第77話 昼・サウナと化した部屋
午前中。作業開始。
私たちは、まず土台となる島の地形データを作成した。ケンタくんの精密なレーザーデータと、私のドローン写真。それらから作り上げた地形モデル。
画面を見る。
「すごい……」
それだけでも一つの作品のようだった。マウスでぐるぐる回す。島の形。全部見える。
「すごい……これが土台……ここに建物を配置していくんだ!」
ボトル子に見せる。
「ねえボトル子、見て。すごいでしょ。これが土台。ここからが本番!」
ボトル子は笑ってる。今日は、楽しそうに見える。
処理が始まる。プログレスバー。1%。
「1%……遅い……」
待つ。2%。3%。
「遅い……暇だ……」
暇だから、鼻歌を歌ってみる。アイドルの歌。よく知ってるやつ。
「らんらんら〜ん♪ 恋する気持ち〜♪」
歌いながら、軽く振り付けも真似てみる。手を振って、ターン。
「きゃは☆」
グンちゃんが見てる。
「にゃあ?」
「グンちゃん、どう?可愛い?」
「にゃあ」
「変だよね……でも、暇なんだもん」
処理が進む。10%。
「10%……もう少しだ」
お昼になった。お腹がすいた。でも、時間がない。
タッチパネルでカップ麺注文。しょうゆ味。
お湯を注いで3分。待てない。時間がもったいない。データを確認しながら待つ。
ピピピ。できた。蓋を開けて、5分でかき込む。ずるずる。
「戦闘食はカップ麺に限る!早く食べて、午後の戦いに備えないと!」
味はよく分からない。でも食べる。急ぐ。
グンちゃんが見てる。
「にゃあ?」
「グンちゃん、ごめんね。今日は急いでるの」
「にゃあ」
「ありがとう」
食べ終わった。午後の作業。
その土台の上に、建物のモデルを一つずつ配置していく作業に取り掛かった。
30号棟。ドラッグして配置。次。病院。ドラッグ。配置。次々と。
学校、神社、プール。全部配置していく。
「よし、次は31号棟。それから48号棟、51号棟も……」
PC4台をフル稼働させる。CPUも、GPUも、メモリも、すべてが限界まで使われている。
ファンの音がすごい。ブーーーン。
「すごい音……うるさい!」
部屋が暑くなってきた。PCが発する熱気。すごい。
部屋は、PCが発する熱気で、あっという間にサウナ状態になった。
「サウナ……完全にサウナ!」
じっと座っているだけで、汗が噴き出してくる。顔を拭う。
「あつ……溶ける……私、溶ける!」
アイドルの衣装が汗でびっしょり。
「びっしょり……気持ち悪い……でも、作業を続けないと!」
私は、うちわ代わりにしていたマニュアル本を手に取った。扇ぐ。パタパタ。
必死にPCと自分を扇いだ。
「暑い!暑い!なんでこんなに暑いの!」
窓の向こうを見る。ケンタくんも、同じように、Tシャツをパタパタさせているのが見えた。
「ケンタくんも……暑いんだ……同じだ。一緒に戦ってる」
少し、元気が出た。
作業を続ける。配置。また配置。次々と。建物が並んでいく。
画面を見る。島ができていく。
「すごい……島ができていく……ちゃんと軍艦島の形になってる!」
感動する。立ち上がって、マニュアル本を振る。
「ファイト!オー!私!頑張れ!」
アイドルっぽく。
グンちゃんが見てる。
「にゃあ」
「グンちゃん、応援してね」
「にゃあ」
でも、暑い。灼熱地獄。
「灼熱地獄……でも、負けない!」
私たちは、灼熱地獄の中で、黙々と作業を続けた。汗を拭う。また扇ぐ。また作業。繰り返す。
グンちゃんがメモを運んできた。1回目。
「にゃあ!」
「グンちゃん、ありがとう」
読む。
『65号棟、配置完了』
「完了!すごい!」
返事を書く。
『こっちも30号棟完了!』
グンちゃんに託す。
「お願い、グンちゃん」
「にゃあ」
また戻ってくる。2回目。
「にゃあ!」
「グンちゃん、お疲れ様」
読む。
『次は病院だ』
「了解!」
返事を書く。
『こっちは学校!』
グンちゃんに託す。
「お願い」
「にゃあ」
また戻ってくる。3回目。
グンちゃんが、私たちの間を何度も往復する。
「にゃあ!」
「グンちゃん、ありがとう」
また。
「にゃあ!」
「お疲れ様」
グンちゃんの首輪が、メモで少し重くなってる。
「グンちゃん……大丈夫?」
「にゃあ」
「ありがとう……」
ボトル子に愚痴る。
「ねえボトル子、暑い……暑すぎる……でも、頑張る。あと少しだもん」
ボトル子は笑ってる。今日は、心配そうに見える。
グンちゃんも暑そう。
「にゃあ……」
「グンちゃんも暑いよね。ごめんね」
「にゃあ」
作業を続ける。暑い。でも、やる。
今日も、一人じゃなかった。そして、灼熱地獄の中で、ケンタくんと一緒に戦ってる。
それが、力になる。
「一緒に戦ってる……それが力になる!」




