第十六話 ジョブ
この世界には、
強くなるための「役割」がある。
けれど、役割を選ばずに進み続けた者だけが
辿り着く場所も、確かに存在していた。
ジョブ回らしい、ゲーム感と人生観の両立です。
「今日もありがとうございましたー!また来てくださいねー!」
ここは、とあるクラブラウンジ。
「リナ〜、この後空いてるよな〜」
出待ちしていたのはメンズモデル。
「う、うん、ちょっと待ってて」
その後、近くのカフェで。
「このままいけば、ほんとにアイドルになれんじゃね?俺がしっかり事務所に口聞いてあげるからさ!、、、な、わかってるよねリナ」
リナはうつむく。
「あのさ〜、そうやっていつまでも釣れないで済むと思ってんの〜!誰があそこ斡旋したと思ってる?君くらいのレベルなんて、この業界にはゴロゴロいるんだからさ~。」
そんなことを、ふと思い出していた。
◆
狩りを終えて花はまたロビーへ戻ってくる。
いつもの挨拶。リサがいる時はこの後談笑するのが日課となっていた。
「そう言えば、花さんは戦闘の時どんな武器を使ってるの?あと、ジョブとかは前作から引き継ぎだと思うけど、再設定とか、したりした?」
花はポカンとしている。
「ま、まさか、ずっとノーマルのままでやってたの?」
花は当たり前のように頷く。
「そうだなぁ、武器とかないよ?素手だ素手。ジョブってあれか?槍使いとか魔法使いとか?」
「そう、ジョブはそんな感じ、自由に設定できるはずだけど、ずっと触ってなかったんだねー。
ジョブ設定してると、そのジョブで覚えれるスキルとかあるから、攻撃とかもつよくなるんだよねー。」
「なるほどな、この5年間無駄なことしてたってことか、まあ全然気にしてないけどな、これから考えたら良いか。」
リサは花のステータス画面をもう一度見せるように言う。
調べるとあるスキルがついていることがわかった。
「グロウアップ……?その下"改"?初めて見るスキル。調べてみよう。」
グロウアップは早熟スキルで、経験値、ギル、スキルポイントがそれぞれ3倍になる。
改の方は、ステータスを振らずに貯めておくと、経験値ポイントがさらに2倍量加算されると言うもの。
さらに花には「威圧(上級)」それに「会心」「貫通」もついていた。そのほかにも色々と付与されている。
と、リサは説明する。
「なんで、こんなについてんだ?きちんとジョブ設定すらしてねえのに。」
「わたしにもわからない、、、もしかして、裏設定とかだろうか。確かに、ノーマルのままでここまでやり込むプレーヤーもそういないから前例がない、、、そこを遊び心で裏設定作ったのかも、、、」
「まあでも、今から5年もノーマルでやり込もうとはならんだろうな、普通は、、、なあ、ノーマルでいるメリットってなんかあるのか?」
「んーー、わかんないけど、装備がある程度なんでも付けれることかなあ。ジョブ専用武具は効果は付与されるからみんなジョブ決めるんだけど、その代わり欲しいアクセサリーとか、防具がつけれなかったりするみたい。そのせいで一人でクエスト行くのにも限界が出てくるようになってたりするの」
「ふーん、、なら、俺はこのままでいいかな。特に困ってないし。
あ、この、サブジョブはなんだ?」
「これは、戦闘とは別のジョブ、いわゆる一般的な職業ね。
これは冒険しながら資格をとったり、バトルを経て勝手についてる場合もある。
ん?花さんにもいくつかついてるね。
どれどれ、、、
採掘?、、、ドロップするアイテムでレア度の確率アップ。
アイテム枠拡張?上級?、、、持てるアイテム数上限突破
あと、収集?、、近くのものを自分のところへ引き寄せる?、、、
それにー」
「いや、もういいよ。なんか見るの面倒だ。やりながらまた確認していくよ。」
(何かすごい花さんのステータス。異常すぎる。けど、全然欲がなさすぎる。まあそこが良いところなんだけど)
「けどまあ、なんか気分転換したいなそろそろ」
リサはハッとする。
「そうですね!試しに武具屋さんとかアクセサリー屋さんとか、探索しませんか?!」
(うおおお、近い近い!!俺には眩しすぎる!)
「な、なんでそんな手でガードするんですか?なんかショックです」
リサはまた頬を膨らませて怒っている。
「いやあ、眩しすぎる、俺には!」
「またそんなこと言ってー!」
「ごめんごめん、冗談だよ!じゃあ、次会う時にでも案内よろしくな!」
(ほんとに眩しいんだよなー、これからの人生希望に満ち溢れてるやつみると)
そんな感情もすぐに見透かされていた。
「花さんだって、、まだこれからじゃないですか、、、眩しいなんて言わないでください」
(賢すぎるだろ、そうだな、卑屈になったらあかんわな)
「ありがとうリサ、そうだな、リサの言う通りだ。」
恋愛ではない。しかし、確実に花にとっては救いの存在となっていた。
第十六話 完
花はまだ、自分の強さを理解していない。
だが、誰かに寄りかかることなく、
何も求めずに歩いてきた時間が、
いつの間にか「特別」になっていた。
次に選ぶのは、役割か。
それとも――このままの自分か。




