第二十九話 セーブポイント
広大なビギナ大陸での冒険を続けるため、避けては通れない「セーブポイント」の設定。
花とリサは、偶然出会った管理人・マリーから、ALOの驚くべきシステムについてレクチャーを受けます。
しかし、その会話の中でリサの秘められた過去に触れる、小さな波紋が広がり始めます。
花とリサは階段を降りる。すると、先程声をかけてきたスタッフが待っていた。
「どうでしたか?中はご覧になりましたか?」
「いえ、中までは見ていません。今日中にセーブポイントを決めないといけないので、早めに街に降りようかと思って………」
「そうでしたか……ちなみに、この敷地内なら、どこでもセーブポイントにできますよ?」
二人は目を丸くする。
「え! そうなの?! 知らなかったー!」
「ええ、できますよ? なんなら、わたしからご説明しましょうか?」
二人は施設内を案内してもらいながらセーブポイントについて説明を受ける。
「申し遅れました。わたしは、ここの管理人担当のマリーです。ビギナ大陸でのセーブポイントは、宿泊施設、商業施設などの、運営側の施設、あるいはご自身で建てられた建設物に、セーブポイントを付ける。これらが主なセーブポイントとなっております。
細かい設定になると、アイテムを使用した場合のセーブポイントの設置があります。」
「ふむふむ。だからこの敷地内にセーブポイントを設置できる。ということか。
場所は好きなところにできるのか?」
「はい。このエリア内なら。これは、待ち伏せなどを防ぐためのものでもあるので、パーティ内で共有して決めておくと良いでしょう。」
「なるほどな、、俺たちは……特にリサはその辺り警戒しておく必要があるな。
セーブポイントは、複数持てるのか?」
「はい。ご自分で決めたセーブポイントには選択して飛ぶことが出来ます。
基本的にはログアウトした場所へのログインとなりますが、設置アイテムの種類によっては、
ログインの際に選択できます。
また、緊急離脱アイテム使用の際も、口頭で飛ぶことも出来ます。
場所が露呈する事を防ぐために、番号や暗号で設定する方法もございます。」
「すごい、さすがは世界のALO!プレイしやすいように考え尽くされてるね!」
その後、マリーによって、セーブポイントの設置方法についてレクチャーしてもらった。
あらゆる場合に備えた質問もしながら丁寧に教えてもらった。
「ありがとうございますマリーさん。助かりました………」
マリーはリサの表情から違和感を抱いていた。
「あの……運営側の身である、わたしから聞くものなんですが、何か事情があるのですか?
もしこのゲームに関することで、お悩みがありましたら、何でもご相談ください。個人情報はお守りします。」
リサは花の方を見る。そこには不安そうな様子がみられた。
花は大まかな内容--タクのことを話した。
マリーは驚いていた。
「あなた……もしかして、リナさん?最近人気急上昇で、突然消えたアイドルの卵……」
?!
リサは更に不安そうな表情になる。
花はリサの頭をポンと撫でて、マリーを見る。
「あ!いえ、不安にさせたのなら申し訳なかったです。
その。何年か前に引きこもりになった弟がファンだったもので、わたしも少し知識がついたという感じです。安心してください。」
(引きこもり?……もしかして……よしはるさん?)
「まあなんだ、マリーさんのいうアイドルがこの子とは限らねえだろ?」
(ったく、わっかりやすいんだから。ま、そこが良いところなんだけどなあ……)
「はい、その通りです。不安にさせて申し訳ありませんでした。お気になさらず。
先程も申しましたように、運営側から個人情報を漏らすことはありませんので、安心してください。それが、有名人であったとしてもです。」
「まあその、もし、さっき話したタクってやつや怪しいプレイヤーがいたら、メッセージだけもらえると助かる。それこそ個人情報にはなると思うが、そこは運営サイドで話し合って判断してくれてかまわない。よろしく頼むよ。」
「はい。定期ミーティングや報告などで挙げさせていただきます。プレイヤーが安心できるように運営することが大事ですので。」
「ありがとうマリーさん。あの……その。弟さんに『ゆっくり。自分のペースを大切に。』とお伝えください。」
(ったく。それ言ったら自分がそのアイドルですって言ってるようなもんじゃねぇか。フォローしとくか。)
「さすがだなリサ。困ってる人や訳ありな人がいたら、ほっとけないもんな?」
「ふえ?あ、うん。そ、そうです!それです!
どうかお伝えくださいましー!」
(ああ、ぜってえバレたなこりゃ……ぷぷ。リサらしいわ)
それからマリーと別れて花とリサはもう一度この施設を探索するのだった。
(さて、良い事を聞いたぞ。これならタクの野郎がくる前に対策出来そうだ。)
「よし!花さん!もう一度上までダッシュー!」
「いや……だから走る必要……」
「遅い遅いーー!負けたら罰ゲーム〜、良い事無いぞ〜!?」
階段を無邪気に駆け上がるリサを、花は微笑ましく見上げる。
(いや……………この眺め………もう十分良い事あったぜ………)
花はゆっくり、駆け上がるのだった。
第二十九話 完
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ALOのセーブポイント、番号や暗号で設定できるなんて、まさに「考え尽くされた」システムですね。これならタクのような執拗な追跡者に対しても、戦略的な立ち回りができそうです。
そしてリサの優しさが、思わぬ形で自分の正体を示唆してしまうシーン……彼女らしい不器用さが微笑ましくもあり、少しハラハラしますね。
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