そして俺は エルフになった
おはようございます皆の衆!
今日もバンッバン子作りして貰いますよぉ!?
それが、俺の最初の記憶だった
白い壁と白い寝室
壁に掛けられた鏡に映る自分で色を知る
それが俺に与えられた世界だった
一日に三回決められた時間に食事を提供される
真っ白な謎の液体
勿論 如何わしいものでは無い
味は少々の酸味と甘味があり
不思議と 毎日食べていても飽きなかった
俺には記憶があった
山奥の小さな崖の村 そこで妹と二人で暮らしていた
近場に海岸の街があり 週に一度買い出しに向かう
道中に出会う魔物には とても悩まされたものだ
街についたら、肌の黒い魚屋の店主がニシンの塩漬けを用意してくれる
育ち盛りだからといい いつもオマケしてくれた
正直いうとニシンの塩漬けは臭いがキツくて苦手だった
そして帰った先で出迎えてくれるのは
美しい艶やかな髪をした小柄な妹
体格の割に豊かな胸を持ち 街の男子からとてもモテた
その度に胸が締め付けられ 妹を守る為にやんちゃをしたものだ
これが 俺の記憶
創造主から与えられた
偽りの思い出
理解している
俺は生まれてからずっとここにいる
目が覚めた時 妹を案じ大いに叫んだものだ
しかし 程なく理解した
この記憶は 希望を与え
決して自ら命を絶たないように
創造主から与えられたものなのだと
◇
「……アァッ!!!」
「ほらほら、いきんで母体No.114!これが終われば豚カツよぉ!!」
「ヒッフ…!とんッカチュ!…ヒッフ!……っあああ!!!」
ブブッ……ベリベリベリベリィィ!!!!
「お!元気な…ってゴルァ!!なにウンコ漏らしとんじゃクソ女ぁ!……クソだけに…ブフッ!」
「ごめんなさいぃぃぃい!!!」
真っ白な大聖堂に広がる異様な光景
几帳面に並べられた白いベッドに寝転び、腹を膨らませた白髪の女性達が今日も今日とて出産に励む
美しい純白の神殿で、美しい娘達が赤子と糞尿を撒き散らす
彼女達を横目に部屋の隅を歩くのは
この施設を支える屈強な種達
同じ6期生の眷属達だ
「おい634、今のうんこ漏らした子見ただろ?アレ俺が半年前に孕ませた女なんだぜ?俺とやった時もマン屁が酷くて最悪だったんだ…」
「606、お前最初はスカトロ厨だったよな?」
「いつの話だよぉ…それは、俺が新品だった時代!実際は臭くて堪らない…一日に何人相手すると思ってるんですかなぁ?そうだろ514!」
「……黙れ」
「あん?」
「黙れと言ってる」
コイツらも最初から下卑た男達ではなかった
最初はいきなり真っ白な世界に放り込まれ、集団で拉致された同志だと思っていた
かつては植え付けられた記憶を語り合い
いずれ、ここを抜け出す事を夢に見ていた
だが、一人二人と女性を抱くにつれ
彼らは変わっていった
娼婦、売女、奴隷
次第にはただ子を孕むだけの袋のように扱うようになった
変わったのは彼らだけじゃ無い
女もまた数週間のうちに恥じらいを失い
強制された行為に誰も反発しなくなった
挙句 早く孕みたいと強請るほどだ
俺だけだろう
こんな状況に適応しきれない存在は
「やめろやめろ106、そいつは昔からノリが悪いんだ。未だに女の子を女だと思ってる、女は穴のオマケだと何度言っても聞きやしない」
「…女の子は、子を産む為の生き物じゃ無い」
「は!シラけるなー、ここでは子を産むだけの肉便器なの!マンコが本体なんだよ!」
「…ッ!!」
「お?なんだやるの──ウギャアアア!!」
突如全身に電流が走る
血管が震え 全身の毛穴が開くのを感じた
─ほらほら!友達はしっかり労りなさい!仲良くよ?─
「グッ…」
「慈母神!だってコイツが…ギャアアア!!」
脳内を撫でるように入り込つ
この施設の統括 ホウジョウ博士の声
─眷属No.614!貴方、最近不能気味だからって同志に当たるんじゃありません!この前バイアグラをあげたでしょう!?─
「ブッ!不能て……ブ……ブファハハハ!やめてマザー!ダメだ腹がイカレる!」
「…それは…ブッ…その、大変だな514?……ブフッ!す、すまん……ッハハハ!!!」
アンネ 俺が間違っているのかな?
女の子を大切にしちゃいけないのかな?
