地獄の門が開く//この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ
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──地獄の門が開く//この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ
地獄門の影響で不死身のごとき力を有した悪魔。
「そうだな。悪魔というからにはそれぐらいでなければ退屈だ!」
しかし、リーパーは全く動じていません。
そうです、そうです。私たちはこれまでも自己再生する半生体兵器などを相手にしてきたのです。今さらちょっと再生するぐらいで怯えたりしません!
「援護します、リーパー!」
私は周囲に倒れていたパトリオットのコントラクターたちから銃弾などの武器を取り出し、それを悪魔に向けて叩きつける。同時に炎を浴びせた。
「オオオオオオォォォォォォ───ッ!」
雄たけびを上げながら悪魔はリーパーを殺そうと握っていた斧を振り回す。斧からは炎が生じて、周囲に炎がまき散らされる。
「盛り上がってきたな!」
リーパーは炎を避け、私もテレキネシスで敵の攻撃からリーパーを守りながら、大型悪魔との交戦を継続。
「ダメージは確実に蓄積している…………!」
悪魔の再生速度はじわじわと遅くなり、私たちの攻撃が全く無意味なものではないことは分かっている。このままダメージを負わせ続ければ……!
それからリーパーが悪魔の腕を切り落とし、私が足を破砕するのに、悪魔の再生が止まりましたよ!
「そろそろか?」
「そろそろですよ! トドメを!」
私の声にリーパーがよろめき倒れた悪魔に襲い掛かり、その首を刎ね飛ばす。鮮血が舞い散りながら灰になっていき、悪魔もついに完全に灰になった。
「手ごたえ的に中ボス撃破、ってところか」
リーパーは首を踏みつぶしてそういう。
「やりましたね、リーパー……」
「ああ。だが、問題はこれからだ。地獄門を閉じないとな」
私も安堵の息をつくが、リーパーの言うように問題はこれからです。
「おい、ミネルヴァの。これをどう操作すれば、お前らが地獄に下ろしている錨を上げられるんだ?」
「待ってくれ。私が操作しよう」
ネテスハイムさんはそう言ってコンソールに向かう。
「電力は辛うじて生きている。これならば引き上げることは不可能ではないはずだ」
私たちのいる制御室からは、地獄門の中央が見えた。
そこには富士先端技術研究所のようにクレーンから何かが地獄門に向けて吊るされており、それがネテスハイムさんの操作でゆっくりと引き上げられ始める。
「錨を引き上げれば地獄門は消滅するのか?」
「恐らくは。我々はここまで大規模に地獄門を開いたことがないので、絶対の保証はできないが……」
リーパーは不気味な地獄門を眺めながら尋ね、ネテスハイムさんは答える。
「もし、錨を引き上げるのに失敗したら?」
「そのときはプランBだ。地獄門の中に爆薬を叩き込んで、錨を破壊する」
「なるほどな──」
ネテスハイムさんの言葉にリーパーが頷く。
「ツムギ。下がれ、すぐに!」
そこでいきなりリーパーが叫んだ。
私が慌ててジョロウグモ君とともに今の場所から下がると────。
突然、地獄門から太い触手が現れて、制御室に襲い掛かった!?
制御室の窓ガラスが割れて砕け、制御室が揺さぶられる。私はテレキネシスも併用して何とか姿勢を保つが、触手は制御室内に入り込み、ネテスハイムさんを…………!
「こ、ここまでか……!」
触手はネテスハイムさんを掴み、あっという間に絞殺した。真っ赤な血が周囲にまき散らされ、ネテスハイムさんは死んでしまった。
「リーパー! ネテスハイムさんが!?」
「ああ。不味いな。今ので引き上げ掛かっていた錨が完全に地獄の方に落ちた」
リーパーは冷静に状況を見ていた。
先ほどの触手の攻撃で、引き上げ掛かっていた錨はクレーンが壊れて完全に地獄の方に落ちてしまいました…………。
「どうします、リーパー……?」
「さてな。やつが言っていたプランBの通りに地獄門に飛び込んで、錨を破壊してくるってのはどうだ?」
「そんな無茶苦茶な!」
「だが、やらなければ俺たちは全滅だ」
……リーパーが言う通りなのです。ここで地獄門を放置すればいずれは……。
「分かりました。やりましょう」
私も覚悟を決めた。
「じゃあ、行くぞ、ツムギ。地獄に突入だ」
私たちは制御室を出て、地獄門を目指す。
制御室脇の階段を降りていけば、今も拡大を続ける地獄門に到達。
しかし、私たちが地獄門に入るには──。
「あの触手をどうにかしなければならないな」
そうなのです。ネテスハイムさんを殺害した触手が、地獄門から今も伸びており、暴れ狂うようにのたうっているのです!
「適当にぶった切って進むぞ」
「了解です。援護します!」
リーパーは触手に向けて突撃し、私もジョロウグモ君の上から援護する。
周囲にある破壊された制御室のガラスなどをテレキネシスで拾い上げ、宙に浮かせると私はそれを触手に向けて叩き込んだ。触手がガラス片でめった刺しになり、苦痛にあえぐように触手が蠢く。
「長々とはやってられん。すぐに終わらせる」
リーパーもそういって触手に向けてジャンプすると一瞬で触手を横一閃に斬り裂いた。斬り裂かれた触手は、地面に落ち、這いまわりながら灰になってゆく。
「所詮はジャンプスケア要員の雑魚か」
「大した敵ではありませんでしたね。ですが…………」
地獄門の向こうは悪魔だらけのはずだ。
この触手より脅威になる悪魔は山ほどいるだろう。そこで私たちは生き残れるのか。
「覚悟を決めた飛び込むぞ。ここから先は引き返せませんってメッセージが出るような場所だ。十分に警戒しろ」
「はいはい」
こういうときでもリーパーはゲーム気分です。
「……ツムギ。お前はここに残ってもいいんだぞ」
と、不意にリーパーがそんなことを言う。
「ここから先は本当に生きて帰れるか俺にも分からん。だから、残りたいのならば地上に残れ。地獄門は俺が閉じてくる」
「今さら何を言っているんですか。私も行きますよ」
リーパーの心配するような言葉に、私は笑顔でそう返した。
「それに地上に残ったって、ミネルヴァが崩壊した今の状況ではどうせ……」
そう、私の頭にあるΩ-5インプラントを除去する方法は見つからないのだ。
「そうか。なら、派手にやろうぜ。3カウントだ」
「ラジャ!」
3──────地獄門は今も拡大を続けている。
2────赤黒く蠢く空間が目の前にある。
1──これを閉じなければ地球は……。
0。
リーパーは勢いよく地獄門に向けて飛びこみ、私もそれに続く。
硫黄の臭いと夏のような高温を感じる中で、私たちは落下を続け、そして────。
「ここが地獄か」
私たちは異様な構造の建築物が並ぶ場所に降り立った。
気の狂いそうになるような不気味な構造の建物が、あちこちに立ち並んでいる。明らかに地球ではない、太陽がないのに赤く染まった空がある世界であった。
「地獄へようこそってわけだな」
リーパーは興味深そうに周囲を見渡してそういう。
「リーパー。あれが錨ですよ。間違いありません」
それから私たちは富士先端技術研究所で見つけたのと同じ、不気味な構造の像を見つけた。あれがネテスハイムさんが言っていた錨で間違いないだろう。
だが、それを破壊するということ容易ではなかった。
「ほう。お前たちがここに来るとはな」
そう言って現れたのは私たちも知っている悪魔。
「サロメ…………!」
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