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64:地道な探索成果

「はーマジひどいと思いません?」

「まぁまぁ。……でも結局踏み込んでも買い叩かれるんですよね?」

「それはそーっスけど……」


 何某さんは今週の探索で次の階層へ行く転移象形まで辿り着いたらしい。

 土日をフルで費やした成果だとか。近場のダンジョンは結構広そうだな。

 そしてその転移象形の前には警官たちが駐在していて、通ろうとするせっかちを追い返していたそうな。

 まあ次の階層へ行くのに必要なランクは初心者の2個上だしそらそうよな。


 現状のダンジョンの仕様だと下手に次の階層へと踏み込まれたら次回の探索では第1階層をすっ飛ばして直接次の階層へと突撃される恐れがある。

 そういった探索者管理の諸事情も加味されて転移象形前に人を立てておいてあるんだろう。

 仕様を知っているからこそ裏側も推察できるが何某さんはまだ教えてもらっていないのかもな。ある程度昇級できる質がない探索者には無用の情報だし。


 まだ文句垂れる何某さんだが、その癖今週は2回、木曜日と土日で予約抽選を当てたらしい。

 ダンジョン管理担当者が順調に増員されて平日にも夕方~夜の予約時間枠が出来たそうな。その一つを当ててきたようだ。

 ついでに土日は前回の探索に不満を持ってもう少し人の少なそうな田舎のダンジョンへ挑戦する事にしたらしい。


 敢えて教えなかったが今週の土曜日は俺が探索者登録のためにダンジョン管理施設に行く用事があったので丁度よかった。

 変な所で絡まれても面倒だからな。それにデータ的には恐らくバレているだろうが暴徒の一員になった何某さんとの関係はなるべく希薄にしておきたい。

 裏では絶対マークされてるだろ多分。

 ただでさえ探られたら痛いどころか核爆発しかねない腹の周りで火遊びはいらんので、賑やかしそうな要素とは極力距離を取っておくべきだ。


 その後も文句と自慢と展望を垂れ流し続けた何某さん劇場は昼食を補給した後で違う分担になったのでお開きになった。




   *   *   *




 第6階層探索は順調に進んでいる。代わり映えしないが。

 いや一つあったか。

 泥底洞窟に脅威はないと思われていたが一応いる事にはいた。

 液滴ヒドラの根元で屯していたり、泥の壁面から突如として湧いてくる白くて細長いワーム的な生物、……巨大蛆だな。

 おそらくドロスマンサーの幼虫だろう。一部の作品ではそういったのも出てきていた気がする。


 敵は出てきたがまあ、どうと言う事はなかった。

 本来であれば食いつかれたり消化液を浴びたりして大変な事になっていたのだろうが、如何せん俺たちの探索メンバーはそういった物理的な侵食に耐性がある奴ばかりだからね……。液滴ヒドラ君ともども藪か岩と同レベルの破壊可能障害物となった。

 ただ、ドロップ品は面白そうだった。


名称:泥解の消化液

魔力濃度:28

魔力特徴:魔力と意志に応じて変化する。


 小ビンに入ったトロみの付いた薄黄色のそれは鑑定ぽんこつ先生のネーミングセンスから察するに泥炭を解して柔らかくするのに向いているようだ。

 案の定魔力特徴については鑑定ぽんこつ先生は何も教えてはくれなかったが、アウレーネが若干嫌がりながらも解析してくれたところによると、これも素材として使える特徴を持っていた。

 消化液などまたトリッキーな素材だが何かを液化させたい時などに使えそうだ。

 必要に応じて研究していくとしよう。


 一応液滴ヒドラも探索に支障のない位置にいる液滴ヒドラを見つけたので試しに狩ってみたら鑑定ぽんこつ先生いわく強靭な粘液なるトロみのある液が入った小瓶をドロップした。

 ドロップしたはいいがモノとしては泥底洞窟を探索した後にメタルゴーレムにへばりついているねばねばと同じものなので激しく微妙だ。

 まず狩る価値はないと言っていいだろう。

 案の定液滴ヒドラを倒した後はそいつが支えていた液滴ごと消えたもんでその部分の泥底洞窟が崩落したしな。


 価値と言えば意外なモノが望外の価値があって驚いたな。


名称:泥炭

魔力濃度:1

魔力特徴:魔力と意志に応じて変化する。


 何かと言えば第6階層を覆う泥海、泥そのものだ。

 泥炭なのだから当然炭になる。

 なので成形機で脱水して固めれば即席豆炭の出来上がりだ。

 この幾らでも簡単大量に摂れる炭を使えば。


名称:アダマンタイトの火炎剣

魔力濃度:33

魔力特徴:修復。発火。


 鑑定ぽんこつ先生お墨付きの火炎剣の完成だ。

 魔力さえあれば楽にできる豆炭と、第4階層採掘マラソン以前にも何だかんだで大量に余っていた鉄素材を消費して大量に出来た紺鉄鋼で何作ろうかと考えたら、この際以前作った火炎剣のリベンジでもしてやろうかとふと思いついた。

