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吸血鬼 半妖精と舌戦す

「…アンネ?」


訝しげにこちらを見つめる半妖精の娘に、思わず自身を罵倒する

妹の夢から目覚めた先に居たのが、妹と瓜二つの女の子


出来すぎている

もしかしたら、”あれ”が私を揶揄う為に仕組んだモニタリングなのかも


(ここは少し鎌をかけてみるか)



「…ごめんなさい、知人と良く似ていたから」


「そうなの?黒髪の半妖精って凄く珍しいけど…」



しまった!

知人と言うのは不味かったか

ここは寝ぼけて意味もない名前を言ってしまった、とでも言えば良かった…

言ってしまったものは仕方がない

このまま続けよう



「ううん、知ってるのは黒髪の人間なの。目覚めて最初に黒髪だったから、つい」


よし!上手く誤魔化せた

これであれば筋は通る

エルフだって人間の知り合いの一人や二人いて当然だろうからね


「エルフなのに、人間の知り合い…か。君、変わってるね!」


(なっ!私、今おかしな事言ったの!?もしかしてエルフと人間は仲が悪い?クソ!この女、完全に遊んでやがる…ここは無理だ、これ以上情報を与える訳にはいかない)



迂闊だった

人間とエルフの関係なんか知ったことか

…いや待て、仮に不仲なら目の前のこの子は半妖精

訳ありなのだろうか?



「そう!良く言われるの、変わったエルフだって…」


「ふーん?」


両手を頬に当てながらニヤニヤこちらを観察する女の子

完全に遊んでいる

頭に来るが、あの博士が裏に居ようとそうで無かろうとここでペラペラ喋るのは得策ではない



「そ、それより貴方の事を聞かせてよ!名前は?」


「…そう言えば名乗ってなかったね、ごめんね?意地悪して」



満足したのか謎の女の子は、姿勢を正し膝に乗せた手を組む

上品で何処か貴族然とした優雅な振る舞いだ



「私はラティナ・ホウジョウ・イエロアニスよ。気軽にラティナって呼んで?」



答えは出た

いや、完璧とは言えないが大分絞れた筈だ


ホウジョウ

即ちあの博士の関係者だろう

姿から見るに歳は人間換算で17から20程度

エルフの成長速度を考えると少なくとも娘ではない

遠い親族か何かと言う事は確定したようなものだ

黒髪くらいしか共通点は無いが…



「じゃあ私から質問ね!君の名前は?」


「そう言えばそうね、名乗ってなかった……名前は…」



なんだっけ?

確か施設にいた時は番号で呼ばれていた

しかし、あれの玩具にされて以降記憶が薄れ番号すら思い出せない

たしか、腕に番号があった筈


腕に手を伸ばした瞬間、柔らかい手が私の手を止める



「ヒッ!」



─さっさと股を開くんですねぇ!ちゃんと洗ってきたか確認するんですねぇ!─



刹那、あの悍ましい記憶がフラッシュバックする

背中が冷や汗で 凄まじい勢いで蒸れる

額からも脂汗が吐き出し 唇がガチガチと震え始めた



「や、やめて!怖い!怖い!」



勢いよく手を振り払い、毛布を被って蹲る



「ご、ごめんなさい!無闇に触っちゃって…」


「来ないで!もう、もう汚さないで!あんたホウジョウ博士の関係者でしょ!?あれだけ私を犯してまだ足りないの!?アンタ見てたんでしょ!私がアイツに汚されるのも!部屋で仲間たちに何されたのかも!」



「……………」



バカか、私は

さっきまでの舌戦は何だったのか

相手に全て話してしまった

仮にこの子が本当に赤の他人だったらどうするのだ


もし、泣きじゃくる私を嘲笑うつもりだったのなら完全にしてやられた

曲がりなりにも安堵していた


初めて出迎えてくれたのが女の子

それも妹そっくりの

もしかしたら、この記憶もアイツがこの時の為に仕組んだものなのかも



「ねぇ…」



優しい香水の香りが近づいてくる

その吐息がどんどん私の方に


怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い



「嫌なら殴り飛ばして?」



彼女が震える我が手をそっと掴み、何かに押し当てる



「……?」



柔らかい弾力が手に食い込む

ゆっくりその手を揉んでいくと次第にコリコリした突起物に気付く



「辛かったね…苦しかったね…」



やめろ



「ごめんね、こんな事しか言えない」



やめろ


やめろやめろやめろやめろやめろ!!!



「でも安心して、何もしない…ってもうしてるのに変か!……ごめん、そんな雰囲気じゃないよね」



謝らないで

貴方は何も悪く無い

さっきからずっと謝ってばかりで、何なんだよお前



「その、ほら!私は一応女だからさ…根っからの男好き!チンチン大好き!…くそっ、じゃなくバイセクシャル…あぁもう!」



……プッ!

なんで慰めてる側が混乱してんだよ

てか、バイセクシャル?

レズかよ

結局 色目で助けたのか…


…最低ね、私

せっかく励ましてくれた女の子を



「もう分からん!来い!」



突如身体が持ち上げられる

凄い力だ


でも 怖く無い

柔らかくて

暖かくて

凄く優しい


顔いっぱいにラティナの胸を押しつけらる


とっても息苦しい



「もう、大丈夫だよ」





あぁ もう もういいや


どうでも良い


ただ


すっごく 柔らかい




私の中で何かが氷解していくのを確かに感じた

この子になら 話せる

もう安心して いいんだ

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