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私の坩堝  作者: 芳田
2/20

垂れ流し2

20歳くらい?

全然香ばしくて笑える。

打算もなく行った行為を見返せば、やはり無意識からの打算だったのではないかと疑心暗鬼を生ず。

人の性は善であっても、その善の理由を求めた時点で全ては悪になる。



致命的とも言える心体不均衡を治す術は手に入れられぬままヒールだけが高くなってゆく。



私が私であることは確かであるのに、この私は私ではない。幾層もの仮面が私の本質を私自身からも隠している。



死んだら星になろう

できるならとても明るい星に

そうして私はγ線になって

星間を超えて

オーロラになりたい



自分に大丈夫だって言い聞かせてる時点で大丈夫じゃねえよ。



頭に乗せられた手の温もりには覚えがある。それでも思い出せない。酷く愛おしいのに。



おずおずと手を差し出し、彼の頬に触れる。私の手が冷たいからなのか、彼は少し驚いていた。この手で彼を引き寄せたなら。それで私の悩みは全て解決する。しかし、何か戻れなくなるような気がして、少し頬を抓ってやった。

「やあらけえの。」

ああ、私は本当に意気地無しだ。


カウンターに突っ伏した彼女がそっと手を伸ばし、俺の頬に触れる。冷えた手の温度に少し驚きながらも、ただ彼女の次を待つ。もしこの冷たく柔らかい手を引き寄せたなら、それで少しは彼女は救われるのだろうか。いや違う、彼女のためなんかじゃない。これはただのエゴだ。俺の独善だ。ああ、それでも。

チリ、と頬が熱くなる。彼女が抓ったのだ。

「やあらけえの。」

そう言って微笑む彼女は、とても綺麗で寂しそうだった。



こんなところへ来るものか。来られるものか。来てくれるわけがない。私と彼の距離はもはや冗談ではすまされないほどになっているのだよ。愛の力は有限だ。ここまでくる愛が果たして彼にあるものか。いや、彼を疑うわけではない。ただ私は酷く恐ろしい。距離隔てたとて、愛は損なわれないとわかっているのに、それでも私は、この地理的距離が恐ろしくて仕方がない。いっそ忘れてほしい。そうして私も忘れたい。何もなかった日に戻りたい。いや、それもお断りだ。そうしたら私はやっと好きになれたこの自分を嫌いになってしまう。私が愛した彼が私を愛してくれるから私はようやっと自分を愛せたのだ。もし忘れたなら私はまた辛くなる。



彼女の幸せそうな顔を見たとき、愛おしさと憎さが心の中に巻き上がり、気づいた。僕はこの人に恋をしていたのだ。だが、この恋は全てにおいて手遅れだった。



冗談でもやめてくれ。私にはもうそれしかないんだ。それ以外、全部捨ててここに来た。それがなきゃ、私は私でいられなくなる。だから頼む。返してくれ。



人は誰しも秘密を背負っていて、誰にも知られたくないのだけれど、どこか暴かれたいと願っているのではないでしょうか。これは、ただのマゾヒスティックな嗜好ではなく人間に組み込まれた罪の意識であると考えています。



涙なんてとうの昔に枯れたと思っていたのに。あなたの幻影を見ただけで、こんなに辛いなんて。殺したはずの恋心を殺しきれずにいる。



せっかく忘れかけていた私のこの心を、どうしていつも、君は掘り起こすのだ。私は忘れたいんだ。あんなのただの地獄だ。人が人を好きになるとはなんともまあ生物学的に正しいことなのだろうけれど、そうではないのだ。私は悔しいんだよ。普通の人間みたいに人を好きになって、月並みに愛を囁いて、囁かれて、愛し愛されたいなんて浅はかな自分がクソみたいで嫌になる。恋は盲目だと誰が決めた。全て分かっていてなお好きなんだよ。こんな恋間違ってる。こんな愛し方もおかしい、狂ってる。でもどうしようもない。どうしようもないんだ。わたしはどうすれば良かったんだ。何が正解だったんだ。わたしのエゴであの人の運命を縛るなんて許されるような話じゃない。

