吸血鬼
朝だ
今日もこの時が来てしまった
一体 どれ程の歳月が経ったのだろうか
いや 実際は大した時間ではないだろう
残念な事に 未だ私の心は壊れていない
濡れた枕と頬にこびり付く涙痕がその証明
─おはようございますねえ!早速寝室に来るんですねぇ!─
あぁ まただ
この瞬間だけはいつも胸が熱くなる
あれの専用玩具になって以降
多少だがまともな設備を与えられるようになった
ファッション雑誌、漫画、映画、小説
最近のお気に入りはサスペンスドラマだろうか
美しい世界は 今の私には眩しすぎる
ベッドの横に乱列する本を撫で
いつものシャワールームへと向かう
部屋には最初 美しい女優のポスターや動物など
様々な展示物があった あれが私の為に用意したのだろう
だが私はそれを引きちぎり 全て捨て去った
残ったのは 最低限の娯楽品と洋服だけ
女性に変えられて
趣向から言葉遣いまで変わってしまった
意識した訳ではない
心が勝手に身体に引き摺られるとでも言えば良いか
なんとも気味の悪い話だ
せめて
そう一度でいいから日の光を浴びたい
◇
身を清め 白いローブに身を包み彼の元へゆく
シャワーを浴びるのが嫌いだ
どれだけ洗ってもこびり付いた腐敗臭が取れない
どうせ洗っても汚されるのだ
幸いエルフという種族の特性なのか
そこまでキツい体臭は発生しないらしい
それでも、恥部を始めとした身体のゴミ溜めからはどうしたって臭いが出る
シャワーの後に渡されたクリームを
肌に念入りに塗ってぬき そっとローブに袖を通す
そしてまた あの悍ましい部屋へと向かうのだ
◇
「…うっ……うっ…ん…」
終わった!
今日も仕事は完了だ!
これから部屋に帰ってビールでも飲もう!
コレにねだってラーメンでも頼もうかな!
兎に角よく頑張った私!
今日も綺麗!
なーんて、自分を励ましてみたりして
「あぁ…気持ちよかった…今、抜きますヨォ?」
……ヌポッ
ようやく、私の身体から汚い肉棒が別れを告げる
終わった後はいつも むず痒い
尿意と火照りで身体が熱い
本来は快感なんだろうな
気持ちいいと思えば気持ちいいのかも
頑張ってコレの顔をイケメンに…アハハ!
……無理だよ
イケメンがこんなにダルダルの贅肉垂れ下げてる訳ないじゃん
うっわ 垂れて来たし
今日の量…1日でどんだけ貯めてたんだよ
昔の私は……ダメだ考えちゃダメ
自分がコイツと同類な訳がない
そうだ 生まれた時から私は女だった
そうだ そう思え そう思わせろ!
「…ウッ……フッ………ウンッ…」
「ほら、お掃除…って感じじゃないですねぇ。まぁ良いです、しっかし妙だ。これだけ抱いてるのに全く妊娠しない…人間とエルフは交配可能なのですが」
抱きつくな!
耳を噛むな!
終わった後でベタベタするな!
早く帰らせてよ…
早く部屋で泣かせてよ…
「…やだ」
「はい?」
あれ?
何、言っちゃってるの?私
「もうやだよ!ホンッ……ウッ…とに、嫌なの!!やだああああ!!!」
あぁ、ダメだ
無理だ 何も考えられない
嫌だ!だって フフフ…何言ってんの?
コイツをもっと喜ばせるだけじゃん
笑って嘲笑えよ
さっきから何を泣いてんだよ
「おやおや、まるで本物の小娘ですねぇ?お前は男でしょう?ケツ掘られてるのと大して変わらないと思いますが…」
「女!…ヒック……おんな!!!」
「分からず屋ですねぇ、しょうがない。ほら腰突き上げて?」
へ?
「無意味なのでやりたく無いですが、お仕置きです。ケツに挿れれば嫌でも自分が何なのか分かるでしょう?」
ヤダ
「ん?なんだ…ツメ、いや……キバ?」
ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ
「な、なんだこれは!クッ、緊急自爆装置起動!」
やめろ!
これ以上汚すな!!!!
汚すなぁああああああ!!!!!!
「な!まさか吸血…アガアアア!!!!よせ!やめて、悪かった!ごめん!ごめんんんんん!!!!」
許すかバカ!!
許さない!!!!
絶対に 絶対に! 絶対に許さない!!!!
うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!