第三十二話 疑問
港町での休息。そして、リサに訪れる現実の転機。
今回は、ハナがリサの「本当の想い」に一歩近づく、心の交流回です。
現実とゲーム、二つの世界で戦う二人の決意をぜひ見守ってください。
セーブポイントも落ち着いたため、港町をゆっくりと探索していた。
ここで一度スケジュールの確認をする。
ALOの進行具合ではまだそんなに経過していないように思えるが、実は、航路に出るまでの準備や、船の上など、意外と何日かに渡ってログインしていたのだ。
春休みも後半を迎えた。
リサは新学期、高校最後の年。実力テストが控えていた。
「ごめん、またしばらく来れなくなる。」
「なに言ってんだ、医学部行くんだろ?ついに三年生。もう少しで夢が一つ叶うんだ!
しっかり勉強頑張れよ!」
「ありがとう!またメッセージ送るねー!」
そういってリサはログアウトした。
(新学期か。いよいよ受験生だな。頑張れよ、リサ。なんか、親心ってやつか?
見た目は美人だし、スタイルも良い。
ただ、あの愛嬌が一番のポイントだよな。
人として可愛いんだよ。イヤらしい意味じゃなく。そう………決して、イヤらしい意味ではなく……)
ふと、リサから言われた言葉を思い出す。
『しっかりパンツ覗いてたのに?』
(…………………。
とにかく。これからリサは忙しくなる。
その間、俺は存分に憂さ晴らしするとするか。)
◆
花は仕事終わりにふと思う。
(今日も変わらず仕事も終わり……。管理者も楽じゃねえな。理不尽に数字のこと言われるし。
けど、この立場で仕事やんなきゃ、家族養えねえからなあ。
子供の習い事はやたら多い。
あいつは平日休みでのうのうとプール行って羽伸ばしてるのに、土日は俺に子供の習い事行かせて仕事入れやがって。
俺はいつ休むんだよ……。
ま、そんなことはあいつは考えもしねえだろう……。
もういい。
人のこと考えられんやつに引っかかった俺が悪いんだ。
そう思うことにしよう。
◆
夜中寝静まった頃。
花はALOにログインしていた。
宿屋へ転送される。
(なるほどな。こういう風にここへ運ばれるというわけか。
さて。さっそく行くか。)
宿屋を出て森へ向かう。
(お!?モンスターの動きがいいぞ!やりがいあるぜ!)
「うおーーー‼︎」 ザン! 「こい!」
ドロップアイテムは花が着地する前にすでに空中へ浮かび花へ集まってくる。動きながらでも集められることがわかった。
平日は夜しかログインできないため、主にストーリーを進めることはない。
基本的に日常のうさ晴らしがメインとなる。
はじまりの都よりも敵は数段強いため、憂さ晴らしの手応えを感じていた。
◆
宿屋にて。
花はある疑問が浮かぶ。
そもそも、リサはこのALOから離脱すればタクから逃れられるんじゃないかと。
(なんで、わざわざ出くわす可能性のあるALOにい続けるんだ?
まあ、確かに元々リサがここでバイトしてて、ストーカーの方が明らかに悪いんだけどなあ。
逃げる方法なんざいくらでもある。)
花はスイートルーム内をウロウロしながらブツブツ呟いていた。
(じいちゃんも言ってたな。相手の立場になれって。
リサの立場か………。そういえば当たり前だが、俺はリサのこと全然知らんな。)
花はリサの数少ない情報から考えた。もうすっかり仲間として大切に想っていた。
親からアイドルを目指す様に強要されていたこと。夢は医者。
そのために必要なアルバイト。
アルバイトは時間の融通がつくから。
それくらいしか思いつかなかった。
(…………。じゃあ、俺はどうだ?自分がその立場として考えてみよう。
俺は、人生に絶望して、憂さ晴らしをしている。
それが救いだ。
なぜならここは、現実と離れて何も考えず、新しい自分でいられ………。
ああ……そうか。
もしかすると、リサも、この世界に救いがあったのかもな。
強要される現実。周りからは恵まれてると言われる。不本意にモテる。
確かに。嫌になるかもな。
そりゃあ、ここでの時間は大切にしたいよな。)
花は一つリサのことを理解した。
(けど、状況的には危険に変わりはない。
いくらこの世界を拠り所にしてるとはいえ、現実の問題を持ち込んだら、ここにも居づらくなる。
ああ、そうか。
だから立ち向かって解決したいのかもな。
自分の居場所を守るために……。
わかったよリサ。
お前の居場所。ぜってえ守ってやるからな。)
そう決心して、宿屋を飛び出し、また森へ入っていくのだった。
第三十二話 完
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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