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Another Life 〜現実が詰んだので、フルダイブVRで人生やり直します〜  作者: hanaXIII


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第三十一話 丘の森

現実の記憶と仮想の冒険が交錯する中、二人の旅は新たな拠点へと辿り着きます。

深まる信頼と、何気ないやり取りの中に隠された、大切な想いの断片。

一歩ずつ進み続ける道の先で、ふとした瞬間に過る「一つの違和感」が、物語に新たな波紋を広げていくことになります。

コンコン

ドアをノックする音。

「好春、入るね。」

そこには、ベッドで体育座りをする青年がいた。

「仕事辞めてきたの?大丈夫?」

「…………姉さん。ありがとう。ごめん心配かけて。」

「うん。大丈夫。夕食、ここに置いておくね。」

「ありがとう……。」

青年はパソコンで動画を見ていた。

とあるアイドルのライブ映像。

たまたまだった。

小さな頃からアイドルを目指していたという、新人のアイドルの卵。

しかし、どこか表情の硬さを青年は見逃さなかった。

(この子、なんか辛そうじゃないか?)

『みんなに元気を与えられるような存在になりたい。』か………。

青年はパソコンのキーボードを打つ。

(俺、めっちゃカッコ悪いな。でも、相手はどこの誰かもわかんないんだし、メッセージ送ってみよう。)

数日後、メッセージは返ってきた。

自己紹介や感謝の言葉の最後に、一言メッセージがあった。

『ゆっくり。自分のペースを大切に。』

驚くほど短文だが。ありきたりな「頑張れ」とか「努力すればなんとか」といった励ましではなく、自分自身を気遣うものだった。

このアイドル以外にも、動画を立ち上げている人たちに相談のメッセージを送っていたが、この子だけは内容が違っていた。

青年は、この言葉に救われた。



教会の階段を降りて、丘を下る。

ふと下町を見ると、そこは森と隣接している。

花は地図を見た。すると詳細がアップデートされている。


「ふむ。そうか。北の森は、あちこちに伸びていて、各所の森と繋がっているということか。

どうりで、階段前に、道が二股になってたわけだ。

なら、あっちの道を選んだら、森に行くということだよな、これを見る限り。」

(花さん、森がどうのこうの言ってる……まさか、また暇さえあれば森で憂さ晴らしをするんじゃ……多分そうだろうなぁ)


丘を降りるとターミナル前のホテル街に戻ってきた。

地図画面を開いたまま、何本かのメインストリートを見つけて、一番手前の道を選択する。


「よし。ひとまずこっちのエリアに行こうと思うんだが、リサはどう思う?」

「うん!ひとまず近い方から行ってみよう!」

道を抜けると、噴水広場に出た。

その先を見ると、中央の王都の城壁が薄っすらと見えている。その壁までが港エリアの街になる。

花は辺りを見回す。

「ふむ。なるほどな。おそらくあっちの道に行くと、ここと似た様な雰囲気の街へ繋がっている。そして、丘の側の道へ行くと森へ行くということか。差し詰め、森を抜けると東エリアへ繋がるということだろうな。」

リサはポカンとしている。あまりゲーム慣れしていないのと、方向感覚はそこまで得意ではないからだ。

しかし、あるポイントだけは理解できている。

「花さん。やっぱり森を中心にマップを更新してる??」

「ん?ああ、その通りだ。森を把握しておかないと、憂さ晴らしができんからな。最重要ポイントだ。」

(最重要ポイントって………やっぱりそうなのね。けど、花さんのこと少しわかってきたから少し面白いかも)

「どうせ、面白いやつだなとか思ってるんだろ?ふ。好きに思えばいい。うさ晴らしだけが俺の楽しみだからな。」

「だけ?……しっかりパンツ覗いてたのに?」

「そ、それは別だ!勘違いしているみたいだが、覗くために行動しているんじゃないぞ?たまたま見えそうなシチュエーションだったから……」

「ぷ。はいはい〜、そういうことにしておきますよ〜、ふんふふ〜ん」

(ぐ。こいつ、もう開き直ってやがる……鼻歌なんぞ歌いやがって〜……恐るべし!)


二人は宿屋を見つける。

宿屋のNPCに聞くと、宿泊部屋は何部屋もあるらしく、一度解約しない限り、その部屋は登録して使い続けることができるとのこと。


「ん?なんか空きが多いな?」

その理由も質問した。

NPCは丁寧に答えてくれる。

まず、部屋にはメリットがいくつもあり、登録料が割と高めであること。

たいていの初期プレイヤーは、森で夜営してセーブポイントを設置することが多い。

とのこと。

また、冒険者ランクがD以上を含むパーティが利用可能。

などの制限がある。


メリットは、部屋は基本的に鍵をかけることが可能。ドアはある程度の強度があり、低い攻撃力では蹴破れないため、身の安全が確保できる。ランクの良い部屋になるほど扉の強度は増す。ただし、耐久性は別。攻撃し続けるとそのうち壊れる。


「質問いいか?この港エリアで一番良い宿屋はどこだ?」

「はい。港エリアですと。この宿屋のスイートルームになります。

森と隣接し、王都や教会へも行きやすい立地ですから。後は、スイートルームはパーティ用としても活用されており、複数人過ごせる仕様になっております。」

リサは金額を見て驚く。

(うわあ、いくら一度登録したら良いとはいえ、さすがに高いなあ……)

「よし。じゃあこのスイートルームを頼む。一括払いだ。」

「え!もう決めちゃったの??!すごく高いけど、大丈夫なの??」

「ん?ああ、すまん、気が利かなかった。

別々の部屋が良かったよな?よし、そしたらもう一つスイートルームを………」

「ストッーーップ!だ、大丈夫です!一緒の部屋で!」

「?  そうか?なら、決まりだな。」


スイートルームへ案内されて部屋に入る。


「わあ〜。王族になったみたい〜。」

リサはまたクルクル回ったりして楽しそうだ。


その間に花はセーブポイントを設置する。

「よし。リサを共有設定にしておくから、これでこの部屋も使えるぞ。

これからはしばらくここを中心に行動して、また良さそうなところがあればセーブポイントを設置するか。」

「うん!なんだか冒険って感じだね!

わたしのワガママで、花さんの時間が取られちゃって、なんと言って良いのか……」

リサの顔は暗くなる。やはりタクのことが不安なのは変わりないようだ。

(そりゃあそうだ。ストーカーみたいなもんだからな。ま、普通の女子ならホイホイ釣れるんだろうけど、リサは少し価値観違うからなあ。)


花はリサの頭をポンと撫でる。

「心配するな、俺もついてる。いざとなったら俺が盾になるから安心しろ。」

リサの目がウルっとする。

「ありがとう、花さん。わたしも少しでも強くなるように努力するね!」

「まあ、時々パンツは見るかもしれんが、それは許してくれ。」

「んもうー!花さんのカバ!」

二人は漫才の様に笑い合った。


これから王都、大学、探索することは山の様にある。

花は少しワクワクしていた。今まではうさ晴らしに徹していたが、冒険する楽しさを実感しているのだった。

そして、ある疑問が浮かんだ。


(ん?ちょっと待てよ………そもそもリサ。)


第三十一話 完








最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ハナの過去に触れた冒頭、そしてリサとのスイートルームでのやり取り……。二人の絆が深まっていく様子に、思わず顔が綻んでしまいますね。ハナが最後に感じた「疑問」とは一体何なのか。次回の展開も見逃せません!

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これからもよろしくお願いいたします。

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