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私の坩堝  作者: 芳田
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垂れ流し1

14歳〜19歳までの垂れ流し

駄文、駄作。山となっても塵は塵。私にやはり才能はなく、残るは書き散らした散文録。ここにあるのは不幸と妬みと少しの喜び。お好きなものだけ読んでお帰り。



1日の終わりに死んだようにぐっすりと眠れるなら、それだけで私は幸せです。



僕は夏が嫌いだ。雨の音が、葉の揺れる音が、蝉の声が、祭囃子が、湿った土の香りが、磯の香りが、焼きつく日差しが、僕を苦しめる。

とうに終わったあの日が、夏を感じるたびに手を伸ばして連れ戻そうとする。



何を言いたいのかわからないままに口を開くのは、浅はかではありませんか。



このままに私を終わらせてほしい。



いつの間にかいろんなものを忘れていて、忘れたこともいつか忘れてしまうことを、私は知っている。段々と忘却のスピードは早くなり、私の今を脅かし始める。大事なものまでそぎ落とされた私の記憶は、なんて、おぞましい形だろうか。



春一番の匂い


少し、寒いと思った。

冬は溶け、春が足音を響かせるのは

もう少しだけ、先の話になるだろう。

頬を掠める風は弱々しく、妙に擽ったくて首を降った。


もう少しで春が来る。

春が来たなら桜が咲いて、街は緑に溢れる。

生命の鼓動が動き出すのだ。


ああ、待ち難い春よ。

待ちくたびれた私は、きっと貴女を迎えに行く。

時鳥よりも早く、梅より早く、春を感じたい。


不意に一陣の風が、森を、街を、吹き抜けた。



突然、私も知らない私の孤独が胸を貫き、呼吸を奪うのだ。差し伸べられる手すら無く、ただ溺れていく。



羊水の中に沈み続けるのは容易である。しかし、人は立つ。いずれ母は死ぬ。枯れた泉に街は栄えない。今、溺れているのは致死性を孕んだただの水の中だ。この器では受け止め得ない危険性と引き換えに、君は母を感じている。浮上せよ、生きるのだ。



ここはどこであれはだれだ

死んで生きる間に何かある

僕の知らない何かが

イデアもイドラもない

これはなに

暗い、怖い、上下?

目を閉じた時の無がある

概念がない

ドロドロでサラサラで纏わり付いては流れてく

これはなに

寒い?暑い?痛い?心地よい?

わからないことすらわからない

僕は歩いている?這いずっている?

死んでないし、生きてない

増えては減ってる



こんな僕なら死んでしまえばよかった



そんなに哀しそうな顔をしたら本当に哀しくなってしまうから笑いなさい。世の中、笑っときゃなんとかなるのです。なんとかならないことがもしあっても、困ったり、弱った顔を見せてはいけないよ。その隙に、君を脅かすものに襲われてしまうからね。でもね、もし、君を守ってくれる人がいるのなら、その人の前では笑うのをやめていいよ。泣いて、慰めてもらいなさい。そうして同じぐらい、その人を甘やかしてあげるの。いいね。人は一人では生きられないんだよ。



助けてくださいお願いしますもう嫌ですもう無理ですどうしてどうして頑張らなくてもよいではありませんか人並みに人並みで普通にありふれたそれでいいじゃないかいいだろう本当は泣きたいよ逃げたいよでもそうする勇気も元気もないんだすべて投げ出してまた子供を繰り返そう一番幸せだった時をいつまでもないよそんな日なかったよ毎日幸せで毎日が不幸せで明日が嫌で明日を願って昨日を嫌って昨日に縋って何もかもが矛盾して誠実で不純で正直まだ死にたくないのにこの生を終えたい救いもないのならいっそこの首を刎ねてくださればそれでよいでもそれも望みすぎなんだろうただ何もせずのうのうと余生を惰性に潰していくだけの人生でした