お願いです。もう忘れさせてください。それが無理なら、私に彼を愛する許しをください。私は彼に何を捧げてもいいのです。いいえ、捧げたい。いや、むしろ私はそれをする勇気がなかったからこそ、こんな恋をこじらせ続けているのではないか。恋をして、それを愛にするのなら、私は彼に嫌われる覚悟を持たなくてはいけなかった。あの生ぬるい心地よい関係を壊して、一歩進む勇気。そんなの出来るわけがない。

私だけが彼を愛せればそれでいいのだ。彼から愛される必要はどこにもないのだから。つまり彼を愛している私を愛していた? 違う、そうではない。ではなんだというのか。私だって愛されたかった? 認めてほしかった? なら愛でなくてもいいじゃないか。友人でいいじゃないか。でも友愛では足りない。私が私であるためには友情以上の愛が欲しかった。ならばやはり、この恋は私が私を象るために作った壮大かつ矮小な陳腐な幕間だったんじゃないのか。

ああ、だから思い出させないでくれと、自分でもどんどんわからなくなっていくんだよ。正しさが、愛が、恋が、あの人が、自分が、何もかもが狂ったようにとっちらかって、わからないんだ。さあ、すべて箱にしまって埋めよう。君は手伝ってくれるなよ。わざわざ掘り起こす人だ。欠片でも盗まれたら困るからね。そのかけら一つで、私は死んでしまうのかもしれないのだから。これが私のパンドラの箱。一度開いたなら私は心も体も病に侵され、死んでいってしまうから。



どれだけの人がいたところで、私の世界に色付いているのは君だけなんだぜ。



恋人は煙草。口が寂しいからといって、煙草の代わりに私の口を吸う彼は、私にとって間違いなく毒であった。しかし、その毒は遅効性かつ依存性が強いために、ついに彼を断つことはできなかった。

愛などない。



涙は塩水だから、溜め込んでゆくほど枯れてゆく。

そしていつのまにか残った結晶を人は美しい過去だと呼んでは、舐め、愛でる。



あれはいいんだ。いつか別れなければいけない過去だった。

別れる? 馬鹿を言うな。今のお前を築くのは他でもない過去なのだ。未来はさながら、延々と降り注ぐマリンスノー。過去を捨て去ったお前は底なしの海に溺れ、死ぬだけだ。

誰でもない私がそれを望んでいるからいいじゃないか。

私はもう随分と前から私がわからないんだから。



君だけは決して恨んでくれるな



自分でも気付かぬうちに罪は積もっていたのです。私は、自分が思っている以上に嘘つきで、罪深くて、天国への扉などはとうの昔にしまっていました。



君には見えちゃいないだけで、触れないだけで、誰かがそこにいるかもしれない。私達が知覚できないからいつまでも存在を知り得ない。存在とは知覚そのものである。



神様がいるから信じるのではなく、皆が信じるから神はいる。

神それすなわちマジョリティの具象なり。

私達の意識の一部を一つのイメージに預け、それを大勢で共有することで神は神となり神である。

ただいま廃れた神々は信仰と信頼を失った者共だ。

信じる者が多くとも神はより確かなイメージを持てるわけではない。

どれだけ心が預けられているかが神の実在を左右する。絶体絶命の瞬間に祈られる神と、狂人へ道を指し示す神ならば、どちらがより影響力を持つか。相対的な話になってしまうが、この影響力とは、どれだけ多くの人に知覚されるかということではなく、その瞬間の当事者の現実をどれほど変え得るのかという話だ。

現代、宗教が廃れ始めているのは、人々が超越的なイメージである『神』を信仰していないからだ。かつて神の実在を証明するために発達した科学や思想が、かえって神々の首を締め上げている。資本主義にどっぷりと浸かってしまった私達は、漠然として、足掛かりもなにもない根無し草のような神を信じることはできない。即物的な利益は得られないからである。

このままの話で進めて行くと、やはり神というのは確証性はない頼りないものであると思われてしまっても仕方がない。



神様は言った。人には天秤を与えたと。何を測るかはお前達次第だと。そうして私たちはその天秤を使って様々なものを比べていった。比べられないものはない。林檎と桃。犬と猫。猿と人。君と僕。必ずどちらかに傾く。神様は、何が正しいか知っている。

人々はいつしか神様から貰った天秤のことを忘れて、自分たちの天秤でものを測り始めた。

するとあら不思議。今までちゃんと傾いていたはずの天秤は動きません。なぜか。それは簡単。神様は私たちに選ぶなんて贅沢な機能は与えてくれなかったのだ。私達が自分の意思で、自分の価値観で進むべき一歩を選び出すことを良しとしなかった。

