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ワイルドファイア//偵察

……………………


 ──ワイルドファイア//偵察



 ミノカサゴと名乗った女性は座っていた椅子から立ち上がると、私たちの方に歩み寄ってきた。


「一応今回の仕事(ビズ)の認識を確認していいか?」


「もちろんです」


 ミノカサゴさんはそう求め、私は頷く。


目標(ターゲット)は帝都生化技研の研究者で、殺しではなく拉致(スナッチ)が目的。間違いないな?」


「ありません」


「そして、やつが研究しているウィルスについて強奪(スナッチ)を実行」


「その通りです」


 ミノカサゴさんがひとつずつ確認していくのに、私が頷く。


「オーケー。ちゃんと仕事(ビズ)の目的は共有しているらしい。ジョン・ドウ、ジェーン・ドウの類から違った命令を受けていて、現場でそれが分かったって話になると不味いからね」


 どうやらこの手の仕事(ビズ)には慣れているらしく、ミノカサゴさんはそう言って安堵していた。


「裏切ったり、裏切られたりするのは確かにごめんだな」


 そこでリーパーが私の方に視線を向ける。


 私はミノカサゴさんの思考を読んでおり、彼女が別の目的を持っていないことを確認しているので、リーパーの視線に頷いて返す。


「じゃあ、早速殴り込むか」


「待ちな。そりゃ不味いよ。こっちの情報だと研究所には民間軍事会社(PMSC)の連中が警備についている。パトリオット・オペレーションズって連中だ」


「ああ。大した相手じゃない」


 リーパーは何度もパトリオット・オペレーションズと交戦して、彼らを撃破しているだけあって余裕の態度です。


「随分と大口叩くね。だが、一緒にやるからにはこっちの意見も聞いてもらうよ。まずは偵察からだ。帝都生化技研ってところはそこそこの広さなのに、こっちはそこに3人で突入(ブリーチ)しようってんだからね」


 ミノカサゴさんは慎重な人のようです。


 正直、リーパーとどっちが頼りになるかというとミノカサゴさんの方ですよね……。リーパーはいつもドーンと入って、バーッとやるぐらいの大雑把な作戦しか立ててくれませんから……。


「リーパー。偵察からやりましょう。念のためです」


「まあ、たまにはそうやってのんびりやるのもいいかもな」


 私もリーパーを説得し、まずは偵察という路線が決定した。


「じゃあ、出発だ。運転はあんたに任せていいかい?」


「いいぞ」


 ミノカサゴさんはリーパーにそう言って、私たちはリーパーを先頭に外に出る。


 それからSUVに乗り込み帝都生化技研を目指した。


「この手の仕事(ビズ)の経験は?」


 SUVの中でリーパーがミノカサゴさんに尋ねる。


「あるよ」


「へえ。じゃあ、これまで経験した仕事(ビズ)の中で一番危険だった仕事(ビズ)ってのはあるか?」


「そうだね。樺太の旧ロシア海軍の地下原潜基地から脱出する仕事(ビズ)が一番危なかったかね。オホーツク義勇旅団と日本海軍特別陸戦隊に挟まれてさ。危うくミンチにされるところだった」


「なら、かなり腕が立つみたいだな」


「そこそこだ」


 ミノカサゴさんはリーパーに煩わしそうにそう返していた。


「偵察って具体的にはどうします?」


「マトリクスからとドローンを利用したものの2段構えだ。突入(ブリーチ)ルートと脱出ルートはしっかりさせておきたい。警備の規模も分かれば文句なしだ」


「マトリクスから……。ハッカーに当てが?」


「ある。もう仕事(ビズ)を任せているから、あとで情報を共有しよう」


「手際がいいですね」


 ミノカサゴさんは頼りになりそうです!


