ワイルドファイア//ゾンビパニック
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──ワイルドファイア//ゾンビパニック
解き放たれようとしている何か。
このことは警告しなければ!
「リーパー、ミノカサゴさん。敵は何か生物化学兵器を使うつもりのようです! 警戒してください!」
私はテレパシーでそう連絡。
「じゅ、準備はできたが……」
「なら、一緒に来てください。変な真似はしないように」
「わ、分かっている」
黒沢さんはベルセルク・ウィルスの持ち出し準備を整え、私は黒沢さんとベルセルク・ウィルスとともにリーパーたちとの合流を目指す。
「ちびっ子! ベルセルク・ウィルスは!?」
「確保できました! ばっちりです!」
「なら、とんずらだが、さっきどうやって私に連絡した?」
ミノカサゴさんは私がテレパシーで警告したことを疑問に思っているようだ。彼女は私がテレパシーを使えることを知っていない。
「テレパシーですよ。さあ、リーパーと合流しましょう!」
「テレパシー、ねえ」
ミノカサゴさんは納得していない様子で私とともにリーパーとの合流を目指す。
ミノカサゴさんがハチの巣にした死体の山を越えて、私たちは研究所の廊下を走る。リーパーは今もパトリオットの相手をしているらしく、銃声と悲鳴、怒号が繰り返し廊下に響いていた。
『──……例の実験体を試す。侵入者にぶつけるんだ……──』
『──……しかし、それではパトリオットを巻き込む可能性も……──』
『──……パトリオットなんてチンピラがどうなろうと知ったことか……──』
私たちがそうしている間にも何かが解き放たれようとしている。
「不味い状況ですよ。敵は味方を巻き込むようなものを使うつもりです!」
「ああ、クソ。最悪の仕事だ!」
私が叫ぶのにミノカサゴさんも悪態をつく。
「さっさとあのサイバーサムライの兄ちゃんと合流してとんずらしないと……!」
ミノカサゴさんは戦場音楽が奏でられている方向に走る。
そして、まさに戦場になっている廊下に到達すると────。
「お? お土産は確保できたのか、ツムギ?」
ちょうどパトリオットの最後のコントラクターが倒れ、リーパーが廊下を制圧したところであった。
「ええ。できましたよ。それよりリーパー! さっき警告した通り不味いことは起きそうです!」
「不味いこと、ね。ゾンビでも溢れてくるのかね」
「そんな面白くもない冗談言ってる場合じゃないですよ。さっさと逃げましょう!」
私たちがまさにそんな話をしていたときだ。
無数の何かがここに迫ってくるのを感じました!
「何が……!?」
「クソ。不味いぞ。そのサイバーサムライの兄ちゃんが言っているのは冗談じゃなかった。マジでゾンビみたいなのがこっちに押し寄せている!」
無人警備システムの映像を見ていたミノカサゴさんがそう叫び、私たちは無数の足音がこちらに向かって来ていることを察知した。
「ほう。こいつは……」
リーパーが興味深そうに見るのは、上半身裸の人間たちだ。
しかし、彼らのその獰猛で暴力的な雰囲気からは理性はかけらも感じられず、彼らは私たちの方に押し寄せてくる!
「ゾ、ゾンビだ!」
「こういうシチュエーションは憧れてたぜ」
私たちの中ではリーパーだけが笑顔を浮かべ、“鬼喰らい”を構える。
「噛まれないでくださいね、リーパー! もし、あれがベルセルク・ウィルスのそれだとすれば、噛まれると感染してしまいます!」
「安心しろ。ノーダメージクリアしてやるよ。レッツゾンビアポカリプス!」
リーパーは自信満々にそう言い、ゾンビに向けて迎え撃つ。
「ああ。クソ。ここを突破しないと脱出できないね!」
ミノカサゴさんも援護するように電磁フレシェット弾を放つ。装甲などはないゾンビはあっさりと電磁フレシェット弾でミンチされた。
しかし────。
「再生している……!?」
そうなのです! リーパーに斬られたり、ミノカサゴさんに撃たれたゾンビは傷口を再生させながらリーパーたちに襲い掛かっているのです!
「ほう。こういうときはここが弱点だろう?」
リーパーはそう言うと“鬼喰らい”でゾンビの首を刎ね飛ばす。流石に首を刎ね飛ばされたゾンビは再生することも、動くこともなかった。
「ミノカサゴさん! 頭を狙ってください!」
「分かった!」
私も周囲にある金属片などでゾンビの首を刎ね、頭を破壊する。それによってゾンビたちは僅かに食い止められてきたが……。
「さらに新手だ! クソ、弾薬が不味いぞ……!」
私たちのいる廊下に向けて無数のゾンビが押し寄せ、だんだんとさばききれなくなってきました。不味いです、不味いですよ!
「ははっ! こいつは凄いラッシュだな! 楽しいぞ!」
この状況で愉快なのはリーパーだけです!
ここは私がどうにかしなければ……!
そこで私はあることを思いついた。
前にやったように思考に深く入り込み、相手を操作する方法だ。
もしかしたらワンチャン、ゾンビにも通じないだろうか?
「試してみよう…………!」
私はゾンビたちの思考に入り込むことを試み──。
「おや?」
あっさりとそれに成功した。
というのも、ゾンビたちには暴れたいという欲求以外に考えていることはなく、死人のようにまっさらな思考だったのである。私の洗脳を遮るものはなく、私はまとめてゾンビたちにの洗脳に成功したのです!
「リーパー、ミノカサゴさん! 一部のゾンビはこっちで味方にしました! 今から操って他のゾンビを攻撃させるので待っていてください!」
それでもゾンビからの激しいフィードバックは感じるが、私は気合でゾンビたちを動かして、他の操れていないゾンビたちを攻撃。
ゾンビ同士が殺し合い、私たちの方には向かってこれなくなった!
「今のうちに逃げましょう!」
「そうだね。さっさとずらかるよ!」
私とミノカサゴさんがリーパーに呼び掛ける。
「ちぇっ。せっかく面白くなりそうだったのに……」
「言ってる場合ですか! ほら、行きますよ!」
私はリーパーの手を引っ張り撤退を開始。
「しかし、あれはどうやったんだ? あれもマトリクスに接続されていたのか?」
ミノカサゴさんが道中でそう疑問を呈する。
「いえ。特殊な私の能力とでもいうべきものです。詳細は私自身分かっていないので」
「ふうん」
ミノカサゴさんは納得はしていない様子でしたが、それ以上私のことを探る気もなさそうでした。
しかし、思わぬところから疑問が出た。
「それはまさかΩ-5インプラント……?」
そう言うのは黒沢さんです。
「知ってるんですか!?」
「あ。いや、その、仕組みについて理解しているわけではないけど、そういうプロダクトがあるという話は聞いていたから……」
「どうしてです?」
私は思わず足を止めてそう尋ねる。
「私たちの作ったベルセルク・ウィルスはΩ-5インプラント適合者が操作するための、強化されたクローンを生み出すためのものだった。だから……」
「あれは最初から操られるのが前提だった……」
再生する肉体。操作しやすい思考。
それは最初から兵器として人間や動物を操るためだったのだ。
私はその狙いが分かったとき、僅かに背筋に冷たいものが流れた。
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