つまり何が言いたいかというと、やはり僕は選り好みできないのだ。



信じるだけでは人を救えない。

彼はとても素晴らしい人だ。人を疑うということを知らない。この世の全ては正しいことで成り立っていると信じて疑わない。しかし、良い人ではない。彼の世界は正しさで構成されていて、それと相対する悪は無に等しい。いや、彼が悪を知らないわけではない。だが、その悪さえもかつては善であったと、正であったと盲目に信じている。



選択なんてのは、こちらの心積もりなど関係なく、唐突に来るもので。

私に突きつけられた『お願い』はひとつ。死ね、とな。悩むことはない。私はこの世に何も未練はない、だから、まだ死ねない。未練すら作れないまま私の世界を閉じるつもりはない。だから嫌だと泣いた。

それが始まり。

時は流れて、僕が僕であり始める頃、遠くで『お願い』が聞こえた。でも僕はそれを聞こえないふりをして前へと進んだ。声はもう聞こえなかった。



まだ好きだ。でももう二度と会えないのなら、この恋は綺麗な思い出にするしかないんだ。



遠くの港から聞こえる低い汽笛が虚しく町に響き、早朝の静かで澄んだ空気に溶けてゆく。はあっ、と息を吐けば、私の息は白く凍る。足はさくりと雪を踏みしめる。冬だ。

地球が暖かいのか、たまたま海が暖かいのか、どちらか私にはわからないけれど、今年は冬が遅かった。ホワイトクリスマスなんて言葉がロマンチックに聞こえないこの地方で12月が終わるまで、まるで雪が降らなかった。いつまでも上着を羽織るか否か悩んだほどだ。しかし冬将軍は年の瀬になって、忘形見と言わんばかりに、初日の出を隠すほどの雪を置いていった。



俺に彼女は救えない。何もわからなくとも、それだけはわかる。引き止めても行かせても、後悔が残ってしまうのならば、彼女の意思に任せるしかないのだ。それとも彼女は引き留めて欲しいのだろうか。彼女の全てを否定して、ただ、俺のためだけにその手を引き寄せる事を望んでいるのか。俺のエゴか、彼女のエゴか。



怒りたかったらちゃんと怒って、嫌なものは嫌だって言って、欲しいものをお願いできて、甘えたかったらとことん甘えて、好きな人に好きって言えるなら、それに越したことはないんだ。

当たり前のことだけれど、僕には何一つできなかったよ。正直に生きるなんて、とても、難しい。



いつのまにかに出来上がった口の悪さと虚言癖とが、私の本心を押さえつけて亡き者にしようとする。



いわゆる無駄なものが好きだった。

例えば二階の壁についたドア。例えば間取りに失敗した部屋のスペース。使用用途も需要もわからない、そんなものが好きだった。別にその中に芸術めいたものを感じるわけでもなく、ただ心が惹かれていた。断っておくが、その特異性を好くことで自分を差別化しようとしているわけではない。本当に、理由もなく。



愛は許される。



根底にあったはずの信頼は当たり前のものとなって死んでいる。なあ、気づいているのか。



過去の私の死骸が今の私を脅かす。これではないと、殺してはすげ替えて。無意識のうちの自殺。あの日の私はもうずっと前に死んでいて、足元に転がっている。



草原を駆ける少年達の一歩一歩でもたらされる死を誰も咎めないように



雑草が雑草たる所以は、その打たれ強さであり、それを模範としようとする人は多いが、それはとても気に入らないことである。あれらは踏まれても死なないように進化したのだ。決して、二度と踏まれないようになろうとは思わなかった。その、弱さゆえの諦めが嫌いだった。



たまにぶっている自分を見返して、嫌悪と憧れとが入り混じる。その時にはもう、あの日の私は死んでいるのだ。



僕が恋だと言うならばそれが恋なのだ。



あなたは私に、味方などたくさんいると言いましたが、それはあなただからです。あなたの周りにはあなたの味方がいました。あなたはいい人だから、人に愛される人だからです。しかし私は違う。汚い人間です。どうしようもありません。怖くなって、嘘を吐いて、また怖くなって。

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