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57:リザルトと報酬応酬戦

「全く限定開放って絞り過ぎなんスよねぇ」

「まだ受付とかの人手が揃っていないんでしょう」

「遅過ぎるっしょ。何ヵ月ちんたらやってるつもりなんスか」

「そうですね。ただ土曜日、でしたっけ? 一日フルで探索できることを良かったと思うしかないのでは」

「まあそっスね」


 今週全日予約申し込んで土曜日に回されたのは多分しがない一般労働者だからじゃないかねと思いつつ適当に相槌を打つ。マジメに仕事しろって。


 今週に入って国内のダンジョンの一般開放が始まったようだ。ただし完全予約制の限定開放だが。

 アウレーネの調べではどうにも平日の予約は無職か企業のコネというか社命を負った企業戦士といった類の人種が当選しているようだ。匿名掲示板の有象無象の書き込みにそうあったらしい。ほんとかなぁ。

 アウレーネにリテラシーという概念を教えつつまあ三割くらいは信用しておくことにする。興味がないからね。


 俺の登録申請の方はまだ音沙汰がない。こちらも気長に待てばいいだろう。

 流石に年単位で放置されるとステータス鑑定かなにかで異常がバレるリスクが出てくるが、この混乱が収まるまでには受理されるだろう。

 先行登録者の話では俺の予想通り、まず講習会日時の通知が届き、ダンジョン管理施設の一講義室で開かれるそれに参加して法令関連と契約関連の講習を受け、最後にダンジョンに入って第1階層を一巡りし、説明を受けてからその間に発行された正式カードを受け取って解散になる。


 その時その場でステータスを任意で申請することが出来るそうだ。やっておこう。

 その後も必要に応じて登録申請窓口からステータス申請を出来、そのステータスと探索実績を加味して推奨探索深度と買い取り素材の適正係数が変化するそうな。

 買取素材の価格を絞る事で探索者に枷を嵌めるのは問題もありそうだが短期的には有効だと思う。

 今は人手も足りないだろうし、放っておけばどんどん先走って野垂れ死ぬ阿呆も出てくるだろう。

 深く潜っても買い叩きますよと制限をかける事で阿呆に釘を刺すわけだ。

 俺は星白金と橙色変質魔力を組み合わせて物品の転移が出来るが、一般探索者には荷物のごまかしはまだ難しいだろう。

 企業探索者からも容赦なく買い叩いて優先権という手札だけで企業に定価で買わせるからこちらも牽制できる。

 ダンジョン内の監視人員の負担を減らす面白い策だな。




   *   *   *




 現世を漫然と眺めつつも仕事が終わればダンジョンだ。

 遠回りに第4階層の隠しボスまで倒しに行ってしまったが第5階層のボス、黒竜人戦士を撃破した。

 ゲームにあった狂奔の森とは違って、ボスを倒した所で森の陰鬱さは晴れる事もなかったが、ゲームと現実は違うし仕方ないね。

 ただ、狂奔する精霊たちが敵としてこそ立ち塞がったが、その一部にはモブ的な、ウヅキいわく生きていない、意識を感じられない精霊モドキが混じるようになったので、一応囚われた精霊たちも開放?的な何かが出来たのだろう。多分。


 さて次の第6階層だがこれがまたある意味面倒くさそうな地形だった。

 黒褐色の泥地に転々と小島が浮かぶ巨大な泥炭沼地帯だ。

 平坦で見通しがいいので今度探索に行く時には再び空撮ドローンが火を噴きそうだな。

 偵察は捗るだろうが、探索は面倒くさそうだ。

 まずメタルゴーレムがそのまま歩けばどんどん沈んでいきそうだな。

 アウレーネの感覚では泥の中にも何かがいる感じがするそうなので、そうなればまともに視認できないままタコ殴りにされるだろう。

 金属肌がいかに揉みくちゃにされようとそう大したことはできないだろうが、拘束を受けてどこかに運ばれれば容易に迷うだろう。

 泥中で転移が使えるかどうかも分からないので最悪通信は繋がるが壁の中にいる状態になってほぼロストみたいな阿呆な顛末になりかねない。検証と対策は必須だろう。


 取り得る手札……の前に現状の確認が必要か。


名前:尾崎幻拓

種族:精霊憑き

レベル:31(↑2)

魔法力:218(↑16)

攻撃力:81(↑4)

耐久力:76(↑1)

反応力:105(↑12)

機動力:79(↑3)

直感力:128(↑7)


特性:精霊契約(アウレーネ、オルディーナ、ユキヒメ、サンドラ)、魔力制御、魔力変質(耐久力、魔法力、攻撃力、反応力、機動力)、アイスウィザード、土魔法

スキル:怪力、鑑定、識別


名前:アウレーネ

種族:精霊

レベル:31(↑2)

魔法力:232(↑15)

攻撃力:8(↑1)

耐久力:54(↑3)

反応力:106(↑1)

機動力:23(↑1)

直感力:128(↑5)


特性:精霊魔法、魔力変質(耐久力、魔法力、反応力)


 魔石から推測するにレベルに10近い開きを持つ相手と戦ったのにレベルの上りが渋いのはサンドラと一緒に戦ったからか……というか最後の仕掛けとトドメ以外はほぼサンドラが相手をしていたからか。