会いたい お前に会いたい…
兄さん もう限界なんだ
─眷属No.614?これは貴方だけなの通信です。今から個別面談を行うので、私の寝室に来なさい─
◇
「眷属No.614!最近キミは不能気味ですねぇ!じゃなきゃ拘束椅子に縛りつけますからねぇ?」
長い黒髪と一見仕立ての良い白服
しかし、髪の毛についた埃と
服から発せられる皮脂の臭いが彼の本質を如実に語る
ホウジョウ博士
このニグルアルブム収容所の所長にして創造主
先程の慈母神その人だ
「何度も仰らなくて良いです。申し訳ありませんでした。もう、よろしいですか?」
時間の無駄だ
ホウジョウ博士に倫理観はない
だからこそこんな悍ましい実験が出来るのだろうが
踵を返し壁に同化した扉に手を当てる
刹那、途轍もない圧力が左手を襲った
「待ちますねぇ!」
圧力の正体はホウジョウ博士の手だ
グイグイと物凄い力で引っ張られ 僅かに恐怖する
男に生まれて良かった
もし女性だったら
この恐怖はどれ程のものだっただろうか
ホウジョウ博士は勢いのまま
腕ごと俺をベッドに放り投げ
下卑た表情で跨ってきた
ギシりとベッドが軋み
ジュルリと舌なめずりをしながら博士が語る
「君は女の子を抱く時にイチイチ前戯はするし、病んだ女の相談に乗ったりしてますねぇー?おかげで君だけいつもノルマ未達成!ハッキリ言ってこの施設の害悪なんですねぇ!」
「だったら何だ、俺を犯すのか?別に構わないぞ?幸いどれだけ辱めを受けようと、子を孕む心配は無いからな」
「……誰が孕めないと決めたんですかねぇ?」
ブスッ!
突如、左首に凄まじい熱が走る
ジワジワとその熱は広がっていき
全身のむず痒さと 凄まじい尿意に襲われる
「…ッアアア、ウッ!な…なんだ!?なに、を…」
身体から力が抜けていく
不快な快感と 脱力感
それに反比例して どんどん視界が開け
聴力が異常なほど発達していくのを感じる
「エルフリーデのサンプルを元に開発した、女神の血。実験段階だが丁度いいサンプルになってくれて感謝ですねぇ!」
「アガガガガ!!」
身体がどんどん 豆腐のように柔らかくなっていく
突如背中にむず痒さを覚えた所で
身体の自由を取り戻す
「…フフフ、フハァァァァァハハハ!!!!実験は成功ですねぇ!これで神官長共に小生の正しさを表明できる!人間のエルフ化!しかも、男根を取り除き女性器に変えることも出来るとは!」
「え?…え?…エルフ…え?」
突然、訳のわからない事を言い出すホウジョウ博士
視線を下ろした先 真っ先に目に入ったのは
毛の一切を認めない美しい太腿
ささくれた自分の足とはまるで違う
美しく しっとりしたシルクのような素足
腹に跨り高笑いするホウジョウ博士を他所に
恐る恐る感覚を 下半身に集中する
無い
今日まで生涯を共にした男の象徴が、ない
これから起こりうる蛮行にゾッとし
思わず手を股に当て 弄る
「…アッ…ハウッ!」
刹那、電流のような物が股から全身に伝わる
帰って来たのは 僅かな快感という名の絶望
上に跨る大男の吐息を肌で感じる
怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「おや?早速オナニーですかなぁ?おませさんですねぇ!少し待たれよ、ほら鏡」
ホウジョウ博士が懐から出した手鏡に写ったのは、左右で異なる 真紅の瞳と純銀の瞳
そして 人の倍程に尖った耳を持つ絶世の美女
エルフの姿だった
「…待ッ!待って!!」
全身に冷や汗が走る
気がつけばホウジョウ博士は上半身裸となり
下半身に手をつけ始めていた
「ん?何を待つんですかな?…あぁ、これからやる事は女体化エルフが子を孕めるか確認するんですねぇ!つまりは、セックス!」
「い、嫌だ!頑張って子作りするから!女の子といっぱいセックスするから!それだけは、それだけはやめて!」
「…は?」
か細い息をねっとりと湿った唇が封じる
同時に股にゴツゴツした冷たい指が忍び込み
弄ばれる
拒絶できない不快な虫が股で踊り
尋常では無いこそばゆさと尿意に襲われる
必死に全身を震わせ抵抗するが
まるで大陸に縛りつけられたように身動きが取れない
「───ッンー!!──ッンー!!!!」
「プハァ!快感!ひとまず上は100点満点ですねぇ!」
口の中に生臭いタバコの臭いが残る
肌に無性髭の感触が未だ燻り
下半身を容赦なく弄る博士の手
やめて、痛い、怖い、恥ずかしい、出ちゃう
「ほーら、これなーんだ」
博士の手には
ニュルニュルと糸を引く本能の証
「…やめてよ」
涙が溢れたくる
何故こんな酷い事をするのか
確かに反抗的だったことは認める
でも、あんまりじゃないか
生まれた時から子を作る事を強制され
ほんの僅かでも
人間らしくあろうとしただけなのに
「有り得ませんねぇ、今まで散々女の子を抱いて、いざ自分になったらゴメン被る。通らないでしょう?幾ら何でも」
そうだ
その通りだ
今まで数え切れない程の女性を抱き
孕ませて来た
こんなに怖かったのか
こんなに臭かったのか
こんなに気持ち悪かったのか
ごめんなさい、本当にごめんなさい
「さてと、ちょっと早いけどメインディッシュですねぇ!大丈夫ですぞぉ!優しくしますから…!」