第3話 量より、質
〜ルース達が支部攻略を目前に控えたある日〜
「来い」
「はっ、何かご命令でも」
「あの野営地を潰せ。眷属の死霊供も使ってくれてかまわん。全ては”あの方”の為に」
「仰せのままに…」
■■■
「ルース!行くぞ」
「はい!」
ここ最近は周りに出てくる魔導兵やマントの軍勢を倒していた。敵の手勢は少ない方がいいからな。
しかし…
「一向に減りませんね…」
「そうだな。もしかしてどこかから召喚していたりするのか?」
「まさか,そんなことできる負けないじゃないですか。ハハハハハ…」
そんなことを話しながら拠点を出ると、
「「っ!!」」
2人同時に声にならない悲鳴が出る。
高台に建てた野営地の周囲がマントの軍勢に包囲されている。しかしこれまでの経験からマント達は高い知能を持っていないことが判明している。つまりこの行動を見るに…
「大将がいるんだろう。相手をしてやる。出てこい。」
すると魔導兵ほどの大きさの人?が金棒を背負って出てきた。
「よかろう。その勇気に敬意を表して姿を現そう。我に名はない…が『オニ』とでも呼べ」
「オニ?」
どこかで聞いたことがある。なんでも伝説城の生き物だとか…
「ここ最近我が主人の眷属たる死霊、このマントの奴らがお世話になったみたいだな」
あのマント野郎、死霊って言うのか。確かに見た目とマッチしている。というか我が主人ということはこいつがここを支配してるトップではないみたいだな。
と、突如死霊の軍勢がルースに襲いかかる。
「まずいっ!」
バリバリッ
「ここは私がなんとかします!グレイスはあのオニを!」
「感謝する。勝負だ、オニ!」
■■■
グレイスとオニは先ほどから激しく打ち合っている。グレイスの氷槍はオニが金棒で撃ち落とし、オニの振り下ろしはグレイスが避ける。若干グレイスが押されているものの、一進一退の激しい攻防が続いている。
「このままでは埒が明かぬ。本気を出させてもらおう」
鬼がエネルギーをため始める。
「鬼術!身体強化!」
「これで貴様に勝ち目はない。哀れだがここで…」
「ふっ、奇遇だな。私も同じことを考えていた」
「何!?」
訪れるであろう強敵戦に備えて開発した技
本当はここの親玉に使うつもりだったが仕方ないだろう
名前はまた直感でつけた
その名は──
「氷結剣」
氷で巨大な剣を生成する技。何故か自身に対する強化効果もある。
「ほう…氷の剣か。面白いっ」
またも打ち合いが始まる。これまでグレイスが押されていたのは氷槍が致命傷になり得ないからである。当たりどころさえ悪くなければ1発や2発当たってもオニには堪えない。対するグレイスは金棒の一撃一撃が命を奪う威力があるため、回避や防御に意識を割く必要がある。そこが攻撃の差を生んでいた。
しかし剣を作った今、その差は埋まった。いや追い越した。氷結剣には触れたもの凍結させる能力がある。オニもそれを察したのか、先程からグレイスの攻撃を避け続けている。
「なるほど…これでは我の方が分が悪いか…しかしこれでどうかな!」
「鬼術!身体強化!出力全開」
オニが更に強化を施してきた。これでは刃も通らないだろう。しかしこちらにも策はある。幸い向こうも時間がかかるようだしこちらに有利だ。
「氷結剣 氷結圧縮──氷結短剣」
この剣はパワーが大きい分バカでかい。それを小さく圧縮することで、一撃一撃の威力を圧倒的に強化できる。
与えられる傷こそ小さいが、これまでの挙動で弱点は把握した。おそらく人と同じ、心臓のあたりだろう。
そしてお互いに奥の手が完成した。
「「行くぞ!」」
激しく打ち合う2人。しかし形勢はグレイスの方に傾いていく。
そして──果てしない打ち合いの果てにグレイスは一筋の隙を見つけた。
(ここしかないっ!)
スッ
次の瞬間、オニの胸をグレイスの短剣が刺し貫いていた。
「見事…!」
そうつぶやき、オニは塵となって消えた。
(武人みたいな奴だったな…さて!)
大将を失っても戦っているところからして、死霊は本当に知能がないらしい。おそらく命令の遂行以外できないのだろう。
まだ手に持っていた氷結短剣を氷結剣に変形させる。
「フンッ」
一振りで死霊の軍勢が消し飛ぶ。
「ルース!」
「グレイス!無事だったんですね!」
「身体は…な。出来れば剣や短剣は使いたくなかった。親玉と戦う前に手の内を晒したくないしな。それに…」
バタッ
「グレイス!」
「エネルギーをかなり消耗した。流石にあのクラスの敵はもういないだろうから支部侵攻はもう少し先にしよう。」
「わかりました!」
(そういえばあいつ、眷属がどうのとか言ってたな…やはり召喚したりしているのか?だったら一体何者…まぁいい。とにかく今は休息をとろう。)
グレイスはルースに背負われながら野営地に帰った。
前回よりはマシな文章が書けたような気がします。
次回は日常回にしようかな〜