10年後……
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──10年後……
私は中華料理店の扉をテレキネシスで吹き飛ばす。
「何だ!?」
中華料理店の中にはチャイニーズマフィアのチンピラがわらわらいて、私の方を見ると銃口を向けてきた。
「さあ、タイムアタックだ」
私は周囲に浮かべていた鉄片やガラス片をチンピラたちに叩き込む。
「こいつ、バーバヤーガだ!」
「都市伝説じゃなかったのか!?」
私の攻撃を見てそう叫ぶチンピラたち。私についた新しい名前。
バーバヤーガ────魔女────。
私はその名を聞きながら、チンピラたちを数秒で皆殺しにした。
「クリア」
テレパシーで索敵してももう生き残りはいない。
「ジェーン・ドウ。仕事は終わった」
『ご苦労様です、ツムギさん。では、のちほどセクター4/2でお会いしましょう』
私がARデバイス経由で連絡するのに、ジェーン・ドウからそう返ってくる。
私は中華料理店を出て、セクター13/6の通りに出る。
「リーパー……。あなたはいつ帰ってくるのですか…………」
あれから10年。私は今も傭兵を続け、年齢は20歳を越えた。
Ω-5インプラントは無事にマグレガー博士が開発してくれたナノマシンによって、これ以上脳への侵襲が起こらないようにされ、私は今も生きている。
ただ、リーパーはここにいない。
あれから10年経ってもリーパーは戻ってきていないのだ。
もう戻ってこないのかもしれない。
そう思いながら私はセクター4/2の喫茶店に向かう。今では私もジェーン・ドウから貰ったSUVを運転し、自分で仕事の場所や用事のある場所に向かっている。
SUVをセクター4/2の喫茶店前で止め、私は喫茶店の指定された個室に入る。
「ツムギさん。報酬の方をまずはお渡ししておきます」
ジェーン・ドウは10年経っても全く姿が変わっていない。昔のままだ。
「それから別にもうひとつ」
「他に仕事ですか?」
「いいえ。あなたの探し人が見つかったということをお伝えしておきたくて」
「探し人……!」
ジェーン・ドウの言葉に私は思わず身を乗り出した。
「そうです。リーパーが戻ってきました。彼は今、大井医療技研の運営する病院にいます。本当に彼かどうかをあなたが確認してきてください」
「ええ!」
私はジェーン・ドウから病院の座標を受け取ると、すぐに病院に向かった。
それから病院の受付ボットにビジターIDを発行してもらうと、彼がいるという病室に向けて足早に進む。
しかし────。
「いない……?」
リーパーは病室にいなかった。
「すみません。ここにいる患者はどこに?」
「先ほど自販機の方に行かれました」
看護師ボットからそう返事を貰い、私は自販機コーナーがある場所へ。
そこで私はようやく彼を見つけた。
「リーパー!」
私の声に彼が振り返る。
「よう、ツムギ。美人になったな?」
リーパーは10年ほど経ったとは思えないほど今も若々しかった。病衣ではなくラフなスーツ姿で腰には“鬼喰らい”を下げた、いつものリーパーがそこにはいたのだ。
「帰ってくるのが遅いですよ。すぐ帰ってくるみたいなこと言ってたのに、もう10年も過ぎちゃったじゃないですか」
「悪いな。地獄ってのはなかなか楽しくてな。追い出されるまで居座ってしまった」
「あなたらしい」
私の目には涙が溜まっている。それがぽろぽろとこぼれていく。
「改めて、お帰りなさい、リーパー!」
「ただいま、ツムギ」
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