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パワーストラグル//意志なき兵士たち

……………………


 ──パワーストラグル//意志なき兵士たち



 私たちの前に現れたテレパシーで操られている兵士たち。


「そうか。なるほどな。それでこいつらから殺意を感じないわけだ」


 リーパーはそう言い、その兵士たちが発砲した電磁ライフルの銃弾を“鬼喰らい”によって弾き、遮蔽物に飛び込んだ。


 しかし、これまでのクーデター部隊の兵士たちと違って、このテレパシー兵たちは死を恐れることなく前に出てくる。それもかなり高度に連携していた。


「リーパー! 大丈夫そうですか!?」


「ああ。こいつは初めての経験だ。楽しませてもらおう!」


 リーパーは互いを援護しながらも勢いよく私たちの方に前進してくるテレパシー兵たちに向けて突撃。


 テレパシー兵たちは何も思考することなく、そんなリーパーを狙って射撃を行う。リーパーは極超音速で飛翔しているはずの銃弾を弾き、躱し、一気に敵に肉薄する。


「まずは1体」


 リーパーはそのまままず1体目のテレパシー兵を仕留める。


 他のテレパシー兵たちはそれに全く動揺せず、リーパーを狙い続ける。


 手榴弾をタクティカルベストから取り出して放り投げ、電磁ライフルを連続射撃モードで電気の音を響かせながら放ち続けた。


 まるでひとつの生き物のようにテレパシー兵は行動している。


「ふん。こういう感じか。確かにユニークだな。これまでにないタイプだ」


 リーパーは今のところ攻撃を受けていないし、楽しそうだが、今日はいつもほどの殺しの速度ではなく、彼なりに苦戦しているように見えた。


 このままだと流石のリーパーも危ういかもしれません。


「こいつらはどこからか操られている……。そいつを見つけ出せば…………!」


 私は私でリーパーを支援するために、このテレパシー兵たちを動かしているテレパシーの源を探っていた。


 広範囲の思考を盗聴し、テレパシーで兵士たちを操っている人間を探す。


 しかし、テレパシー兵に植え付けられたどす黒い殺意の感情がノイズとして大きく生じていて、なかなか特定の思考に集中できない!


「集中するんだ。集中して、しっかりと目標を絞って……」


 私は深く、深く深呼吸し、さらに広範囲にテレパシーを広げながらも、個々の思考の盗聴を深めていく。


 テレパシーはそこまで遠くから行われているわけではないはずだ。敵は間違いなく、この近くにいて戦況を見ながらテレパシー兵を操っている。


 能力の使い過ぎで頭痛がするが、それでも私はテレパシーでの索敵を続けた。


 そこで私は────


『──……殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ……──』


 掴んだ! このテレパシーがテレパシー兵を操っているテレパシーの源だ!


「これを引き剥がす……!」


 私は相手のテレパシーに干渉して、テレパシー兵の一部に送られているテレパシーを妨害し、相手の制御から引き剥がした。


 それによって一部のテレパシー兵の動きが動きが止まり、棒立ちになってしまう。


「はんっ。こんなものなのか」


 それからリーパーは棒立ちになったテレパシー兵の首を次々に刎ね飛ばし、一気に攻勢へと転じた。


「リーパー! 相手のテレパシーは妨害しています! 今のうちに!」


「ああ。そうさせてもらおう!」


 リーパーは攻撃に転じたことで次々にテレパシー兵を撃破していく。


『──……邪魔されている……? 忌々しい連中め……──』


 テレパシ-で操っている人間がそう考えて、私が奪取したテレパシー兵の制御を奪い返そうと、さらに強力なテレパシーを放ってくる……!


「負けませんよ!」


 私もテレパシーを強く放ち、敵に制御を渡すまいと抵抗。


 脳を流れている血が沸騰しているかのように熱くなり、頭痛はバッドでガンガンと殴られているかのように凄まじい。それに鼻血だってさっきからだらだらと垂れ流しになっている。


 それでも私は相手のテレパシーを押し切り────。


「制御を奪取……!」


 ついにテレパシー兵の制御を相手から奪った!