生き急ぐ



私は私の悲しみをただ私だけで受け止めなければならないという事実を恐怖した。



先生。わたし、知ってました。この世界に救いはありません。幸せなんて、到底無理です。私たち、いつまでも報われないままなんですよ。

だって、努力をしていない。命を投げ打つほどの覚悟も無い。そうできる人だけが幸せなのです。

ねえ、先生、先生。先生は言いましたね。なんとかなるさなんて、そんな無責任な言葉をわたしに与えましたね。それがどれだけわたしを許し、そして間違えさせたのか。数えてごらんなさいよ。

わたしにはもう無理です。助けてとも、言えないまま、今日まで生きてしまったわ。不届きと思うのなら、どうぞこの頬を打って。もし、可哀想だなんて思ってしまったら、抱きしめてよ。でも、もし心の底で、おんなじことを考えていたのなら、ここで一緒に死にましょう。



俺はのたうつ。苦しいからだ。逃れたいからだ。何が悪い。人は皆のたうっている。のたうち回り、回りきって、止まったように見えてるだけだ。



寒いのよ。ひどく。でも、私にはそんな時、寒いねと声を掛けてくれる人さえいないの。

それは、寒さなんかよりも、ずっと恐ろしいことだと思わない?



私の心の中に残る一片の悲しみは、やがて、私を蝕み、病気になりました。



そう、ぼくは、ぼくは、知ってしまったのです。僕の恋がどれだけ大事なものであったのか、かけがえのないものであったのか。ぼくは、知ってしまったのです。

あの胸の高鳴りは、誰でもよかった訳ではありません。あの人だから、あの人だからだったんです。泣きたくなるほどの切なさ、辛さ、一緒にいるときの幸せ。全て全て、あの人だったからあったのです。私は、誰でもいいと思っていました。どうせ、みな、同じなのだ。よほどのことがなければ、誰だっていいんじゃないのかと、そう思いました。

でも違うんです!その人でなければいけなかったのです!

あの人しかいなかった!!

しかし、その人にとってわたしはそうではなかった、ただ、それだけのことです。それだけのことなのに、それは、もう、なんて、そんなこと、あっていいはずが、いや、しょうがなかったんだ、でも、僕は、やはり、いまでも、往生際が、悪い、なあ。



恥の多い生涯を送ってきたと、臆面もなく言えるような人は、恥知らずです。



あなたからもらった腕時計から香る香水が、まだあなたがいるのではないかと錯覚させる。

「これが香らなくなったら、きっと、わたしは、死にます。」

あなたが私を愛していたという証明。そばにいた証拠。少し気恥ずかしくなるディオールの香水と、背伸びした999番のマニキュア。あなたのようなわたしで、何とか生きている。



なぜ、私はあなたの隣にいられなかったのか。

考えたくもない。

私は毎日、孤独と恐怖とに塗りつぶされそうになりながらなんとか生きています。本当は、もう、だめなのかもしれません。私は不意に泣きたくなって、でも、涙は溢れてこないまま、喉の奥で嗚咽を噛み殺して、そうして平静を保っています。

でも、夜はだめだ。恐ろしい。闇に染まった部屋は布団の中の私さえも染めようかとすぐそこまで迫ってくる。俺は耐えきれなくなって叫ぼうとするのだが、それは無意味で、そうしてようやく、涙が一筋溢れた。

俺の嗚咽が真っ暗闇の部屋の中に変に響く。闇はもう、すでにそこにいたのだ。



私は私の不道徳、不誠実をようやっと白状しましょう。



決して、決して、私を許してはなりません。いいですか。許しとは、一種の諦観、諦めです。寛容とはそう言ってなんら差し支えない。約束ですよ。あなたが許せないと、そう思ったのなら、相手が誰であっても、たとい、私でも許してはいけません。



おはよう、坊ちゃん。

おはよう。君。

浮かない顔をしてやがる。どうしたってんだい。

さあね。昨日、父様が死んだからかな。

いやはや、あの人、死んじまったのかい。そりゃあお気の毒。しかし君、そうしたら君はもう少し明るい顔をしてたっていいんじゃないかい。

ああ、ああ、そうなんだ。そのはずなんだ。でも、何故だろう。僕は、これに喜びはおろか、悲しみさえ見出せずにいる。昨日と同じ今日が、ただ続いている。

ならいいじゃないか。つまりお前にとっての親父殿はその程度の存在だったってわけだ。

あれほど、僕を苦しめたのに?

