6:未知
名称:ガラス球?
レベル:5?
魔力:20?
特徴:魔力と意志を伝え合う。
なんでアイテムがレベルを持っているの?という真っ当な疑問は持っているからという説明力で正面から叩き潰された。
アウレーネの語彙力の問題もあるだろうが色々と魔力根を侵食させてみた中でレベルという表現が一番合っているらしい。
あと更に加えて難解な事にこのアイテムのレベルと魔力はランダムに変動しているらしい。訳が分からない。ヤドリギ解析で見た範囲内で一番大きな数字をとりあえず伝えた、というのが数字に疑問が付いていた意味らしい。
うん、とても現時点で手に負える現象じゃない。
ひとまずこの問題への理解は置いておいて次はどう使えるのか検証の段階だな。
粘土集めでいい時間を食われたし、その上アシ原切り拓きとクリアリングでかなり労力を使った。おまけに足はグズグズと濡れて気持ち悪いので切り上げて撤退する事にした。これからの探索は濡れる事を想定した装備も検討する必要がありそうだな。ダイビングシューズとか。
部屋に帰るとすぐに着衣そのまま一式洗濯機に放り込んでスイッチオン。部屋の汚れは最小限に収まった。
適当にインスタントを用意する傍ら気になるのはやはり謎球。
魔力と意志を伝え合うという特徴と2つ手に入った事からやはり魔力的な遠隔通信手段なのだろうか。
一見ただの魔石に見えるガラス球のような物体を尻目に椀に酒を注ぐ。そう言えば結局アウレーネの興味逸らしにまで手が回らなかったがまあ、追々やっていこう追々な。
気もそぞろに夕食を胃袋に放り込んでカラスの行水を終えた後、ポーチから2つ球を出して並べる。
まずは魔力を込める事から始めてみる。マジッククレイに魔力を練り込むのと同じようにして1つ取り出した球に魔力を込めると、透明だった球がごく薄い油膜のような色合いにくすむ。そしてすぐに球の中心部に白い靄のような物がゆらゆらとくゆり始めた。
そして次、ともう1つに目を遣るとそこには既に油膜のような色合いにくすんだガラス球。移そうと思った瞬間には置かれたガラス球の中に白い靄が宿った。置かれたガラス球の靄に来いと呼びかけると手に持った球に靄が移る。アウレーネの解析結果、魔力と意志を伝え合うというのはやはり相互に魔力を授受伝達出来ることのようだ。
それを確認すると、今度は片方のガラス球にアシ原切り拓きでドロップしたマジッククレイを一掴み千切ってくっつける。……何気に粘土狩りが終わった直後の粘土ドロップ率2/4なんだよなぁ物欲センサー怖すぎる。
ともあれ、掌の上の球から粘土付き球に向かって魔力を送り込む。すぐに粘土はぐにゃりと崩れるとクッキー型でくりぬいたような平たい星型に変わった。
意志を伝えあうというのはマジッククレイで言えば望んだ形への形状変化を球を通す事で間接的に伝えることが出来るということのようだ。
正直こう、何というか、吹いてきてる。風が、びゅうびゅうと、俺の胸中で。脳裏にばちばちとアイディアが荒れ狂ってこれもう分かんねぇな?
すぐにマジッククレイを手持ち残り2塊分追加してバレーボールサイズになった粘土塊に念じる。
ぐにぐにと暫く脈打っていたマジッククレイボールはゆっくりと膝を伸ばし、腕を持ち上げ、クレイゴーレムになってその場に直立した。
―――。
――――――……。
「んーぅ……」
「……もうちょっと待って」
分かった事がある。
全身が鉱物で出来た人形、ゴーレムを動かすのはコスパが悪いということだ。
一挙手一投足動かすたびに粘土間の位置関係を考慮して、全ての分子を少しずつ動かす。それも直立したバランスを崩さないように、だ。下手に曲げても外側と内側で密度が変わって分子間に負荷が……、マジッククレイの場合は魔力で補助する事で物質的な負荷はある程度緩められるものの、結局魔力に負荷が掛かって余計な魔力を消費する。ボグハンドも似たような原理で動いているとしたら多分実力以上に魔法力が高い、高くせざるを得ない残念モンスターなんだろうな。
俺は早々に均一素体の人形、所謂ゴーレムを諦め、ゲーミングPCの代わりに買ったのに存在をすっかり忘れていたノートパソコンで調べた球体関節の資料を元に、一通り球体関節クレイゴーレムを仕上げ……、その動作検証を今終えた所だ。……資料探しはいい気分転換になった。均一ゴーレムに見切り付ける直前は魔力消費のし過ぎなのか二日酔い並みの気持ち悪さだったからな……。
ともあれ、球体関節ゴーレムの売りは何と言っても消費魔力の軽さだ。均一ゴーレムで酷い目にあった一通りの検証作業を終えてもまだ体に不調は感じない。資料探しで気分転換したとはいえ万全に回復してはいないだろうから、実際には言葉以上に消費魔力は削減出来ているだろう。いつかどうにかして数値化したいが今はまだアイディアが足りないな。
しかし、反対にデメリットも明らかで、それは踏ん張りが効かない事だ。均一ゴーレムならば重量挙げなどの負荷をかける動作に対して動作部位全体で出力を発揮していたため、新生児サイズのクレイゴーレムでも5キロを超える重りを先端に取り付けたマジッククレイワンドを持ち上げる、何てことも出来ていた。しかし球体関節ゴーレムでは無理だった。それは恐らく球体関節ゴーレムの動作部位はその球体が接触している表面積のみで難しい事を言うとトルクが足りなかったのだろう。出力を上げたければ球体関節の大きさを大きくするか関節表面をマジッククレイより高品質な素材に変えるかだろうが……、結局のところそれぞれの製法に対しての性能比較なのでこの探求はまた別の機会でいいだろう。
さて、そうなってくるともう一つ、出力も消費コストも両取り欲張りセット、すなわち動物の模倣、骨格筋を張り巡らせたオートマタ型ゴーレムを試してみたい。
「にゃ―――ッ!」
「ふぉッ!?」
突如響いた大声に振り向くと、いかにもご機嫌斜めでございッと言った様子のアウレーネ。
一体何だっていうんだ。酒か?また酒のおねだりか? 仕方ない……、いやダンジョンはどうするかって? そりゃお前。
「今日は探索準備の日だ。やれるだけやって次回は第2階層のボスに挑むぞ。レーネ」
「……むぅーう……?」
「マジだマジ。マジマジだよ?」
じっとりした視線を向けていたアウレーネだったがややあって今日の分の酒の催促をしてベッドの上に寝転がる。結局酒かよ。まあいい、これで気兼ねなく検証が出来るのなら安いものだ。
何か忘れているような気が、一瞬走った……気がする。が一瞬で忘れるなら大したことではないし、大したことならばその内また思い出すだろう。そんな事より検証だ。
休日2日が丸潰れた上に飯すらロクに食っていない事に気が付いたのは出勤前のアラームがなった直後の事だった。
拙作をお読みいただきありがとうございます。