第十二話 アバター
人は、どこで本当の顔を見せるのだろう。
現実か、仮想か。
第十二話は、「アバター」という仮面を通して、
ユウとリサの距離が少しだけ縮まる回です。
妻側の親戚の集まり。俺は当たり前のように祖父母の相手をしていた。
「これ、食べにくいから食べさせてやって」
普通、実の孫のお前がやることだろうが、なんでお前らが目の前にいて、わざわざ俺に食事介助頼んでくるんだ。
自分の親戚の中に連れてきて、他人をこき使う。
こいつらの頭の中は異常だ。
普通は、アウェイの中に連れてきてるんだから、よう来たね、楽にしといたらええよ、が普通だろ。
「犬や猫じゃあないんやきー!そう使っちゃりなやー!ギャはははー!」
俺は、犬や猫と例えが並べられるのかよ
あまりにこれは侮辱すぎる。冗談の範疇じゃない。
俺は、傷ついた旨を伝えた。
休みの日に重い腰を上げて親戚の輪に飛び込んだと思ったら、こき使われ、嫌なことを言われる。
すると
「うわーーん、おばあちゃんを悪く言うなー」
妻はいきなり泣き出した。
は?何だコイツは。
お前らが悪口言ってきたんだろ。非常識なのは明らかだ。なんで俺が悪い?意味がわからん。
ふと、昔を思い出していた。
いや、考えるのはやめよう。
思い出すと吐きそうだ。
俺は、酒が飲めなくなった。
妻の地元で過ごした数年。親戚たちとの集まり。思い出すだけで吐きそうだ。
親戚が悪いわけじゃない。どこにでも風習はある。そんなことくらい俺もわかる。
ただ、
俺のこと、何にも理解しようとしない妻が根元だ。しんどく無いわけない。
俺は早めに仕事を退職する旨を伝えて地元に帰る決断をした。
正解だった。
あのままいたらおかしくなる。
気遣いのできない妻
そんなのは一緒にいるだけでマイナス。
けど、それがどれほど時間の無駄か、勉強になった。
そう思うことにしよう。
◆
ある日、いつものように狩りをして受付へ。
ほぼ毎日狩るが、2日から3日に一度はリサがいる。
「おつかれさまです!いつもの換金ですね!」
たしかに、ほかの受付譲とは、顔が全然違う。
ほかの受付嬢はもっとこう、ゲーム寄りの見た目だが、リサは自然だ。
「ん?何か顔についてますか?」
「いや、別に、、、ほかの受付嬢とは顔が違うなあと思ってな」
「そうですよ?だって、このゲートはわたしがシフトに入るとき以外はNPCですからね!」
(!?、、、なるほど!)
「花さんも、みた感じ、その、もしかして本人をアバターにしてますか?」
「ん?ああ、もう面倒だったから、前作のまんまほぼ自分だな。あ、髪型と髪色だけ適当に決めたなあ」
「やっぱり、、、面倒だからって言うと思いましたよ。けど、顔がバレる可能性は考えなかったんですか?」
「まあ、普通は理想の見た目にするわな。モテたいやつとかはそうするのかね?知らんけど。
じゃあ、逆に聞くが、リサはなんでその見た目にしたんだ?」
「ん?わたしもほとんどまんま自分だよ?身長だけ少し変えたかなあ」
「は??」
(なんだと??その顔、自分の顔かい!、、、良かった。リサは多分俺のような人生は歩まんだろうな。ほっとしたぜ)
「あ、あのぉ、おかしいですか?花さんも一緒なんですよね?」
俺は笑ってしまった。
「すまんすまん、いや、心配して損したわ!
そんだけ持ってたら大丈夫だ」
「ん??全く意味がわかりませんが??」
リサはポカンとしている。
(花さん、いったい何が言いたいのだろう。何か心配してくれてたのだろうか。わからない、全然自分のこと話さないから、、自己解決してるし、、わたしのことで何か思うことがあるならいってほしいなあ、、そうだ!)
「あ、あの、花さん?もし、今度狩りに来るとき、お時間あったら、少し話しませんか?」
「ああ、そうだな、たしかに話さないといけないな」
(やっぱり何かあるんだ!!わたし、何か失礼なこととか言ったかなあ)
「この前、チュートリアル途中だったよな、ほんとにすまんかった。ぜひ続きを教えてほしい」
「、、、、、、、は、はい。よろこんで」
「リサは本当に親切だな。きっと幸せになるタイプだ」
(そう、これだ!たまに話すこういうのが引っかかるんだ、やっとわかったこのモヤモヤが!)
「では、また今度よろしくお願いしますね!」
(花さんは言葉の端々に何か闇を感じるんだよなあ。って、なんでわたし、そこまで気になってるんだろう。、、、ああ、そうか、わたし、まだ立ち直れてないから、その手の類に敏感なのかも、、、でも、花さんと話すと、不思議と落ち着くんだよなあ。)
花とリサ
素性も知らない二人だからこそ、壁を取り払うことができるのかもしれない。
また一つ、人生は動き出す。
第十二話 完
ここまで読んで頂きありがとうございます。
素性を知らないからこそ、
話せることがある。
ユウとリサは、まだ名前以外何も知りません。
それでも、確かに何かが動き始めました。