そうさ。苦しさがそこまで大きなものであるものか。そうだとしたら世の中、ちょいと不平等が過ぎる。

なるほど、なるほど。では、そうしよう。

で、これからどうするんだね。

これからって?昨日と同じ今日が明日もまた続いていくだけさ。

そんなこたない。俺たちの無益な会話にも終わりのチャイムが鳴るように、お前の日常もまた終わるんだ。

何をいう。

なあ、いい加減にしようぜ。俺たち、このままじゃ報われねえさ。

構わない、報われなければ、報われたあとがない。それでいい。いや、それがいい。僕は別に救われたいわけじゃないんだよ。僕は、俺は、変わらずにいたい。明日も明後日もいつまでも同じように、変わらずに、ただ、のうのうと、

ああ、可哀想な僕。どうして、そうなっちまったんだい。



君はいつだって、偉そうに腰掛けて、何も言わず、両手を差し出し、まるで僕を受け止めると言わんばかりに、余裕の笑みを浮かべる。

でも、僕は、それに縋るには、あまりにも、あまりにも、歳をとりすぎた。そこにたどり着くには、僕を雁字搦めにして離さない、外聞、矜持をかなぐり捨てなければいけないのだろう。本当は飛び込みたくて仕方がないのに、そんな陳腐なものが、たかが一歩を踏み出させない。

ああ、頼む。どうか、一言いってくれ。おいで、と、お前の優しい声で呼んでくれ。そうしたら、僕はきっと、すぐにでも、その胸に飛び込めるのに。


飛び込んだのなら、君の両手は優しく僕を包むだろう。顔を埋めた胸からは、上品な香水の香りに混じって、君の香りがする。やがて片方の手が、僕の頭に移り、髪が崩れるのも構わず、ぐしゃぐしゃと撫で、掻く。それが心地良くて、懐かしくて、気恥ずかしくて、嬉しくて、切なくて。残った手では、赤子をあやすように背中を叩く。そうして、きっと僕はすっかり安心して、目を閉じるのだ。

僕はその温もりが欲しい。



見知らぬ町の見知らぬ道で、どうしようもない郷愁に襲われるのは、帰る場所が無いからだ。



ミミズになりてえよ、俺は。お天道様なんて怖くってサ。ただ土を食って吐き出していたい。そうしてたまに、地面を破って、月明かりにうっとりと目を細めたいもんだ。お天道様だったら、どうしような。瞬間、俺は干からびちまうだろうよ。欲張って地の上を這おうだなんて、そんなことはしない。



今日までも、これからも、私たちはきっと、悩み続けるのだわ。そうでなくては人に生まれた甲斐がありません。でもね、先生。悩みながら生きるのは、ひどく、つらい。底なしの海にいつまでも溺れているような気がします。そこに命の気配はなく、ただ、死にゆく私が一人きり。それでいいんです。誰かと死んでも、同じところに行けやしないんですもの。

でもね、ただ一瞬、絶命の瞬間だけ、私たちの魂は、同じものになるの。きっとそうだわ。だからね、先生。だから私は生きるのよ。ただ、そのときだけを心の支えにして生きるのよ。

あら、先生ったら、すぐに死ねばよいとでも仰りたい顔をしているわ。それはそれで癪なんです。いいえ、許せない。死は結果であって、手段にしてはいけないのです。



もう少しだけ、好きでいさせてください。

あと少しでこれは恋ではなくなるはずだから。



人は矛盾。確固たる意志を持ちながら、その実、ゆらぎを孕んでいて、時に自分さえ見失う。私ははたして何者か?私は私か?それとも僕か?それすら曖昧だからこそ、なんとか今日も生きている。



僕の過去、あるいはあなたの未来の話。


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