エピソード1 我! 爆誕
少し大きめのお屋敷
豪華とは言えないまでも、それなりの作りをした建造物
その屋敷から一際大きな産声が聞こえてくる
「でかした! ルシール! これでより我が家も安泰だ!」
男がベッドに横たわる女とその横で産婆に抱かれている赤子を見て興奮している
「あなた… この子に名前を…」
ベッドに横たわる女は産婆から託された赤子を抱く男に優しく微笑みながらそっと呟く
「うむ… この子の名は男の子だから… う~ん…」
男は抱いている赤子を見ながら少し考える
「うむ、こう言う名はどうだろう? エクスで駄目だろうか?」
少し自信なさげに女に尋ねる
「良いですね。 エクス… エクス・サイエン… この子の名前にピッタリですわ」
少し疲れの色が見えるものの女の顔は嬉しそうであった
「そうか! 良いか! うんうん、我がサイエン家にようこそ! エクスよ! 我らが息子よ!」
女の言葉を聞き、男も又、嬉し気に声を発していた
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ふはっ ふははっ ぶぁっはははははぁぁぁあああああ!
我が名はエクス! エクス・サイエン!
この地を治める領主の息子である!
最もこの地で権威あるサイエン家の息子なのだ!
愚民共跪き、我を称えるのだ!
この地で最も尊き者で… いや、王族が偉いから…
その次に偉く… いや、パパンが領主だから…
てことで、その次に… いや、邪魔な兄と姉がいるし、最狂魔王ママンがいてるから…
うん、まぁ一番ではないが偉いのだ!
そんな我は絶望している
一番ではないが、そこそこ偉い我が絶望しているのだ!
一体なんなんだ! この状況は!
我が頭脳は鮮明であるものの、いつ解かれるかわからん拘束具
それに… うわっ! やめろ! グハァァァアアアアア!
「はい、エクスちゃん! オッパイの時間ですよぉ~」
「あ! 奥様! ぼっちゃんの顔が胸に埋もれています。 このままだと窒息してしまいますよ!」
「まぁまぁ、エクスちゃん、おっぱい飲みながら寝ちゃうなんて」
「奥様、それは寝ているのではなく…」
我が名はエクス・サイモン
生まれて1か月の元気な男子だ
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我が名はエクス!
我の頭脳は鮮明(以下略)
というか、なんだ! この理不尽な仕打ちは! 一体、俺が何をしたというのだ!
やめろ! 離れろ! その手を我からどけろ!
「坊ちゃん、オムツを交換しましょうねぇ~」
「ねぇ、婆や、エクスはどうしたの? なんか変な臭いもしてるし」
「あら、クロード坊ちゃま。 エクス坊ちゃまのオムツが汚れていますので綺麗にしてるのですよ」
「あ! エクスにも兄さまと同じものが付いてます! マリアにはそんなのないのに」
「あらあら、マリアお嬢様。 そんなにまじまじと見てはいけませんよ!」
ううう… 我の名はエクス…
世の不条理に耐える男
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我の名はエクス!
もう、色々とこの世の洗礼を受け続けた俺だが、とうとうこの時がやってきた
そう、待ちに待ったこの時がとうとうやって来たのだ!
我は成長したのだ!
今では、ベイビーからボーイにクラスチェンジ!
既に我はハイハイを卒業し、ヨチヨチ歩きをマスターしたのだ!
たまに失敗してしまい、床とキスする羽目になってしまうが…
うむ、先ほども大声で床を罵ってやったところだ!
「ふむふむ、子供の成長とは早いものよのぉ。 つい先日までルシールに抱かれていただけだと思っていたのに、もう歩けるとは」
「まぁ、あなたったらいつも同じことを言ってますわね」
「いや、いつまでもこうあって欲しいのだが… やけに成長が早い気がして少しなぁ…」
「あなた! エクスも大人になったら貴族の一員になるかもしれませんのに! 何を甘えた事を言っているんですか?」
「そんな事言ってもなぁ。 クロードの時は戦でしっかりと見れなかったし、マリアに関しては… うん、やっぱりエクスは可愛いなぁ」
おい、パパンよ… 姉貴と何があるというのだ!
いや… 確かにベイビーの時代からパパンのやらかしは色々と見て来たから解るが… うん、あれだ… パパン頑張れ…
「マリアがあなたの事を良く思わないのは、あなたが原因だと思いますわ」
まあ、無意味な骨董品を買ってはママンにしばかれまくっている姿を見られてるからなぁ…
「それはお前にも原因があるのでは… あ… いえ… スイマセン…」
パパン… ちゃんと家での序列というのは大切に守らないといけないぞ! 姉貴に良く思われていないのはそういった所だからな!
だけど、さっきママンが気になる事を言っていたよな
確か、貴族の一員にって…
「ところで、エクスには何時から魔法の勉強をさせるのですか? もしかして、洗礼まで何もせず過ごさせるおつもりですか?」
ん? 更に謎ワードが…
「いや、そんな事はないぞ? すでに通いの商人から教材は買っておいたからな! ほら、さっきエクスが持っていたアレとかがそうだ!」
はぁ? あれって、ただの積み木だったよな? って、魔法ってそんな非科学的なもんがある訳ねぇだろ!
大体、我は…
ん?
我は… いや… あれ?
我は、エクスで… って何この記憶は?
…
少し冷静になって考える
うん、俺… 知ってるわ…
前世の記憶ってやつか、それか異次元の知識ってやつか、良く解らん何かを知ってるぞ…
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