第二十二話 探索
人は、誰にも見せない場所で救われることがある。
それが現実でなくとも。
「リナさん!僕とお付き合いしてください!」
「ねえ、そこの君可愛いね、ちょっとお茶しない?」
「ねえ、なんかサッカー部エースの○○先輩が話があるから放課後来いってさー」
リナはモテていた。
若干17歳の時点で、すでに何人もに告白されたり、先輩に目をつけられたり、ナンパされたり。
しかし、リナはあまり恋愛はしてこなかった。
心から好きになる人や、魅力的と感じる異性は現れなかったからだ。
みんな自分の見た目で寄ってきている。
そんなのとっくに見抜いていたからだ。
心から安心できる人、尊敬できる人。リナの好みは意外と見た目ではなく中身が重要だった。
親からはアイドルになるようにと、少し屈折した愛情を受けてきたせいか、リナには選択の自由は無く、そつなくこなせた分、親も過剰に期待した。
医学部進学を決める時。母親は猛反対して発狂、父親がなだめたが、それから夫婦の関係は悪化。
今は祖父母の家に住み、保護してもらっている。
◆
花は狩りを終えてメッセージを開く。
「ふむふむ、この土日、この3日間、この土日の、これらの時間、、、なるほど、、なかなか几帳面にスケジュール組んでくれてるな。ならば会わせんとな。
幸い、家族は帰郷で春休みはおらんからな。
その期間パート休んで何考えてるのやら。
ま、何にせよそれまで暇だし、今日はすでにノルマも終えたから一人で街を探索するかな。
それにしても、本当にこのゲートは誰もこねえなあ。
というか、多分初めは警戒して少し下のゲートから始めて、すでにビギナ大陸行ったんだろうなきっと。」
花の推測は当たっていた。
そもそも、初手でいきなりガチ勢と鉢合わせする確率の高いゲートはこのオープン過ぎる世界観では皆避ける。
はじまりの都ではチュートリアルが主で、ゲーム好きなら少し探索して次に進むだろう。
満喫したい派は、難易度が低く安全なところで世界観を堪能する。
というわけだ。
リサは賢い。
そのため、アルバイトで説明を受けた時点でこの流れを推測し、ゲート1の配置を希望。誰とも被らなかった。
もちろん、もしガチ勢が来ても、チュートリアルくらいすぐ覚えられるリサにとっては何てことなかったのだ。
同じ時給ならば、忙し過ぎるよりゆったりの方が良い。
その時間を有効に使って勉強し、まさに一石二鳥。
のはずだったが、、、そこに一人の男が空気を読まずに来てしまったのだ。
リサの予想は少し外れたが、花以外のプレーヤーはいないため、花の相手をする時間以外は稼ぎながら勉強することができたのだ。
しかも、花との時間もリサにとっては一つの縁となったのだった。
リサはモテる。
そのため、もし花じゃなかったらと思うとゾッとした。
良いところを見せようとする人、下心がある人はいざと言う時に頼りにならない。
それは本能的にわかっていた。
花は人生に絶望しているため、へんな期待はしない。それどころじゃないからだ。
それがリサにとっては相性が良かった。
たまたま空気を読まずに現れたアラフォーは、知らず知らずのうちにリサを救っていたのだった。
「ん?!なんだあれは!?こんなところがあったのか!」
街から少し離れ、海沿いを歩くと、なんと温泉宿がある。
花は迷わず入った。
のれんをくぐる。
「いらっしゃい、そこの券売機でチケットをー」
「ああ、見りゃわかる。俺は温泉で有名な土地の出身だからな。」
「あらそうかい、あんたが一番乗りだよこの温泉は。」
「こんなところがあったなんてな。」
(この店員もなんか自然だな)
「この温泉宿はゲート1にしかないからねえ、隠しポイントみたいなもんさ。」
「へー、何でここにしか作らんのだ?
あ、待て、、もしかして、人が多いところは忙しくなるからか?」
「御名答!NPCだけでは押し寄せるプレーヤーに対処できなくなる可能性もあるからねえ、温泉宿に人件費は当てられないということさ。
と、言うのは冗談。
NPCでも十分やれる。
ただ、隠しポイントを作って差別化してこそ、オープンワールドの魅力というもんさ!」
「あなたも、プレイヤー?」
「そう。それは本当に正解!
けど、普段はNPCさ。今日はたまたま、定期的に見回りに入っただけ。
よくここが見つかったねえ。隅々まで森を探索しないと、普通は見つけられないけどね。」
「ああ、俺は基本うさばらしに森のモンスターを狩りまくってるからな。蹴散らしまくるとその辺に出現するまで時間がかかるから、探索しながら回ってるんだ。
今日はたまたま山の裏手に回ろうとしたら、ここに出た。」
「うさばらしに狩りねえ。前作でもストーリー全く進んでなくて、異常にキル数多いプレイヤーがいたけど、やっぱりいるもんだねえ。」
「俺の他にもそんな奴がいたのか。世界は広いな。と、言うことは、あなたは制作側の上の方の人かい?」
「ほう、今のでそこまで察するのかい。
そうだよ、わたしは前作の統計とバランスを担当。今作では裏設定らもからんでる。」
「そうでしたか、では」
花はひざまずく。
「ちょ、あんた、なにしてんのさ!」
「製作者関係者の方にお会いできて光栄です。
俺は、五年前からこのゲームに救われました。
ずっと感謝の言葉を伝えたかった。」
「そんな大袈裟な、、顔をあげとくれよ!あんた、ちょっと訳ありかい?」
花は立ち上がる。
花は自分がゲームをするきっかけをざっくりと話したのだった。
第二十二話 完
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
出会ったプレイヤーはなんと前作のスタッフだった。
世界は広いようで狭い。
次回、温泉宿で世界は繋がります。
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