 柄に嵌められたコアも俺の魔力で作り出した最上級のものだし、そこから伝って剣身の碧白銀も以前の銀製からアップグレードしている。


 更には以前の俺とアウレーネ製微妙センスの蛇蔦象嵌の碧白銀もサンドラがデザインした不思議な紋様を食む意匠的なドラゴンに変わっている。

 相も変わらず再びデザインセンスで行き詰まってアウレーネに頼もうとしたらサンドラを紹介された。

 いわく俺が好きそうな感性ならサンドラの方が向いているとな。喧嘩売ってるのかな?

 一瞬そう思ったものの真面目に言っているようだったので試してみる事にした。


 以前なら難航していたお願いは攻略方法さえ確立すれば容易いものだ。

 サンドラ介護役の二人、ア~シャとシスティをまとめて呼び出す。

 その上で三人にお願いすれば二人がサンドラを上手く丸め込んでノせてくれた。ありがたい。

 報酬がその分張りはするが、毎日魔力回復薬を一本持っていくアウレーネに比べれば些細なものだ。おまけにア~シャとシスティの二人は魔力回復薬じゃなくてブドウや柿などの果物詰め合わせでいいと言ってきた。味変が欲しいらしい。

 加工する必要が無ければ俺としては手間は更に省ける。マジックボックスから適当に持って行くように言って報酬交渉は合意に至ったので以前に比べれば非常にスムーズにサンドラを働かせることが出来た。

 メンタル面でのコストパフォーマンスが非常に良好だな。また必要があれば二人にはご足労願おう。


 こうして出来上がった完全版炎の剣だが……。

 やっぱり持て余した。

 そして迷った末に納品箱行きになった。返礼はクォーツ系の宝石箱だったのでラッキーだった。早速ウヅキに渡したので必要に応じて報酬としてクォーツオーブ辺りに加工していこう。


 しかし結局実体剣はどうあがいても持て余すな。

 俺の基本装備は伸縮可能な銀腕だし、あまりデカブツをつけ過ぎるとメタルゴーレムの身体制御に加えてそれの管理にも細心の注意を払わないと行けなくなる。

 今ですらサメヨットをあちこちにぶつけているしな。


 盲目鮫の全身表皮はスケールクランプで縮めて成形機の中で少しずつ組み上げ、泥海諸島の辺縁域の島幾つかを探索し終わった頃には完成した。

 と言ってもそこまで大したことはしていない。

 背ビレの方に開口部を入れ、内側をコアと同じ藍色構造魔力で内張りし、魔力が切れないように駄々余りしているスペースに大きく作ったコアを嵌め込んだだけだ。

 金属どころか物質はサメ皮以外全く使っていないため大きさに対して驚くほど軽い。

 耐久性能以外はいい仕様に仕上がったと思う。


 ……うん、流石に耐久力の変質魔力だろうと魔力だけでは限界があるからね。

 魔力濃度が相手と隔絶しているのであれば分からないが、盲目鮫の魔力濃度、つまりレベルは最近ようやっと上回った程度だ。


名前:尾崎幻拓

種族:精霊憑き

レベル:33(↑2)

魔法力:233(↑15)

攻撃力:83(↑2)

耐久力:78(↑2)

反応力:121(↑16)

機動力:80(↑1)

直感力:134(↑6)


特性:精霊契約(アウレーネ、オルディーナ、ユキヒメ、サンドラ)、魔力制御、魔力変質(耐久力、魔法力、攻撃力、反応力、機動力)、アイスウィザード、土魔法

スキル:怪力、鑑定、識別


名前:アウレーネ

種族:精霊

レベル:33(↑2)

魔法力:256(↑24)

攻撃力:8

耐久力:55(↑1)

反応力:124(↑18)

機動力:26(↑3)

直感力:133(↑5)


特性:精霊魔法、魔力変質(耐久力、魔法力、反応力)


 やはりレベル差が近ければそれなりに倒していけば雑魚でもレベルが上がる。

 サメヨットも今の所雑に制御して蓮やドロスマンサーにぶつけても打ち勝っているので問題ないが、問題は中央区域を回遊する盲目鮫だろうな。

 ヨットのサメ皮で欺瞞されてくれれば問題ないが、結局狙われると厄介だ。

 中央区域へ進出する辺りでもう一度テスト航行は必要だろう。


 では早速……と行きたいところだが明日は用事がある。

 探索者登録の為の講習会だな。

 気は進まないが今後予想されるリスクを先んじて抑えておくためにも大事だ。

 久しぶりに準備をして出かけるとしよう。

拙作をお読みいただきありがとうございます。

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