第十五話 まっさら
人は、すべてを語らなくてもいい。
けれど、ほんの少し打ち明けるだけで、心が軽くなることがある。
この世界で出会った二人は、
「過去」ではなく「今」を見ることを選び始めた。
静かで、この話の“優しさ”に合います。
「あ、ごめんなさい!つい好奇心で、、!
その、、詳細は言わなくて大丈夫だよ!
けど、うさばらしに対する熱意がすごいなって思って、聞いてみただけだから!
素性を出さないとか、知られたくないことは自己判断で自由だから、花さんの言葉で聞けたら良いなって思っただけ!」
リサは片手で「ゴメン」のポーズ。
(やっぱりよく出来てるよ、この子は。雰囲気ですぐ察した。ほんと、見習って欲しいもんだよ。じゃあ、少しだけ話すか)
「わかった、実はな、俺は現実での生活に絶望したんだ。
夢や希望を抱いてた。けど、蓋を開けると、そこには悪魔みたいな現実が待っていた。気が付かなかったんだ。そして、無駄に期待してしまった結果、取り返しのつかないところまできてしまったんだ、、、。ははは、情け無いよな。笑うしかねえよ。
もう絶望してから毎日苦痛で仕方がなくってなあ。
だから、やつあたりして、少しでもストレスを発散しないとおかしくなりそうだったんだ。
な?ろくでもない理由だろ?ははは、、、」
(え?花さんてわたしと同じくらいの歳じゃ、、結婚してるとか?いや、わかんない、わたし結婚したことないし。周りにもいないから。きっと、彼女に騙されたとかよね。きっと、、、もしこれが結婚生活のことだとしたら、、、かなりへビーだ………!)
「そうだったんですね、、、けど、はじめの時も言いましたけど、全然おかしくも何とも無いから大丈夫です!
花さん、とても辛い経験してたんですね。
わたしの想像を超えてます。
むしろ、ここはゲーム。うさばらしはおかしく無いです!
そうやって上手にメンタルケアしてる方が、わたしはすごいと思います!
世の中には、人に八つ当たりしたり、自己中心的で人へストレス与える人が多いんですから!」
「ははは、よくわかってるじゃんほんと、、そう言われると救われるわぁ」
花は苦笑いする。
「その現実からは、離れられないんですか?
新しい生活をすることはできないんですか?」
「それがなあ、、、できねえんだよ。
できねえところまできちゃったから絶望したんだよなあ、、、なんか、人生これまでかーってな、ははは!暗くなるから申し訳ないわほんと!」
(やっぱりそうだ、、、花さん、、、とにかく何かに失敗しちゃったんだ。そして、、、色々背負ってる何かがあるんだ。。。確証は持てない。けど、花さんは花さんだ)
「こ、ここでは花さんは、花さんです。
わたしはこの話を聞いたからと言って、何か思い当たることがあろうと、無かろうと、このゲームで出会い、目の前にいる花さんのまんまを見てますから!
上手く言えないですけど、わたしは花さんの味方ですからね!!
話してくれてありがとう!」
そう言ってどこか申し訳なさそうに、にっこり笑う。
その笑顔も、花の心を浄化するものだった。
「サンキューリサ。やっぱり良いやつだな!」
互いに現実でのことをほんの少し話せるようになった。
だが、花たちにはこのゲームの中こそが、本当の自分を出せるところだった。
「これからは、まっさらな気持ちでここにきたら良いですよ!
わたしも待ってます!
チュートリアルじゃあないですが、今までスルーしてたものもたっくさんあるので、また暇があれば、回りましょうね!
うさばらしのついでに!」
「わかった、また色々教えてなリサ!
そう!うさばらしのついでにな!」
そう言って二人は笑い合う。
花の悩みが冗談の範疇に入るほど、心は少しずつ浄化されていった。
人は、価値観が合わないものと過ごすと不幸になる。
逆に、価値観の合うものと過ごすことで幸せになると思う。
それは結婚に限ったものではなく、友情、仲間、接する全ての人に言えることだ。
二人はそう実感するのだった。
第十五話 完
花が手に入れたのは、解決策ではありません。
ただ「否定されない場所」でした。
そしてそれは、ときに人生を続けるために
何よりも必要なものなのかもしれません。
次回、花の「まっさら」は、別の形で試されていきます。