「ところで、ちびっ子。あんたの役割は?」


「私はリーパー同様にドンパチと、それから情報収集を」


「へえ。小さいのに頑張ってるね。偉い、偉い」


 ミノカサゴさんがそう言って私の頭を撫でる。犬猫の扱い…………。


「そろそろ到着するぞ」


 リーパーがそう通達し、私たちの間に緊張感が生じた。


 SUVはゆっくりと速度を落とし、リーパーは窓の外を見ながら車を止めた。


「あれが帝都生化技研だ」


 帝都生化技研はセクター9/7というあまり治安が良くない場所でありながら、そこそこの規模の研究施設だった。


「うちのハッカーから研究所の見取り図が来た。共有する」


 ミノカサゴさんがそう言って私たちと研究所の見取り図を共有。


「ふん。正面はやはり無人警備システムが山のようにあるな。で、問題の黒沢バレリアの居場所だが」


「ここにP4レベル実験室がある。問題のベルセルク・ウィルスがそれなりに危険なものならば、ここで扱ってると思う。ただ、そこに同時に黒沢バレリアがいるという保証はないな」


「結局は研究室内を探し回ることになるのか」


「待て。うちのハッカーが無人警備システムへの侵入を試みている」


 ミノカサゴさんの雇ったハッカーは研究所の無人警備システムへの侵入を試みているらしい。もし、それが成功すればベルセルク・ウィルスの場所も黒沢バレリアの居場所も分かりますね!


「オーケー。侵入に成功。内部の情報が来たぞ」


 おお! これで仕事(ビズ)の難易度が下がりましたよ。


「クソ。旧式の無人警備システムみたいだな。生体認証スキャナーが部分的にしか機能していない。一体どこにいやがる…………」


 ミノカサゴさんは愚痴りながらも無人警備システムで目標(ターゲット)を捜索。


「掴んだ。やつの居場所はここだ」


「P4レベル実験室がある棟と同じ建物の部屋だな」


「ああ。あとはドローンで上から様子を見よう」


 そう言ってミノカサゴさんは外に出るとキャリーバッグを開く。


 その中には軍用グレードのクアッドロータードローンが収まっていた。


「それっと」


 ミノカサゴさんは操作デバイスにBCI接続すると、ドローンを飛ばす。


「映像を共有してくれ」


「あいよ」


 私たちにも情報が送られてくる。空から見た帝都生化技研の映像だ。


「物騒なもので武装した狙撃手がいるな。口径30ミリの対物電磁ライフルか」


「ああ。パトリオットの連中は結構な武装をしているぞ」


 私には武器の種類などはそこまで分からないので、ドローンで掴んだ位置にいるパトリオットのコントラクターたちの思考を盗聴しておこう。


『──……定時連絡。異常なしだ。何も起きてない……──』


『──……今日は気合を入れておけ。要人(VIP)が来るんだからな……──』


『──……分かってる、分かってる。全く忙しいぜ……──』


 何やら愚痴っていますが、要人(VIP)とは…………?


「リーパー。敵は研究所に要人(VIP)が来ると話してします」


「ふん? 要人(VIP)が来る、か。また愉快なときにタイミングがあったな」


「愉快じゃありませんよ……」


 私にとって不愉快ですらあります!


「ちびっ子。あんたも敵の通信をハッキングしたのかい?」


「そんなところです。ある程度、通信情報は掴めますから頼りにしてください」


「そりゃあいいね」


 私の活躍にミノカサゴさんも満足げ。


「そろそろ作戦を立てようぜ」


 リーパーはそう言って見取り図を開く。


「今回は黒沢バレリアとベルセルク・ウィルスってお土産(パッケージ)を安全に外に連れ出す必要がある。というわけで、隠密(ステルス)は必要だろう。最短距離で、密かに入って密かに拉致(スナッチ)


「異議なし。なら、突入(ブリーチ)ルートはこんなもんかね」


 リーパーが示した作戦方針にミノカサゴさんが突入(ブリーチ)の場所を決定。それは資材搬入用の裏口付近にある警備の手薄な場所だ。


「オーケー。万が一の場合のプランBだが、隠密(ステルス)が失敗した場合は俺が暴れ回って陽動を行うから、その間にお土産(パッケージ)を運びだせ。ツムギはミノカサゴと一緒に行動しろ」


「大丈夫ですか?」


「問題ない。それにこれはプランBだ」


 リーパーはそう言っていますが、この人わざとプランBを発動するようなことはないですよね……? ちょっと心配です…………。


……………………

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