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虚栄の権威//テロ

……………………


 ──虚栄の権威//テロ



「あんたをこれから護衛(エスコート)することになるが、ここから出る用事などはあるか? あるなら暫くはキャンセルしろ。あんたの命のためだ」


「もちろんだ。既に行事はいくつもキャンセルしている」


 これは確かに護衛(エスコート)を効率的に行うためのものでもあるのですが、それだけではありません。


 テロのターゲットはTMC自治政府であり、田中長官ひとりに限ったことではないのです。だから、TMC自治政府の庁舎から離れてもらわない方が、戦力が集中できるというわけなのです。


「TMC自治政府ってどんなことをしているんですか?」


「当然、自治政府としてすべきことをだよ。この街の財政を行い、災害や戦争に備え、市民の幸福のために私は仕事をしている」


「はあ」


 そう言ってもそれを実際に行っているのは大井じゃなかろうかという気持ちが残る。


「私はこの東アジア最大の都市であるTMCのトップであり、要人(VIP)だ。それに相応しい護衛(エスコート)を行いたまえ」


「はいはい」


 何だかこれまで護衛(エスコート)した人の中でもかなり偉そうな態度の人です。


 私たちは執務室に居座りながら、田中長官の様子を眺める。先ほどから仕事をしているのかよく分からないが、端末をいじっている。それだけだ。


 綺麗なオフィスなのだが、どこか空虚な感じもします。


「リーパー。一体どれくらい私たちはこうしていればいいんでしょうね?」


「そろそろだ」


「え?」


「そろそろ起きるぞ。どうやら当たりだったようだ」


 リーパーがそういう中、私が戸惑うと────。


 突然ずうんと建物が揺れた!


「テ、テロか!?」


「どんぴしゃり。襲撃だ」


 うろたえる田中長官と余裕の態度のリーパー。


「どう動きます?」


「さて、どうしたものか。恐らくは敵は1階から突っ込んできている。そして、現在TMC自治政府庁舎周辺は飛行禁止になっており、地対空ミサイル(SAM)と無人戦闘機が防衛している」


「となると、1階の防衛に当たれば自治政府もそこでビビってる長官も守れる」


 私はリーパーの言葉にそう結論した。


「ま、待て! お前たちの仕事(ビズ)は私を護衛(エスコート)することだ! 他の連中はどうでもいいだろうが!」


「あいにくだが、TMC自治政府を守るのが俺たちの仕事だ。あんたも含めるが、あんた以外も含まれるんだよ」


「何を────」


 リーパーは喚く田中長官を無視して、執務室を出る。


「派手に暴れようぜ、ツムギ」


「ほどほどにしておきます」


 私たちはまだ機能しているエレベーターで1階を目指した。


 1階に到着するとすぐに銃声が聞こえてきました。どうやら既に1階は戦場と化しているようです……!


 私たちがエレベーターを出ればTMC自治政府庁舎エントランスは吹き飛ばされており、そこから無数の武装した集団が押し寄せてきています! 強化外骨格(エグゾ)を装備し、電磁ライフルで武装した集団だ!


「どうにも妙な感じだな。整った動きだが、どこか人間味を感じない」


「まさか」


 リーパーがその集団を見て言うのに、私はテレパシーで周囲の思考を読む。


『──……殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ……──』


 やはりです。流れているテレパシーは以前に盗み聞きしたものと同じ。テレパシーによって意志なき兵士を操るものです…………!


「間違いありません。こいつらもテレパシー兵です!」


「どこかにこいつらを制御している人間がいるわけか」


 テレパシー兵は大井統合安全保障の警備からTMC自治政府の一般職員、それからただたまたまこの日ここを訪れていたビジターに至るまで、あらゆる人間を電磁ライフルで銃撃して虐殺を繰り広げている。


「ツムギ。お前はテレパシーで操っている人間を探せ。俺はこいつらをぶち殺す」


「了解です」


 リーパーにそう言われて私は索敵を開始。


 リーパーは同時にテレパシー兵との交戦状態に突入した。


「さあ、遊ぼうぜ、リモコンソルジャーども」


 まずは最初の獲物をリーパーが“鬼喰らい”で一閃。テレパシー兵の首が飛び、他のテレパシー兵たちが一斉にリーパーを照準する。


「かかってこいよ。そうでなければ面白くない」


 リーパーには未来が見えている。だから、彼に攻撃は当たらない。


 全ての攻撃を回避し、リーパーはテレパシー兵たちに肉薄しては斬り伏せていく。まるで映画の剣豪のような動きで彼は動き、映画のように一方的に相手を殺す。


 彼が自分を主人公だと思っているのも納得です。


 ですが、テレパシー兵は次々に押し寄せており、このままではリーパーが無事でもTMC自治政府の方に被害が出てしまいますよ!


 だから一刻も早くテレパシー兵を操っている人間を探しださないと……!


「前のように制御を引き剥がしましょうか……? いや、あれは負担が大きい……」


 この攻撃で終わりだという保証もないのに、ここでバテるわけにはいきません。


「どこから…………」


 私がテレパシーで探り続けると、濃い憎悪の感情を見つけ出した。テレパシー兵に憎悪をまき散らしてる源とみて間違いありません!


「リーパー! 位置を特定しました! 雑魚は私に任せて、行ってください!」


「オーケー。任せておけ」


 リーパーは私がAR上で示した地点に駆け、私はリーパーによって半壊状態のテレパシー兵を掃討しながらリーパーのあとを追う。


 テレパシー兵はまだ現れるが、既にエントランスの外に押し出されている。


 私とリーパーは戦線を押し上げながら、前進を続け、そして────。


「あの車両の中です! 間違いありません!」


 私は見慣れぬ装甲バンがTMC自治庁舎近くに停車しているのを見つけて叫ぶ。しかも、その装甲バンにはテレパシー兵が護衛をするようについている。


「さて、どんなやつが操っているのやら」


 リーパーは装甲バンの方にゆっくりと近づき、護衛らしきテレパシー兵がリーパーを射撃するが、電磁ライフルのその射撃をリーパーはいとも簡単に弾く。


「邪魔だ」


 そして、リーパーは護衛を排除し、装甲バンの扉に手をかけた。


 ガンとリーパーが扉を開くと、そこには────。


「何だ、これは」


 バンの中に運び込まれたストレッチャーのようなベッドに横たわり、生気のない瞳をした少女がいた。その少女の頭は部分的に髪の毛が剃られていて、そこには電極のようなものが植え込まれている……。


「これは一体……」


「ふうん。テレパシー兵の操作に特化したってところか? 前みたいにいろいろと能力を使ってくるんじゃないかと期待したのにな。がっかりだ」


 リーパーはそう言って“鬼喰らい”を掲げるとざんと少女の首を切断。


 テレパシー兵は一斉に制御を失い、停止した。


「彼女もΩ-5の被験者だったのでしょうか……」


「さあな。ジェーン・ドウには報告しておく。あと、まだ終わってないぞ」


「え?」


 リーパーがそういう中で空で突然爆発が生じた。


「自爆ドローンを強引に突っ込ませようとしているらしい。TMC自治政府を防衛している地対空ミサイル(SAM)と無人戦闘機の対応は飽和しつつある。田中のところに戻るぞ、ツムギ」


「了解です!」


 そして、私たちは再びエレベーターに乗り、田中長官の執務室を目指した。


……………………

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非道い。
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