいだからね!」
「おうランス!さあ、行こうか。」
花はランスの背中を手で誘導した。
「誤魔化すなーー!」
ガシ!
リサはランスの片手を引き寄せて花から離そうとした。
(あ!また、リサさん?!)
ランスは真っ赤になる。
三人は、じゃれながらオリエンテーションに向かうのだった。
第四十話 完
最後まで読んでいただきありがとうございました。
節目の四十話は、現実世界でのサプライズ回となりました。女将さん(?)、現実でもめちゃくちゃ格好いい人でしたね。花が無意識に隠しイベントのアイデアを提供してしまう展開に、運命的なものを感じていただければ幸いです。
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