 聞いてみるとサンドラの方はレベルが5ほど上がっていたようだ。


 小憎たらしい顔で煽ってきたので軽くアイアンクローを掛けたら瘴気洞窟の先の地下沢奥で見つけた宝石箱の事を思い出されてしまった。とんだ藪蛇だったな。

 仕方がないのでこちらの加工についても考えなければいけない。


 ルビーやサファイアなどよくよく耳にする宝石たちの中でサンドラが持ってきたのはクリソベリルと鑑定ぽんこつ先生が教えてくれた宝石だった。

 黄色に若干緑がかった透明な石がこいつのお気に召したのだろう。


名称:クリソベリル

魔力濃度:26

魔力特徴:補修


 鑑定ぽんこつ先生は魔力を込めれば傷がついても修復する補修能力だけしか読み取れないが、要するに自然に耐久力の変質魔力を帯びているという事だろう。

 アウレーネが読み取ったコアとして使えるという性質もここから来ているのだろうか。

 サンドラも慣れたもので自らカットを指定してきたので成形機でささっと加工する。

 入力さえ出来れば出力は一瞬だ。虹色の油膜が張れば浴槽のような成形機の底にはトカゲの目のような形をした複雑に光を照り返す宝石が転がっていた。


 まあ大変なのはここからなんだろうがな。

 取り合えずコアと同様に宿れるかやってもらった所、特に問題はないようだ。

 繋界核は例外として、この前作った通信子機のコアは俺の魔力製の所為か俺の匂いがして嫌らしい、喧嘩売ってるのかな?

 それと比較すればこの宝石は何か狭い気がするものの俺の匂いとかいうよく分からん阿呆な感じはしないそうだ。でっていう。


 取り合えず内見は合格が出たので外側の処理だな。

 当然の如く星白金を湯水の如く使えというサンドラと星白金は同調用の最低限で済ませて碧白銀と白輝銅で補強兼嵩増ししたい俺との間でひと悶着があったものの、最終的に“従え”権をちらつかせて折れさせた。あまりやりたくはないが調子に乗るなら容赦はしないぞ。

 ともあれ、底面にピタリと薄く沿った星白金が淡く黄色い光を瞬いてトカゲ目の宝石そのものが淡く発光する幻想的な宝飾品が出来上がった。

 周波数も当然サンドラに合わせたものだ。

 俺はやった。


 こっそりと宝石箱ごと持って帰ろうとしていたサンドラを張っ倒して、チェンジさせる。


「お呼びですか?」

「あぁ、ウヅキにはこれを預かって貰いたい」

「……いいのですか?」

「必要に応じてすぐに引き出せる。そういう信頼の無い所には預けられないからな」


 宝石箱を渡してそう告げると、ウヅキが怪訝そうに首を傾げる。

 マジックボックスの使用規定も取り決めてはいるし、今の所破っている気配はしないものの、誰でも取り出せる以上もしもがあるからな。

 特にサンドラに黄昏世界に拉致されて素知らぬ振りをされたら面倒だ。一々持って来るように命じるのも億劫だしな。


「何ならウヅキも一つこっちの宝石で通信子機を作るか?」

「それは有難い申し出ですが、その……」


 ちらりと向けられた視線の先を見ると、何やら物欲しそうなユキヒメの姿が。


「……でもユキヒメは出かけないんじゃ?」

「……でも…欲しい……」


 まあ分かる。お前も割と女子女子ぃしてるからな。

 色々と相談した結果、そもそも一応茨樹精であるユキヒメが宿れるのかどうか、宿れるとしたらどこまで影響なく宿れるのかをテストする見返りとして宝石を一つ進呈する事で合意を得た。

 ウヅキが選んだのは薄紅色をしたコランダムというらしい宝石、ユキヒメが選んだのはクリスタル、透明な水晶その物だった。何でもコアは俺の魔力で作って欲しいそうな。どこかのクソガキとは大違いだな。


 もちろん快諾した。

 快諾したついでに返礼品で来た小粒の水晶じゃなくて水棲ワームの深層域で採掘してきた一抱えサイズのを上げる事にした。こっちは魔力濃度が26だしね。同調で魔力濃度を上げられるとはいえ品質がいい物の方がいいだろう。

 ついでにとこしえの花びらも使ってあげるか。

 割れたら困るから耐久性を上げるために構造置換は藍色変質魔力で。


 成形機でサッと水晶を要望通り涙滴型に加工する。

 うん、全部は流石に大き過ぎるそうな。せやね。


 一抱えサイズから手のひらサイズに切り出されたそれに少し溜まってきたとこしえの花びらを同体積程度掴んで魔力を流し込みつつ灰にする。

 吸引子と置換子を包む反応殻。最早イメージし慣れたそれ、魔力酵素とでも言うような構造体には藍色変質魔力も厄介な修復反応を起こさない。


 そのまま魔力を流し込むと、水晶は銅を始めとする金属類とは違うのか常温でもすんなりと大きな魔力構造体を受け入れた。

 少し濃いめの青白い魔力が水晶の中を循環して……。

 全ての反応が終わったあと、淡い水色を呈する水晶がその場に鎮座していた。

 ふむ。

拙作をお読みいただきありがとうございます。

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