反撃の時間(ペイバック・タイム)です!」


 私は制御を奪ったテレパシー兵をぐるりと反転させてクーデター部隊を攻撃。


『──……どういうことだ。友軍から攻撃を受けているぞ……──』


『──……例のドールどもだ。裏切ったのか……──』


 クーデター部隊には混乱が生じ、テレパシー兵は損害を出しながらも、クーデター部隊に猛攻を仕掛け続けた。


 そこで分かったことがある。


 このテレパシー兵は何も考えていない。意志が存在しない。


 まるで脳死状態の人間だ。生命活動だけが維持されているだけで、他は自らの意志で動くこともない死人と同様。


 これが意図的に生み出されたものならば…………あまりにもおぞましいです。


 “天雷”が機械に生物の特徴を足したキメラだとすれば、このテレパシー兵は人間を機械のようにしたキメラでしょう。


 これは人としての意志がちゃんと残っている兵士を強化したものである生体機械化兵マシナリー・ソルジャーとはわけが違います。


 テレパシー兵はまるで銃やミサイルのようなものなのです。そこに自由意思はなく、人としての尊厳もまるでない。


 まさか人間をそんなひとつの兵器にしてしまうなんて……。


「リーパー。テレパシー兵はこっちで奪取しました。あなたがテレパシー兵を操っていた人間を探してください。そいつは間違いなくこの近くにいます……!」


「了解だ。無理はするなよ。あの程度の兵隊が敵に回っても俺ならどうにかできる」


「心配どうも。ですが、私も核爆弾で吹き飛ばされたくはないですから」


「そうだったな」


 リーパーはこの戦場となった合成食料プラントの中をぐるりと見渡し、プラント内にある管理用の部屋を見つめた。


「あそこだな」


 リーパーはそう言うとその部屋に向けて進む。


 リーパーが部屋の傍に近づいた、そのときだ。


 ガンッと部屋の扉がはじけ飛び、そこからテレパシー兵の新手とともにひとりの少年が姿を見せた。


 少年はアジア系で15、16歳程度。ジーンズに黒いポロシャツ、その上から古い軍用ジャケットを羽織り、頭には野球帽をかぶっていた。


「俺の邪魔をするな……!」


 少年はリーパーを睨むように見ると────。


「おっと」


 リーパーがさっと身をかわし、先ほどまで彼の立っていた場所に炎が生じる。


 まさか相手はテレパシーだけでなく、ファイアスターターとしての能力も……!?


 これは不味いです! よくありません! だったら相手は私とほぼ同じ能力が使える可能性もあるわけですからね!


「リーパー! 援護します!」


「必要ない。お前は雑魚を掃討しておけ。こいつは俺が殺る」


「本当にそれでいいんですか!?」


「構わん」


 リーパーはどうやらひとりで敵の超能力者の相手をするつもりのようです……。


 いつものことながら、この人は、全く…………。


 しかし、それでもリーパーに死なれては困るので、私はクーデター部隊の掃討とテレパシー兵への干渉、万が一のためのリーパーの戦いへの介入の準備、そして核爆弾の捜索を並行して行う。


 その間にもリーパーは超能力者の少年と交戦状態に突入していた。


「楽しもうぜ、少年」


「死ね!」


 リーパーが軽い調子で少年に迫るのを少年は炎を生み出して退けようとする。しかし、炎は残念なことにリーパーをかすめることすらない。


 う~ん。リーパーはまるで未来が見えているかのようですね……。実際にはそんなことはないんでしょうけど…………。


「死ね、死ね、死ね! 俺は生きるんだ! お前たちを殺して生きるんだ!」


「……!」


 少年の発した言葉に私は思わず動揺した。


 もしかして、彼もまたインプラントで脳が侵襲されている……? だから生き延びるために戦っているのだろうか……?


 だとすれば、それは私と同じだ…………。


「そうか。生きたいのか。なら、命をかけて生き残ってみせろ」


 少年の叫びにリーパーはそう言い、けしかけられたテレパシー兵を一瞬で斬り伏せて少年へと迫る。


「燃えろ!」


 再び炎が放たれ、合成食料プラントの大豆などに引火。それによってスプリンクラーが動き始め、水が室内にまき散らされる。


 ざあっと豪雨のように降り注ぐスプリンクラーの水。


「ふん。残念だな。もっと時間があれば、生き残れたかもしれなかったのにな」


 リーパーはスプリンクラーがまき散らす雨の中を駆け抜け、少年の放った炎を前に出ることで回避し、そのまま突破した。


 そして────。



「ゲームセットだ。そこそこには面白かったぞ」



 リーパーは少年の首を刎ね飛ばした。


 ただ静かに鮮血が宙を舞う…………。生が消えていく…………。



……………………

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