第76話 朝・アイドル衣装と最終決戦
二十六日目の朝。
残り五日。
「残り……五日しかない……」
体は疲れてる。限界に近いかもしれない。肩が重くて、首が痛くて、目の奥がずっしりと重い。
でも、やる気だけは満ちてる。燃えてる。
二十六日間の戦いが、今日、最終決戦を迎える。
LAUNDRYボックスを開ける。ドキドキする。心臓が早く打ってる。
今日の衣装は、チェック柄の、アイドルみたいなステージ衣装だった。
「アイドル……?まさかの?」
手に取る。フリルのついたスカート。めっちゃフリル。
「チェックの柄は可愛いけど……このフリルの量はやりすぎでしょ!誰が着るの!?」
でも、着る。もう何着ても驚かない。
私は、半ばヤケクソでそれに着替えた。
「もう……何でもいい……何着ても同じ!」
鏡を見る。アイドル。違和感しかない。
「違和感の塊……でも、もういいや」
でも、せっかくだから。鏡の前でポーズを取ってみる。
ピースサイン。ウィンク。
「きゃぴ☆」
「……って、何やってるんだ私……」
一人でツッコむ。でも、ちょっと楽しい。少しだけ、緊張がほぐれた気がする。
グンちゃんが見てる。
「にゃあ?」
「どう?似合う?アイドルっぽい?」
「にゃあ」
「やっぱり変だよね。私もそう思う」
朝食のタッチパネルを開く。カップ麺。塩味。
「決戦の朝はカップ麺!気合が入る!」
ウィーン。出てきた。カップ麺の匂い。温かい匂。
冷たかった部屋が、今日は違う。PCが発する熱で、すでに温かい。
一人で言う。誰も聞いてないけど、気合を入れる。
お湯を注いで3分待つ。ピピピ。できた。
蓋を開けてずるずるすする。塩味。シンプルで美味しい。
「美味しい……戦闘食には最適!」
もぐもぐ食べる。グンちゃんにも少しあげる。
「はい、グンちゃん」
「にゃあ」
ボトル子に話しかける。
「ねえボトル子、今日が決戦だよ。残り5日。頑張らないと」
ボトル子は笑ってる。いつも笑ってる。今日は、力強く笑ってる気がする。まるで、私を応援してくれてるみたいに。
窓の外を見る。ケンタくんが、すでに何か作業を始めていた。
「早い……もう始めてる……私も頑張らないと!」
グンちゃんが、メモを運んできた。
「にゃあ!」
「グンちゃん!メモ?」
駆け寄る。首輪を見る。メモがついてる。外して開く。読む。
たった一言、こう書かれていた。
『始めよう。全データの統合を』
「……!」
目を見開く。全データの統合。ついに、この時が来た。
「ついに来た……!」
これまでバラバラに作ってきた、何十もの建物の3Dモデル。それを、一つの巨大な軍艦島のモデルに統合する。
最終作業。想像するだけで、気が遠くなる。でも、やる。やるしかない!
「やる!絶対やる!」
私は、アイドルの衣装のスカートを翻した。フリルがふわっと揺れる。
そして、マニュアル本を両手に持って、ポンポンみたいに振る。
「ファイト!オー!」
気合を入れる。返事を書く。力強く。
『応!』
「応!って書いたよ!かっこいいでしょ!」
グンちゃんに託す。
「お願い、グンちゃん。届けてくれる?」
「にゃあ」
「ありがとう」
グンちゃんが出発した。
ボトル子に宣言する。
「ねえボトル子、始まるよ。最後の戦い。頑張る。絶対完成させる」
ボトル子は笑ってる。今日は、燃えてる気がする。
グンちゃんに話しかける。
「グンちゃん、応援してね」
「にゃあ」
「ありがとう」
最後の戦いが、今、始まる。
PCを起動する。データを開く。
これまで作ってきた建物。全部ある。30号棟、病院、学校、神社、プール。全部。
「これを……統合する……一つに……」
今日も、一人じゃなかった。そして、最後の戦いが始まった。ケンタくんと、一緒に。




