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83:リザルトと次への展望

「なんでー、良ければ見て欲しいんスけどー」

「はぁ、まあ。機会があれば覗いてみますね」

「ッス。お願いしまーす」


 随分と和やかな週末が終われば週明けだ。

 何某さんも案外手堅くやっているようで、暴動仲間と組んで配信を始めたらしい。

 休日予約しか引っかからないもどかしさを抱えつつも早2カ月。

 最近拡張された平日夜間枠にも足繁く通った結果、何某さんはとうとうランクを初心者から一つ上げて第1階層の後半領域まで適正価格帯が増えたらしい。

 何処のダンジョンでも第1階層の後半領域からは一部の敵が群れるため、それに応じるようにして何某さんもチームを作ったそうだ。

 そうして集まったチームの名前がダンジョン新撰組というのはまあ、うん、まあ。

 一つコメントを捻り出すのであれば、警察がマークしやすそうな名前ですねと。

 願わくばこれからも出来るだけ縁遠く過ごしたいと思う。

 一応何かの弾みで彼のチームの話題を出された際の対策で再生数が伸びてそうな回を数本確認くらいはしておいた方がいいか。

 そこまでするとは思えんが突然動画クイズとか出されて何も対抗手段がなくても拗れるからな。

 相変わらず何某さん世界は喧しそうで何よりである。




   *   *   *




 仕事が終われば今日も今日とてダンジョンだ。

 いつものようにオルディーナがとこしえの花びらだけ置いてさっさとダンジョン攻略に乗り出しているのを除けば、工房が何だか華やいでいるというか、姦しさの残り香が漂っている、そんな雰囲気がする。

 いつもくっちゃべっているから気にしていなかったが、やはり女子会は差し入れがあるとより一層盛り上がるのだろうか。

 あんまり浮ついた空気を出されてもクラフトの邪魔だが何か労う時にはこう言った報酬もアリなのかもしれないな。心に留めておくとしよう。


 さて、これからの方針だがお隣ダンジョンの第4階層で解決のビジョンが見えない程(物理)行き詰まったので自宅ダンジョンの第7階層攻略の検討に移りたい。

 第7階層は溶岩の流れる高温環境フィールドだ。

 現在のメタルゴーレムではアマルガム(水銀合金)を使用している関係上、そのレベルの高温環境では碧白銀の力を持ってしても蒸発は免れず、水銀が抜け出てしなやかさを失えばゴーレムとしての行動に支障が出る。

 その為、高温対策が必須だったのだが以前までは温度調節手段のコストの高さが問題となって十全で無制限な探索をする事が出来なかった。


 今回導入を検討しているのは混成魔法を使った温度調節手段だ。

 温度を冷やす方向で検討しても氷魔法に藍色構造魔力を混成させたり斥力、同調力を混成させたりするだけでも性能の向上が見込める。


 また、変わり種としては斥力焔や構造焔を纏うというのもアリだろう。

 斥力焔は以前、手違いで自分自身に至近で当てた事があったが、その時に火傷を負うことはなかった。

 メカニズムはよく分からんが、緑色斥力魔力の自己認識による保護的なものが働いている可能性が高い。

 まだ構想段階ではあるが、斥力焔を纏った上で碧白銀アマルガムの状態を自己と認識させることで、高温状態のまま柔軟な活動が出来るのではないか。そう妄想している。

 まー分からんけどね。

 斥力焔が熱さを感じなかったという事と、高温環境で耐性を持てるかという事は論理に飛躍があるので期待した成果が見込めない可能性もあるだろう。


 堅実に対策しつつ冒険に足を延ばす。だな。

 兎にも角にもまずは氷魔法の混成だ。

 お隣ダンジョンの第3階層で試験的に使った感触では同調細氷の霧がそこそこ良い感じに思えた。

 ボス戦の取り巻き、錫杖持ち達の火球弾幕を封殺したアレだな。

 敵から放たれた魔法の魔力を同調圧力によって剥がして奪い、自身の魔力として消費する。

 現段階の制御能力ではボス戦フィールド丸ごとを覆い尽くす程の展開は出来ないが、自身の周囲を覆うだけならば問題ない。

 ダンジョン内は空気中にも魔力が漂っているっぽいので敵モンスターが魔法を放ってこなくても遊離魔力を吸収する事で僅かながらも消費魔力低減が見込める。


 構造氷杭も一応試したな。あれはどちらかといえば物理攻撃手段だったが。

 それでも物性が向上しているなら温度下降能力も上昇している可能性があるだろう。こちらも調べてみてもいいかもしれない。

 未だに試していないのは斥力氷だな。斥力焔を考えると自他認識をしつつ、他への干渉能力が高い性能になるのだろうか。イマイチ想像できんな。試してみるしかないか。

 橙色空間魔力との混成……どうなるんだ? まるで想像が出来ん。これも試してみる? しかないか。


 橙色空間魔力も中々扱いが難しい魔力だ。

 取り分けお隣ダンジョン第3階層ボス戦の戦利品(強奪品)とか。


名称:招令の軍旗

魔力濃度:20

魔力特徴:ミノタウロスを呼ぶ膜を作る。


 例によって鑑定ぽんこつ先生は招令なるよく分からん特徴しか教えてくれなかったのでアウレーネに解析して貰うと橙色空間魔力を平面上に展開して、この魔導具が呼応する個体、この場合はミノタウロスになるのだが、ミノタウロスを平面から引き上げる事が出来る道具のようだ。

 つまりは転移門の作成だな。

 やっていることはサンドラたちが実現している連続転移が近いだろう。

 転移と転移門。どちらも良し悪しあってその時それぞれで使い分けられれば便利なのだろうが、問題は転移門の難易度とリスクが中々無視できない程高い点だな。


 一応実験室レベル……もとい工房レベルでは俺も転移門の作成自体は出来ている。

 ただし、準備に時間をかけた上で設定平面をずっと寸分違わず同調させ続ける必要があり、それに失敗した時は……途切れる。

 物理的に。

 いやあ、ヤバかったね。実験に使った紺鉄鋼が集中力を切らした瞬間設定平面でスパッと逝ったのは。

 この招令の軍旗なるアイテムも仮に召喚途中で同調が切れたらミノタウロスのギロチンに早変わりだ。兵卒稼業も世知辛いな。


 それなら転移門ではなく次元斬的な空間切断として転用できるかとも思ったがそう甘くはなかった。

 転移門には転移門との同調が必要なので物の転移か自らが転移すべく同調するか、あるいは魔力支配して強制的に同調させる必要がある。

 ギロチン台に自分から昇るバカはいないので魔力支配して強制的に同調させるしかないのだが、そのような状況になればもう勝ったも同然なので態々空間切断する必要もないという残念仕様だった。

 使う必要が出てくる可能性としては水棲ワームのような巨大モンスターの全身が欲しい場合に魔力支配してぶつ切りにする時に使うくらいか。

 切断兵装というよりは解体包丁の位置づけである。

 まあこういうことが出来ると心の隅に留めておけば何かの役に立つ時もあるだろう。


 先日のお隣ダンジョン第3階層のめぼしい戦利品はこんなものだった。

 落とし穴の先のトカゲ皮? まあそうね。

 生身で攻略に行く必要がもし万が一仮に出てくることがあれば軽さと堅牢さを兼ね備えた素材としては金色ドラゴンの素材の次の水棲ワームの次の飛竜の次くらいにはいい素材なんじゃないのとだけ。

 まあ所詮は第3階層だ。リザルトもそんなもんである。

拙作をお読みいただきありがとうございます。

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